鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

糸島市の可也山と芥屋の大門

2024-09-30 10:29:11 | 邪馬台国関連
土曜日の午前10時からの放映だったが、NHK福岡放送局が作成した番組で『#てれふく・ゴリけん福岡地名探偵』というのを総合テレビで再放送していた。

この番組は3年前に福岡地方だけに放映されたものらしいが、今度、福岡県糸島市を舞台にした朝のテレビ小説『おむすび』が9月30日の月曜日から始まるというので、ちょうど番組が糸島市の地名を取り上げていたため全国区として再放映されたようだ。

自分としての予見ではあの『魏志倭人伝』に載った「伊都国」の「伊都」と「糸島」の地名の異同についてを取り上げるだろうと、興味津々、というか手ぐすねを引いて観ようとしたのだが、取り上げられたのは、

①福岡市と糸島市の境にある「油山」の意味
 
②福岡に多い「原」を「ばる」と読む謂れ
 
③(視聴者からの質問で)八女地方では筑前煮を「おちゅういり」というのはなぜか 

④糸島市の「可也山(かやさん)」と海の景勝地「芥屋の大門(けやのおおと)」の「かや」と「けや」は似ているが起源は?

で、ちょっと期待外れだった。

この中に「糸島」の「いと」と「伊都国」の「伊都」とは同じか違うか――については触れられなかったのは残念だったが、「糸=伊都=いと」と読むだけだったのが、筑前風土記や日本書紀の仲哀天皇紀に見えるように、

――糸を今(風土記と書紀の編纂時点で)は「いと」と読んでいるが、これは誤りで本来は「イソ」(伊蘇)と読むのが正しい。糸島の豪族は「五十迹手」(いそとて)で、彼らの祖先は半島の「意呂山」(おろやま)に降臨したあとここ糸島に渡って来た。

とあり、糸島の「糸」は元来「イソ」であり、また豪族「五十迹手(いそとて)」の先祖は半島の南部から渡来したことが、日本の古代文献に書かれている以上、糸島を「伊都国」としてきた従来の<定説>が揺らがざるを得ないことが福岡放送局側で認識されたので、今回の「地名探検」からは除外されたのだろう。

自分のように「伊都国=糸島説」には断固反対の立場にしてみれば、少しはまともな解釈に向かいつつあるのではと歓迎しておきたい。

さて、糸島地方の古代の豪族「五十迹手(いそとて)」が言うように、彼らの先祖は半島の「意呂山」に降臨したとあり、その後、九州に渡って来たようだが、その時の半島からの出航地は「伽耶地方」であった。この伽耶は今日の地名では金海であり、魏志倭人伝時代は「狗邪韓国」という倭人の一国家であった。

このことを裏付けるのが、①~④の最後の④である。番組では④をめぐって地元の考古学者か郷土史家かのどちらかは明確ではなかったが、専門家が登場して番組のキャスターゴリけんと女性アナに説明していた。

この④ではまず「芥屋の大門(けやのおおと)」に船で近づく様子が放映された。

この珍しい地名「けやのおおと」のうち、後半の「おおと」は「大門」と書き、かつて海底が噴火したあとに流れ出た溶岩がすぐに冷え固まってできた「柱状節理」の地形で、確かに奇岩であり、荒々しいが三角形をした巨大な門のように見える。

そして糸島市の富士とも言える「可也山」(かやさん)の秀麗な姿が映し出され、女性アナが「けやとかやとは似ていますよね」と言うと、件の専門家はどちらも半島南部にあった「伽耶(かや)」を起源とする説を紹介していた。
番組では直接は紹介されなかったが、筑前風土記と仲哀天皇紀からすれば可也山の「可也」と「伽耶」とは結び付かないと考えるほうが無理だろう。

芥屋の大門の「けや」も「かや」の転訛のうちに入ると考えて差し支えあるまい。半島の伽耶地方と糸島との間を往来する航路の入り口であり出口を象徴する岩礁なので、「伽耶航路の大門」との名付けが転訛し定着したものだろう。

