まだ早いかなと思ったが、ちょこっと様子見に出掛けた。すぐ近くの森へ。
今日、たったいま、不穏な噂を聞いた。その森が、小さな森が、売りに出されるかもしれないなんて。
森を消し、木々や草々の姿を消し、家でも建てようとでもいうのだろうか。街中には、空き家が腐るほど増えているというのに。
そんなことを知ってか知らずか、今年もチゴユリたちが萌してきていた。
街に住む人々の思惑など知ったことかと、伏し目がちな横顔に、ほんの少しの笑みをたたえて佇んでいた。
派手な装いでシャガがしゃしゃり出ていた。
さらりと楊梅色(やまももいろ)の外套を脱ぎ捨てて、真っ赤なトップスを惜しげもなく見せつけているのはヤマツツジだ。
フタリシズカ(二人静)が湧き出した。皆が皆、列伍を整え湧き出した。
何をしようというのだろう。草々の秘めた思いを慮ると、静の舞がほの見える。