『黙示文学入門』 シュミットハルス著
大転換の徴(しるし)は至るところにある。古い被造物の消滅
には、激しい死の痙攣がともなう。新しい時の産みの苦しみ
が、古い世界の死の闘いと混じりあうのである。
過ぎゆく世(アイオン)は見るまに老いてゆく。「何故なら世は
その若さを失った。そして時はまさに老いようとしている」
(第4エズラ)それ故、世界の状態はますます悪くなってゆくので
ある。
終わりの時代の人間は前の時代の人間よりも虚弱となる
(第4エズラ)。奇形児が増大する(第4エズラ)。子どもたちが
白髪で生まれる(ヨベル、シビュラ)。疫病が蔓延し、恐ろしい
病気が猛威をふるう(シビュラ、アブラハムの黙示録)。そして、
間もなく女たちは子を産まなくなるのである(シビュラ)。
<中略>
太陽と月は正しい軌道から離れる(第4エズラ)。星の運行は
混乱する(エチオピア語のエノク)。災の徴が天に現れる
(シビュラ)。木からは血が滴り、石が叫ぶ(第4エズラ)。
被造物の終わりがやって来たのである。神は(全被造物を木に
例えれば)その根元に斧を置いた。その断末魔の苦しみが始まる
(シリア語のバルク、第4エズラ)。開いた眼を持つ者には、こうした
終末の前兆が、現在、日に日に積み重ねられ、日に日に増えつつ
あるのが、はっきりと見えるのである。
自然におけるすべての終末の兆候に加えて、人間の非道な
振る舞いも驚異的に増大する。人間関係が混乱する。「賢者
が黙して愚者が語る」(シリア語のバルク)。「分別は姿を見せず、
知恵は自分の隠れ家に引き篭もるだろう」(第4エズラ)。からで
ある。新たな戦争が次々と起きる(エチオピア語のエノク、シビュラ、
シリア語のバルク)。兄弟すら互いに敵対し、父と子が対立し、
社会の秩序は崩壊する(エチオピア語のエノク、ヨベル、エズラ、
シリア語のバルク)。いまや、終末の脅威が予感され、古い世(アイオン)
が足早に終末に向かうのである。
古い世の終わりが今や間近に接近していることは、歴史の歩み
全体からも読み取ることができる。歴史には、神によって一定の
存続期間が定められておりーー多くの場合、創造から終末までが、
6000年あるいは7000年、つまり一世界週間と考えられるーーそ
こで、旧約聖書の記述をもとにして、古い世はもう間もなく終わる
に違いないと予測できたのである。