鴨着く島

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専守防衛力を有する永世中立国へ(4)

2019-08-20 08:44:49 | 専守防衛力を有する永世中立国

永世中立国といえば何と言ってもまずスイスが挙げられる。

スイスのほかにはベルギーとオーストリア、そして中米のコスタリカが現在のところ国際的に認められた永世中立国である。

それぞれの国が永世中立国になった歴史的背景について、ウェブから[www.y-history.net]というホームページに行き当たり、簡潔にして要を得た内容だったので参照させてもらった。以下に国別に要点を書きだしてみる。

 

1、スイス連邦

1815年のウィーン議定書により、永世中立国となった。

スイス憲法に「永世中立国」とは謳っていない。

軍事力あり(徴兵制によって維持)。

NATO(北大西洋条約機構)にもUN(ヨーロッパ連合)にも属していない。

国際連合にも2001年まで加盟していなかった。

 

2、ベルギー王国

1839年に永世中立となった。

憲法上の規定なし。

軍事力あり(志願制か徴兵制かは不明)。

国際連合、NATO、UNのいずれにも参加している。

 

3、オーストリア共和国

1955年に英米仏ソとの「オーストリア国家条約」によって主権回復が認められ、翌年、永世中立国となった。

「永世中立に関する連邦憲法法規」(中立法)を制定している。

軍事力あり(志願制か徴兵制かは不明)。

国際連合とUNには加盟しているが、NATOには参加していない。

 

4、コスタリカ共和国

1983年に永世中立を宣言した。

軍事力なし(1948年に憲法で常備軍を廃止している)。ただし非常時の徴兵を憲法で定めている。

国際連合には設立当初から加盟している。

 

以上が現在の永世中立国4か国の概要だが、歴史的経緯も違えば条件も各々異なっている。

スイスのようについ最近(2001年)まで、戦後の国連にさえ参加していなかった国もあれば、ベルギーのように集団的自衛権によるNATOにも国連にも加盟している国もあれば、枢軸国側の国として中華民国を除く「戦勝国かつ安全保障理常任事国英米仏ソ」によって慫慂されて永世中立国になった国もある。

徹底していると言えば徹底しているのがコスタリカで、この国はかっての日本社会党の主張のように「非武装」で永世中立国になっている(ただ非常事態には徴兵があり、国連には加盟している)。

まさに4者4様であり、永世中立国になる要件は、軍隊を持つ持たぬにかかわりなく、要するに「二国間軍事同盟」だけは持たないということに尽きる。

日本における二国間軍事同盟はもちろん「日米安全保障条約」である。

日本占領時代の早い時期にマッカーサーが「日本はスイスのようになればよい」と言ったそうだが、朝鮮動乱による駐留米軍の大量投入があり、「日本もこの動乱へ軍人を出動して欲しい」と吉田首相に申し出たことから見て、その考えは現実から遠のいてしまったようだ。

その後、占領時代を終わりにするはずの「サンフランシスコ平和条約」の締結の時(全権は吉田茂)に、同時に「日米安保(旧)」が結ばれ、10年後(1960年)には岸信介首相が改定「日米安保」を(何か裏があったと思うのだが)締結し、さらに10年後(1970年)には一年毎の自動延長となり、今日に至っている。

二国間軍事同盟は国連憲章上疑義がある。たとえば同じように「米韓相互安全保障条約」があるが、朝鮮半島は現在でも休戦であって「戦争状態」が続いているので、アメリカとの二国間軍事同盟が望ましくはないが継続されているに過ぎない。本来は国連安保理決議によって「国連多国籍軍軍」が出動して解決にあたるのが国連憲章上の筋なのである。

もし板門店で少なくとも「終戦協定」、可能ならば「平和条約」が締結されれば、米韓同盟による米軍の駐留は排除されることになり、あとは国連監視団(軍)による監視活動にゆだねることになる。

日本の場合はポツダム宣言を受諾し、またサンフランシスコ平和条約締結でアメリカとの間では完全に和解が成立したのだから、本来なら米軍が駐留しているはずはない。ところがマッカーサー憲法によって自衛軍の存在すら否定されてしまったことと、1949年以降の中国共産党政府やソ連の脅威が高まったことで、米軍のプレゼンスが持ち越されることになった。

いわゆる東西冷戦危機が太平洋の要石と言われた沖縄の米軍駐留を既定のものとしてしまったわけである。必然として日米安保は必須のものにならざるを得なかった。

しかしながら、もう30年近く前の1990年代初めに冷戦は終わっている。

頭を切り替えたほうが良い。今度のペルシャ湾タンカー銃撃事件でイランとの関係が取りざたされているが、アメリカの要求に応じてペルシャ湾へ自衛隊艦船を出動させたら、せっかくの友好関係にあるイランとの関係が悪化する。

日本が自衛隊艦船を出したら、必ず、「日米同盟あるがゆえに、そっちを優先させたのだろう。日本はアメリカの言いなりだ。主体性がなく鵺(ぬえ)のような正体不明の国だ」とのそしりを受けるだろう。

日本が有色人種差別の欧米植民地解放を掲げて大戦を戦ったことは、戦後に植民地からの独立を果たしたアジア・アフリカの国々なら皆知っていることだ。欧米の一員であるアメリカの言いなりになっているからそのことが見えないだけである。

日本はある意味でラッキーな地政学上の位置にある。それは「国土環海」の条件にあり、要するに多くの国が衝突を繰り返してきた国境地帯を持っていないのだ。

今は北方領土問題を筆頭に竹島、尖閣諸島の国境問題があるが、これらのことで武力衝突することはない。

それ以上に国民の教育程度の高さとまとまり、文化の多様性と歴史性、経済活動の自由など世界に冠たる条件を持っている。そして戦後は74年間一度も他国との武力衝突をしていない。この一点だけでも永世中立を宣言するに値し、何国といえども認めざるを得ないだろう。

その一方で地理的条件から大地震、台風、大雨による災害多発国である。今や南海トラフ、首都圏直下型地震、富士山を象徴とする火山噴火など喫緊の災害対策に対応していかなくてはならない。

「日米安保がなくなったら北朝鮮が、中国が、ロシアが」とビビるより、もっと喫緊の課題があるのだ。アメリカの言いなりで軍備をどんどん増強するより、日本は大災害に打ち勝つ安心安全対策にもっと真剣に取り組むべきだろう。

永世中立国宣言は、新天皇の世界への最高のメッセージになるに違いない。

私はそれをぜひ聞きたい。世界もそれを待っている。