醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1251号   白井一道

2019-11-19 11:53:29 | 随筆・小説



    徒然草78段『今様の事どもの珍しきを、言ひ広め』




原文
 今様の事どもの珍しきを、言ひ広め、もてなすこそ、またうけられね。世にこと古りたるまで知らぬ人は、心にくし。

現代語訳
 最近、話題になっている事を珍しがり言い広め、もてはやす事もまたいかがなものか。世間が忘れさるまで知らないでいる人の奥ゆかしさはない。

原文
 いまさらの人などのある時、こゝもとに言ひつけたることぐさ、物の名など、心得たるどち、片端(かたはし)言ひ交し、目見合はせ、笑ひなどして、心知らぬ人に心得ず思はする事、世慣れず、よからぬ人の必ずある事なり。

現代語訳
 真新しい人などがその場に居合わせているとき、仲間内で言い慣わしている事々や物の名など、心得た者同士は片言で言い交わし、目を見合わせ、笑い合うなどして、事情を知らない人に何のことだか分からない思いをさせる事、世間を知らず、よからぬ人は必ずいるものである。



 自民党の派閥解消は何を結果したのか。
 1980年代後半、リクルート社会長の江副浩正が、1984年12月から1985年4月にかけて、自社の政治的・財界的地位を高める目的で、グループ企業リクルートコスモスの未公開株を、政治家、官僚をはじめ経済界やマスコミ界の実力者にばらまいた事件がリクルート事件である。中曽根康弘、竹下登、宮澤喜一、安倍晋太郎、渡辺美智雄ら自民党の派閥領袖クラスの政治家だけでなく、野党議員も含めて広い範囲に渡されたとされており、文部省(現・文部科学省)、労働省(現・厚生労働省)の官僚やNTTの経営者らも有罪となった。政界では、労働大臣、官房長官を歴任した自民党の藤波孝生のみが受託収賄罪で起訴され、1999年に有罪が確定した。その他に、小渕恵三、小沢一郎、橋本龍太郎、梶山静六、森喜朗、加藤紘一、伊吹文明、野田毅、堀内光雄ら、その後の日本政界を牽引した政治家も譲渡を受けたとされている。リクルートが政治家に多額の献金を行なっていたことや、政治家主催のパーティ券を大量に購入していたことも判明し、この事件を機に国民の政治不信が一気に高まった。その影響で、中曽根氏が一時自民党を離党し、竹下登内閣は総辞職することになった。
リクルート事件をきっかけに政党助成法が制定されたほか、公職選挙法が改正され、収賄罪で有罪となった公職政治家は執行猶予判決であっても公職を失うという規定が設けられた。
中選挙区制度のもとでは選挙にお金がかかりすぎる。お金がかかりすぎるから汚職が増えるということか。小選挙区制度になれば、お金がかからなくなるからクリーンな選挙が実現すると言うような話を聞くようになった。
リクルート事件後1991年、海部俊樹内閣および自民党執行部は小選挙区300、比例代表171の小選挙区比例代表並立制導入を企図するが、小泉純一郎らが反対を表明し推進派の責任者だった羽田孜に猛反発するなど党内調整が難航し、導入は見送られ、内閣は総辞職した。
中選挙区制度による政治腐敗を一層するために導入されたのが小選挙区制度であった。小選挙区制が導入されるようになると今まであった自民党内の派閥が党内にあって力を失う事態が生まれて来た。中選挙区にあっては、同じ選挙区に自民党公認候補が複数立候補し、自民候補同士がしのぎを削る戦いを繰り広げた。
自民党内における派閥間の戦いが自民党に活力を与えると同時にまた腐敗も生んだ。だが、小選挙区制になり、それまであった自民党内における派閥間の戦いが無くなる代わりに活力をも失わせた。その結果が民主党による政権奪取という事態を生むことになった。
民主党は政権運営に失敗し、官僚や財界、マスコミの支持を失い、政権を失った。自民党は政権に復帰し、安倍長期政権を維持しているが、党内に昔はあった派閥の力がないため、自浄能力を失い、近いうちに安倍政権は崩壊するのではないかと私は見ている。安倍政権の崩壊は同時に自民党が政権を失うことになるのではないかと考えている。