工房から3分の所に鏑木清方の旧居跡が「鏑木清方美術館」として在るのです、贅沢なことです。93歳で亡くなるまで、18年間過ごした住まいを再現して、その画室には座布団や絵筆、絵の具と言った身の回りの細々したものが置かれ、不思議な高揚感を抱きます。
昨日着物のことをブログに書いていて、東京国立近代美術館で「鏑木清方展」が開催中なことを思い出し行ってきました。美しいきもの姿の女性を描いたら、この方の右に出る人はいないでしょう。
しかし、館内に入って5分も経たないうちに、「美人画の巨匠」と言うありきたりな印象は、見事に吹っ飛んだのです。
明治という時代背景の中に生きる市井の人々の暮らしが、それはそれは細やかに、そして暖かく随所に描かれていて、感動の一言です。
100点の作品の中には、「築地明石町」や「樋口一葉」などなじみ深い絵も勿論展示されていますが、私は「鰯」に強く心惹かれました。
下町の、長屋と言うのでしょうか、前掛けにたすき姿の女将さんが、鰯売りの少年からざるに入れた鰯を受け取っている。台所のこまごまとした生活雑貨、たとえば手桶、水がめ、すり鉢等が丁寧に描かれていて、天窓からは煮炊きかお風呂か、天窓に煙が見える。隣家は駄菓子屋で、店先に小さなお菓子が並び道端の野の花も愛らしい。
何げない生活の、一瞬を切り取ったこの絵が、とにかく心に残り、自分を根っからの庶民と位置づけていたと、随筆に書いている、その心に触れた思いでした。
東西線竹橋下車 5月8日まで![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/e1/9de8843377dda190be31c4a78beda8cb.jpg)
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