今日はノーベル平和賞の発表があり、受賞者はアフリカコンゴの医師・ムクウェゲ氏と、イラク出身の女性・ナディア・ムラードさんの二人。
どちらも女性の性的被害者への救済に奔走しており、ムクウェゲ氏はコンゴの内戦で性的暴行を受けた女性たちを治療して来た。また、ムラードさんは自身がイスラム国の性奴隷として拉致された経験がある。
性的被害を訴えて今年一番話題をさらった感のある「#Me too」は受賞に至らなかった。あと2、3年運動が続けば受賞の可能性が大きいだろう。
今朝のテレビ朝日の番組では、直接対話と和解を演出した北朝鮮の金正恩と韓国大統領の文在寅が候補に挙がっているということで、かなりの時間を割いてその受賞可能性を探っており、コメンテーターの二人が「受賞したら南北和解に弾みがつく」などと受賞を支持していたが、それは無理だと思った。
最低でも「朝鮮戦争終結宣言」が必要だ。これには戦争当事国である南北朝鮮とアメリカ、中国の同意を得なければならないが、北が「核の放棄」を完全に行えば、トランプは上機嫌で宣言を受け入れるだろう。
ただその際に必要なのは、在韓米軍の撤収ないしは大幅な縮小だ。まして両国が「平和友好条約」(同一国だから条約は使えないかもしれない。平和友好宣言となるのか)を結んだら、完全撤退となる。そうした上で改めて集団的自衛権により、韓国は米軍を核とする国連多国籍軍の駐留を受け入れるのではないか。
その後のことはさておき、南北両国がもし朝鮮戦争終結を宣言し、友好条約的なものを結んだ暁には、当然、南北首脳はノーベル平和賞の最有力候補になるに違いない。その時はトランプ大統領も初の米朝直接会談により突破口を開いた功績で受賞の対象になる可能性が高い。
もし三者がノーベル平和賞を受賞したら、北朝鮮では初めて、韓国では金大中元大統領に次いで二人目、トランプは現役のアメリカ大統領としては5人目か6人目となる。
翻って日本はどうか。今年は医学生理学賞で本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が受賞した。戦後、日本人初めての湯川秀樹博士以来、26人目となるようだが、理系の受賞者は特に21世紀になって毎年のように受賞しているが、文系の平和賞・経済学賞・文学賞の方は見劣りがする。
経済学賞はまだ誰も受賞者がなく(ほとんどはアメリカの学者だ)、文学賞は去年日本の長崎出身でイギリス在住ののイシグロ氏が受賞してこれで3人。
今回話題にした平和賞に関しては、1974年に佐藤栄作元首相が受賞しただけである。佐藤氏の功績は沖縄返還とそれに際して核兵器を米軍基地へ持ち込ませないことと、持たないこと及び造らないことという「非核三原則」を提示したことにある(もっとも米軍は沖縄の基地への核持ち込みを行っていたので、非核三原則は実質的には守られなかったのだが…)。
日本人がもし平和賞を受賞するとすれば、国連憲章の趣旨に反する日米安保という二国間軍事同盟を廃棄し、さらに非同盟中立(永世中立ならもっと良いが)を宣言し、軍事的な相互防衛などという一見正しそうな言葉だけの同盟は一切排し、専守防衛に徹する中立国構築に尽力した政治家に与えられると思う。