奥の扉の向こうから、かすかだが確かに人声が聞こえる。友人か?
いや、しかし一人じゃない。複数いるようだ。
近づかない方がいいか?
引き返そうとしたその瞬間・・・
話声に交じって、あの唄が聞こえた気がした。
・・・ ♪岬めぐりの バスは走る
窓に広がる 青い海よ ・・・
岬めぐり・・・
えっ?まさか。
恐怖心と好奇心。
この扉を開けたら、30年前の自分が?
唐突もない錯覚にとらわれた。
この扉を開けてみたい。
次の瞬間、僕はほとんど無意識にその扉を開けていた。
あっ・・・
その光景をみて、一瞬目の前がかすんだ。意識がかすれた気がした。
やっぱり・・・
ふと気づくと、友人が隣にいた。
そして、僕にこう言った。
「あったね。Sマーク。」
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