秀麗な山容の可也山も俗にいう「船通し山」、つまりはるか海上から陸地の存在と方向を教えてくれる「目当ての山」だったのだ。この名付も半島の伽耶地方と糸島の結び付きを今に伝える名称だ。

半島南部の九州への出航地「狗邪韓国=伽耶」から糸島地方への航路は直接ここに来ていたことを象徴する「けやの大門」であり「かや山」である。

もし魏志倭人伝における「伊都国」がこの糸島市なら、何もわざわざ唐津市の「末盧国」に船を着け、そこから海岸段丘沿いの荒々しい陸路をとってこの糸島まで来る必要はなく、壱岐の島から直行すればよいだけの話である。

「伊都国=糸島説」が成り立たないことは明らかではないか。

(※巷のほとんどの邪馬台国論者は相変わらず「伊都国=糸島説」を標榜して議論を進めているので、距離と方角の「行程論」では完全に矛盾撞着という袋小路に入っており、畿内説も九州説も混迷を深めるばかりである。)

――因みに、残りの①、②、③の説を取り上げておく。

①の「油山」の「油」は「椿油」のこと。この山中に多かった椿の実を初めてしぼって油にした「清賀上人」の事績であった。

②の福岡県では「原(はら)」を「ばる」と読むのはなぜか。これは福岡だけではなく鹿児島でもほぼ「ばる」だ。あるいは「ばい」と読むこともある。

地名学者の説では「墾田」の「懇」つまり「はる」(開墾する)から来たのだろうとするが、「墾(は)る」からなら全国で使われそうだが、実際にはほぼ使われておらず、「ばる」が「墾(は)る」からの転訛とすることは無理だろう。

実はこれも朝鮮半島由来説があり、専門家によれば中期朝鮮語に「パル」があり、これは「原」の意味だという。また「ポル」もあり、こちらは「平野」の意味だそうだ。

となると「ばる」は朝鮮語が起源かというと、専門家の調査にあるように朝鮮語の中でも「中期朝鮮語」であり、「古朝鮮語」ではないことに注意しなければならない。

私見では「原」(はら)は古日本語(倭語)であり、「ばる」「ばい」はその九州における転訛に過ぎないと考えている。

③の八女市で使われる「おちゅういり」だが、筑前煮のように「煮しめ」ないで、汁(つゆ)をたっぷりではなく半分程度残しておいた「お煮〆」のことらしい。



自民党新総裁は石破茂氏

2024-09-28 15:04:26 | 日本の時事風景
昨日の4時少し前、自民党の総裁選で石破茂氏の当選が決まった。

決選投票で高市早苗氏と争い、第1回投票では30票近くの差を付けられていたのだが、決選投票では逆転し、逆に21票の差を付けて勝利した。

これまでの総裁選では石破氏の獲得する国会議員票は少なく、全国の党員・党友票ではリードしていても常に決選投票さえも行けなかったのだが、今回は議員票が驚くほど上積みされて勝利につながった。

第1回投票では石破氏、高市氏、小泉氏が並んだが、議員票はともかく全国の党員・党友票で伸び悩んだ。まだ43歳と若かったので、今回は見送る自民党員が多かったのだろう。

石破氏は鳥取県の出身で、鳥取県出身としては初めての自民党総裁であり、10月1日に開催される国会での首相指名選挙で選ばれるのは確実なので、同県出身の総理大臣も初ということになる。

鳥取県は都道府県の中で最少の55万ほどの人口しかなく、二十世紀ナシと鳥取砂丘では全国的に有名だが、この石破氏の首相就任でもう一つ全国区が誕生する。

今回立候補したのは9人で、それぞれ出身県も経歴も違うが、出身した大学を一覧すると興味深い、というか、あっと驚く。

何と9人のうち6人までが最終学歴はアメリカの大学なのだ。

石破氏と今回決選投票に臨んだ高市氏はそれぞれ慶応大学、神戸大学の出身で、あと一人官房長官だった加藤勝信氏が東大で国内の大学だが、残りの6人はハーバード大学が小林・上川・茂木・林氏の4人、小泉氏はコロンビア大学、そして河野氏はジョージタウン大学である。

