鼻用軟膏審取
平成22年(行ケ)第10296号 審決取消請求事件
請求棄却
裁判所の判断は13ページ以下。
本件は拒絶査定不服審判不成立審決に対して取消を求めるものです。
争点は容易想到性です。
本判決は、相違点1について、「飽和炭化水素の少なくとも1つの混合物が、本願発明は、DIN51 562法による8mm2/秒(100℃)以上の粘度を有するものであるのに対し、引用発明は、室温においてゲル状の公知のものであるとする点である」と認定し、この点に関し、「引用例には、「ゲル様の稠度が室温においてもたらされる限り、本発明の目的は、実質的に飽和型の炭化水素から成る任意の混合物によって達成され得ることが判っている。…種々のワセリンタイプと同様に、本発明による作用を示す。」と記載され、また、試験例1ないし3に、黄色ワセリン、白色ワセリン及び軟パラフィンを用いた鼻用軟膏が吸入アレルギー反応を予防することが記載されている。よって、引用例には、室温においてゲル状であって、その他の物性は様々である基本的に飽和炭化水素からなる混合物から成る鼻用軟膏が吸入アレルギー反応を予防に有用であることについての示唆が記載されているものと認められる」と認定した上、「吸入アレルギー反応の予防に用いる鼻用軟膏の成分である室温においてゲル状の飽和炭化水素の混合物として、上記(1)のとおり優先日前に周知であったDIN51 562法で100℃で測定した場合に8mm2/秒以上の粘度を有するワセリンを使用することは、当業者であれば格別の創意を要する事項とはいえない」と判断しました。
本判決は、さらに、商業的成功の主張に関し、「商業的成功には、製品の技術的特徴だけでなく、価格設定、宣伝、需要動向等の要因が密接に関連するものであるところ、仮に原告が主張する製品が本願発明の実施品であるとしても、その商業的成功をもって、本願発明の進歩性を基礎付けるに足りない」と判断しました。
商業的成功については、本判決の述べるとおり、製品の技術的特徴だけでなく、価格設定、宣伝、需要動向等の要因が密接に関連するものであるため、それ自体としては、発明の進歩性を基礎づける主要事実にはなりませんが、間接事実にはなり得ると考えます。本判決は、商業的成功が、進歩性の判断に全く影響しないという趣旨ではないと思われます。
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