前田家本 方丈記 序1 行川の流れは絶えずして
ゆくかはのなかれはたえすし てしかももとのみつにあらす。 よとみにうかふうたかたはかつきえ かつむすひてひさしくとゝま る事なし。よのなかにある人 とすみかとかくのことし...
前田家本 方丈記 序2 これを真かと尋ぬれば
ものなれとこれをまことかと たつぬれはむかしありし家 はまれなり。あるひはこそや けてことしつくりあるひはお ほいゑほろひてこいゑとなる。 すむ人もこれにおなし。ところ ...
前田家本 方丈記 序3 朝に死に夕にむまれる
にしに夕にむまるゝならひたヽ みつのあはにそにたりける。 しらすむまれしぬる人いつ方より きたりていつ方へかさる。また しらすかりのやとりたれかた めにかこゝろをなやまし...
前田家本 方丈記 序4 露に異ならず
つゆにことならす。あるひはつゆ おちて花のこれり。のこるとい へとも朝の日にかれぬ。あるひは はなしほみてつゆなをきえす。きえ すといへともゆふへを まつ事なし。予ものゝ...
前田家本 方丈記 大火1 去安元三年四月廿八日かとよ
たひ/\になりぬ。去安元三年 四月廿八日かとよ。かせはけしくふ きて世しつかならさりし夜。 いぬの時はかりみやこの東南よ り火いてきて、西北にいたる。はてに は朱雀門大極...
前田家本 方丈記 飢餓1 久しくなりて確かに覚えず
なりてたしかにもおほえす。二 年かあひたよのなか飢渇して あさましき事侍き。あるひは 秋大かせおほ水なとよからぬ事 ともうちつゝきて五こくこと/\く ならす。 むなしく春...
前田家本 方丈記 飢餓2 地を捨てて境を出で
てゝさかひをいてあるひはいゑを わかれて山にすむ。さま/\の御い のりはしまりてなへてならす ほうともをこなはるれともさら にそのしるしなし。京のならひ なにわさにつけて...
前田家本 方丈記 飢餓4 あまさへ疫癘うち添ひて
さへゑきれいうちそひてまさゝ さまにあとかたなし人みな下 意し死にけれは日をへつゝきは まりゆくさま小水のうをの たとへにかなへり。はてにはかさう ちきあしひきつゝみよろ...
前田家本 方丈記 飢餓5 すなはち倒れ伏しぬ
はちたふれふしぬ。ついちのつら みちのほとりにうれへしぬるも のゝたくひかすもしらす。とり すつるはきはもしらねはくさき かせかいにみちみちてかはりゆく ありさまめもあて...
前田家本 方丈記 飢餓6 山賤も力尽きて
かつもちからつきてたきゝさへ ともしくなりゆけはたのむかた なき人はみつからいゑをこほち ていちにいてゝうる。十人かもちて いてたるあたひなを一日かいのち にたにをよはす...