議員個人としてはどの大学を出ようが自由なのでコメントをしてもあまり意味がないのだが、日本の総理を目指す人物が揃いも揃ってアメリカの大学を最終学歴としているのは異様としか言いようがない。

日本を統治する最高責任者がアメリカの大学を出ているということは、言いたくないがアメリカの政治・政策を日本で実現する、あるいは日本に植え付ける狙いがあるのではないかと疑ってしまう。

スタンフォード大学フーバー研究所の教授を長年務めていた西鋭夫氏は、かの大学を卒業する際にCIAのスタッフになり、日本に帰国してからスパイ活動に従事しないかとスカウトされそうになったと告白している。

総裁選の立候補者でこうもアメリカ帰りが多いと、そんな危惧を懐いてしまうのだ。

たしかにアメリカの大学で学べば英語は自由に操れるようになり、国際社会のの中の日本という見地からすれば、それはそれで有益だろうが、アメリカの政治政策の下請マンになっては困る。

それでなくてもすでに日本の外交と軍事(安全保障)はアメリカの傘のもとにある。

これに対して石破氏は「東アジア版NATO」を提唱している。

このNATOは東アジアのどの範囲を指し、主要国はどの国なのか明らかではないが、少なくとも日米安保のような国連憲章違反の「二国間条約」でないことは確かだろう。

昨今「同志国による連帯」がクローズアップされてきているが、こちらの路線のほうが石破氏の提唱する東アジア版NATOに近いのではないか。

アメリカと中国が敵対関係になりつつある時、このまま(日米安保条約)では日本が米中紛争の矢面てに立たされるのは目に見えている。

それ(経済交易)はそれ(経済交易)、これ(政治)はこれ(政治)として、もう40年もつながって来た日中間関係を即座に立ち切るわけにはいかない。

日本の立ち位置は、米中双方の独自性・歴史性を認識した上でソフトランディングを提示することに尽きる。

アメリカの大学を最終学歴とした今回の総裁選候補者たちを、その方向に徹底的に活用してほしいものだ。



能登地方で今度は大水害が発生

2024-09-25 16:37:58 | 災害
石川県の奥能登地方を線状降水帯が襲った。

先週の土曜日(21日)の朝、NHKテレビを見ていると画面の左側に能登地方の大雨警報が掲示された。

線状降水帯の発生を予兆するものだった。

雨の降り方は想像を絶するものだったらしい。

不幸にもその日の午前中に家が流され行方不明になった女子中学生と両親の間で交わされたスマホのラインが、事の重大さを伝えていた。

公表されたラインのやり取りと両親の話によると、その日は父親が息子の試合に早朝に家を出ており、また母親も娘の付き添いでやはり早い時間に家を出ていたそうで、結局5人家族のうち末の娘だけが家に残っていた。

ところが9時くらいになって警報が発令され、心配になった両親は家にライン電話を入れた。

土曜が休みなので女の子はまだ二階の寝室に横になっていたらしく、電話に促され、また雨音の強さもあって外を見ると家の外が海のようになっているのに気付いた。

やがて二階の寝室のドアか一階の玄関のドアかは分からないが、「ドアが開かない」とラインで送って来た。

慌てた両親はとにかく高いところに上がるように言ったらしいが、1時間後にはラインへの返事がなくなったらしい。

父親は何としても家までたどり着かなければと回り道をしてやっと帰宅できたのだが、着いて見ると家は土台の部分だけを残して跡形もなく流されていた。

末娘の姿はもうそこにはなかった。

3日後の昨日、普段はいていた娘の靴の片方だけは見つかったそうだが、いまだに本人の姿は確認できていない。

その日の早朝の時点では両親が他の子どもたちのイベントに付き添って出かけることができる天候だった。

しかしわずか2時間後には家の周辺に水が押し寄せ始めるほどの豪雨となり、さらにまた1時間後には家そのものが持っていかれるほどの洪水が発生したことになる。

この日はまた大相撲で石川県出身の大の里が大関豊昇龍を破り、13勝1敗となって優勝を決めた日であった(これでほぼ大関昇進が決まった。入幕後5場所での大関昇進は史上最速とか)。

