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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

著名表示といえるための要件(2)

2011-02-16 21:49:01 | 不正競争防止法

「著名」といえるために,「知名度の高さ」以外の要件が必要であるとしていかなる要件が必要かについては争いがある。

この点,山本113頁は,「本号の保護対象は、「著名な商品等表示」すなわち、周知の(需要者の間に広く認識されている)商品等表示の中でも特にその表示主体の営業努力などによって高い名声、信用及び評価が備わり、全国的に広く知られるようになったものである。換言すれば、全国的規模で優れた「ブランド力」を有するようになったものである」とする。すなわち,「著名」といえるためには,「知名度の高さ」に加え,高い名声,信用及び評価(優れたブランド力)が必要であるとする。

また,渋谷794頁以下は,本質的要素として,①具体的識別力,②周知性,③良質感を挙げ,補完的要素として,④唯一的地位,⑤抽象的識別力を挙げる。

さらに,田村241頁以下は,「著名」といえるためには,「知名度の高さ」に加え,「特別顕著性」が必要であるとする。「特別に顕著である」とは「独占に適するもの」(以下「独占適応性」)という意味であり,「その判断に際しては,商品や役務の普通名称のほか,「産地,販売地,提供の場所,品質,質,原材料,提供の用に供する物,効能,用途,数量,形状,態様,価格もしくは生産もしくは使用もしくは提供の方法もしくは時期」の表示について商標権侵害の適用除外を定める商標法2612号,3号も参酌すべきである。「純」「WORLD(ワールド)」等の場合には,特別に顕著ではないということで不正競争防止法212号の保護が否定されると解すべきであろう」とされる(田村242)。本号の保護を与えるか否かの判断の際に,独占適応性を要件又は要素とすることには異論は少ないと思われるが,「著名性」の要件に読み込むことについては争いがある。

 

この点,条文の文理を根拠として,「著名性」は知名度の高さに関する要件であると解した上で,「表示の希釈化(ダイリューション)の成立のためには、表示の著名性のほかに、表示の独自性、表示の唯一性、表示の印象の良さなどの総合的判断が必要であり、表示の汚染(ポリューション)の成立のためには、表示の著名性のほかに、使用商品・役務の粗悪性が必要であり、表示のただ乗り(フリーライド)の成立のためには、表示の著名性のほかに、他人の名声の不当利用性が必要である」との認識を前提として,「他人の著名な商品等表示の使用の立証のみで、一応外形的に2号の要件のみの立証により、原告の権利者側は2号の主張責任、挙証責任を果たしたものとなる」ものの,被告側で、「ダイリューション、ポリューション、フリーライドなどの不正競争性のない事実を反証して請求の棄却を求め得る」とする反対説がある(小野・新注解298)。なお,小野・新注解302頁は,独占適応性の問題について,「表示は一般名称のような特別顕著性のないものであってはならないが、それが永年使用せられ、香水における「4711」のような使用による特別顕著性を生じたものでもよい」として,「表示」の要件の問題と位置づけている。


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