線刻派表現においては、切り絵作品だけでなく、下描きも重要となります。力強い描線だ。
これは、「涙の聖母」と対になる作品です。切り絵にしあげた作品もあるはずですが、今はそれが見つからないので、下描きを上げてみました。
告知をして驚く聖母の悲しみを思いやる天使の表情が美しい。
裏の世界から、両方の世界を見ているわたしだからこそわかることなのですが、この天使には、どこか試練の天使の面影があります。なんとなくわかるでしょう。これがまたおもしろいところだ。
試練の天使が、人生の交代をかのじょに告げている。そういう場面に見えないこともない。
かのじょ自身も、ずいぶんと昔から、自分の運命を予期していたとしか思えない。
芸術作品には、時にこういうものがあるのですよ。愛の流れに飛びこんで作った作品には、人の魂の愛にぴったりとよりそってくれる、神の愛が、ときに表現されてくるのです。愛は、どうしようもなく、助け合ってしまう。アンデルセンの例にあるように。
このような表現があったことによって、かのじょも、自分の運命を受け入れる準備が、少しずつ整っていったのです。