同じ石川県なので何か因縁めいた感じがしないでもないが、優勝インタビューで「大地震に見舞われた能登の人たちを元気づけられたらうれしい」ということを語ったのだが、さらなる大水害に遭ってしまった人たちには空しく聞こえただろう。

元旦の大地震といい、今度の大水害といい、1年のうちに2度も大きな災害に遭わなければならなかった能登の人たちの心が折れないと良いが、何としても頑張ってほしいと思う。

(※25日付、奥能登大水害による死者は9名、行方不明は2名。家屋等への被害はまだ集計されていない。)




律儀なヒガンバナ

2024-09-23 19:34:10 | おおすみの風景
今年もヒガンバナが秋の彼岸の時期に咲いた。

夏の猛暑で忘れていた場所ですくっと花茎を伸ばしていた。

この花の特徴は、どんな時でも秋の彼岸シーズンに必ず咲くということだ。律儀という他ない。

鹿児島ではおおむね彼岸の入りから中日までには咲いている。

球根の花は示し合わせたように揃って咲くことが多い。

球根性のサフランモドキがやはり同じような咲き方をする。

我が家でも日当たりの良い場所の物と、日当たりの悪い場所のが生育条件はかなり違うのに、ほぼ同時に薄いピンク色のサフランに似た花を咲かせる。

その理由とは、どうやら大昔、同根の親から受け継いだ遺伝子によるらしい。

要するに「万世一系」的な遺伝子を持ち続けているのだ。

だから生育の場所こそ違え、示し合わせたように一年の同じ時期に同時に花を咲かせる。

人間世界でも、生得的に同じ場所で生業を全うする職人的な人たちがいるように、球根の花の世界でも、同じ土の下で花咲く準備を怠りなく継続している球根たちがいるのだろう。

身につまされるのが、一業を全うできなかった我が身だ。





大記録達成ー大谷翔平選手ー

2024-09-20 21:57:19 | 日記
大リーグドジャーズの大谷翔平選手がついに前人未到の大記録を達成した。

50本塁打50盗塁という新記録が、大リーグの米国籍選手ではなく日本人選手から出たというので、アメリカのメディアは大騒ぎだ(昨日の試合結果では51本塁打51盗塁だった)。

「打って良し、走って良し」というのは野球選手に与えられる名誉ある評価だが、大谷の場合は「打って」の格が違う。

単なるヒットの量産ならあのイチロー選手が大リーガーとしては定評あったが、イチローの場合はほぼ単打に限定されていた。

大谷の場合はさらにこれに本塁打の量産が加わるのだから、驚く他ない。今日のマリーンズ戦では何と3連続本塁打を放ち、累計ではゴジラこと松井秀喜選手をすでに上回っている。

世界のホームラン王と言われた王貞治選手は、756本の世界記録を達成したあとも、引退するまでに前人未到の868本を打っている。

この数は王選手の選手生活約30年の積み重ねだが、今年30歳の大谷選手があと何年プレーするか分からないが、仮に15年とした場合、15×50=750となりこれまでの230本と合わせて1000本に到達する可能性が出てきた。

何とも凄い話である。

ただ日本の野球では盗塁数に関してはさほどの評価はないが、向こうでは大きいようだ。盗塁数も球団契約の際に契約金額にかなりのプラス算定になるのだろうか。

去年までは投打の「二刀流」だったのだが、右ひじの故障(手術)で投は断念し、打に専念したのが良かった。

それにしても打つだけなら右ひじの故障には影響ないのだろうか?

肘や膝の不調で選手生命が断たれたり、記録が大幅に低下する選手が多い中で、よくぞここまで頑張っていられものだと、感心を通り越して呆れるほどだ。

昨今、子どもたちの間ではサッカー人気が高く、野球は押され気味だったが、ここへきて大谷の大活躍に「宗旨替え」する子や親が増えていくかもしれない。