鎌倉徒然草

鎌倉に住んで25年。四季折々の自然を楽しみながら、オリジナルの和雑貨の企画、製造、販売を展開しています。

天職

2021年07月23日 | 日記

「これが私の天職」と言い切れる人がうらやましい。

ひさしぶりに辞書を引いた。(スマホではなくボロボロの岩波国語辞典)

天から授かったつとめ。神聖な職務。自分の生まれつきの性質に合った職業。とある。

自分の性格がわかるまでの時間が長いので、自分に合った職業に出会うのはある程度の年が必要だ。いや、幼いころからあこがれていた職業に向け努力して、その道で食べていく、行けるようになる幸せな人もいる。

「天職」というと真っ先に思い浮かぶ光景がある。松本の奥まった集落に「みさやま紬」を織り続ける工房があるのです。自宅の裏山の植物を使い、昔流の製法で染め上げた糸で紬を織り上げる。きもの雑誌に載っていたこの「みさやま紬」の紬地の色柄、里山の写真が忘れられないのです。

紬の製作現場の壮絶さを物語るくだりがある。この紬の創業者ご夫婦は、来る日も来る日も睡眠時間を削り機を織っていたという。ある日悲劇が。

奥さんが機仕事の最中に亡くなられたのだ。反物を汚してはいけないという配慮だったのか、横ざまに倒れていたという。

翌年にはご主人もあとを追うように亡くなり、今は2代目が後を継いでいる。
その2代目の息子さんも睡眠時間4時間ほどで命を削るような仕事をして入院する。なぜそこまで・・・と問われて、その人から出た言葉が、

「天職ですから、仕事をしている時が一番充実しています」と。まさに、天から授かったつとめです。仕事の重み、命の重みを感じます

着物の製作現場は厳しい。ある程度の量を作らなけらば暮らしてゆけない。

私はこの記事に出会ったとき「天職」という言葉をあだやおろそかに口にできないと思った。

日本中に、紬の名産地は数多くあるが、松本のこの美しき織物の里にいつか行きたい。そして、その美しい紬に触れてみたいのです。





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