奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

自由に生きるということ

2012-10-10 | 心詩~こころうた・己
傷付いた心と引き換えに
手に入れた自由だった
それは きっと
変われる最後のチャンス

なのに 私は
自由という強敵の前で
惨めにたじろいでいる


自由とは
好き勝手に生きることではなく
生き方を自分で選択できるということ

自由とは
誰にも邪魔されず
誰にも疎外されない場所に
逃げ込むことも許されるということ

だが
自由には
様々の制約と
様々の限界が
待ち受けている

それらは すべて
自分自身の限界であり
そのために立ちはだかる制約なのだ


自由を履き違えるほど
浅はかな人間ではないが
自由の不自由さを今
身を持って思い知らされている

自由とは
ゼロから始めるということなのだ

自由に生きるには
たった独り
孤島で生き延びるに等しい
知恵と忍耐力と

どんな人間にも
瞬時に生まれ変われるに等しい
才能と適応能力が
必要なのかもしれない


だから
新しい人生を始めるに等しい
仕込みをまずは丹念にやること
どんな強風にも揺るがない
頑丈な足場をまず作ること

それが
私の人生 最大の課題
大海原を乗り切るための
誇りを持てる人生のための

秋の空、漂う私

2012-10-07 | 心詩~こころうた・己
澄み渡る秋の空に
私は背を向け
ひとり部屋に閉じこもる

紅葉の誘惑にも
高揚しない我が心
ぽっかりあいた空洞が
あまりにも大きすぎて


一歩を踏み出すことに
なぜ こんなに躊躇するのか
私を包囲している
この世界を抜け出せたなら
望んでいたものを
見つけられるかもしれないのに

もう そんな希望は
怖くて 虚しくて
希望が失望に変わる速度に
私の心は追いつけないから


秋の夕空は
無性に寂しさを募らせる
また今日も
私を置き去りにして
一日が終わりを告げる

夕日よ
お前の行く先へ
私も一緒に連れていって

次の朝が来るまで
ひとりで過ごす暗闇は
あまりに孤独すぎるから

My Birthday

2012-10-03 | 心詩~こころうた・己
この世界の
どこにも存在しなかった
私という塊が
ひとつの魂と出会い
姿を成して
誕生した

ただ生きるだけの
簡単な人生は
与えられなかった
人間として生きる
その試練

それは
気高き生涯か

人間である自分に
適合できぬまま
絶えることなく与えられる
人生の課題を
乗り越える力さえもなく
ただ魂を磨り減らしてゆく


愛されたという記憶は
なぜだろう
この細胞の断片にさえも
刻まれてはいない

「愛」というアイテムを
取り扱うための説明書は
与えられてはいなかった

どれが「愛」なのか
「愛する」と「愛される」の見本を
誰も 用意してはくれなかった

「愛」ではないものを「愛」と錯覚し
本物の「愛」を「害」と判断して
私は自らの手で
この人生を
追い詰めていたのかもしれない


紛いものを手本に学習し
実践でしくじるのは道理

貧乏クジばかりの人生
利口でない人間は
すぐ手の届く場所を埋める
はずれクジばかりを掴み
成功が易々とは手に入らないことに
気付きもせず
世の無情に悪態をつく

そうして積み重ねた人生は
やがて 生きる気力さえも奪い去る

この人生が
与えられた(強いられた)ものであるのなら
どんなに努力をしても
運命は変えられないということだろう

だが もしも
自分自身の操縦で
行き先を決められるのなら
この人生は
まだ 諦めるほど 悪くもない


この世界に生まれ落ち
もう 随分の時を生きた

命ある限り
手遅れなどという言葉に
逃げることはしたくない

命ある限り
人間としての生涯を
少しでも救いのあるものに
しなければならない

泣いて 苦しんで
終わるだけの人生ならば
傷付き 傷付ける
それだけの人生ならば
気高き魂を授かった甲斐が
なかったことになってしまう

「生まれてこれて良かった」

そう思いながら
生涯の幕を閉じられたなら
たとえ 砂粒ほどの
幸せしか得られなくとも
私は満足して
この命を終えられるだろう


──この世界に生まれ落ちた日に

闇の中を

2012-10-02 | 心詩~こころうた・己
真っ暗闇に
ぽつんと灯った
小さな光
手を伸ばすと
幻のように
ふっと消える

手に触れたのかも
わからない
頼りなげな光は
点滅しながら
場所を変え
大きさを変え
私を挑発する

『ほら
 こっちが出口だよ』


誰の言葉も信じない
そう決めた私は
そんな挑発に
乗りはしない

たったひとつの
手がかりにも
耳なんか貸さない

「そら
 また消えたじゃないか」

どうせ そんなもん
人の心を弄ぶのが
この世界のルールなんだろう


『バカだな
 今が最後のチャンスなのに』

光は嘲笑うように
ちかちかと瞬くと
無数の星のように
暗闇にぱあっと
散らばった

『もう お前には
 本当の出口はわからない』


光の群れに取り囲まれ
まるで いじめられていた
あの頃のような
惨めな気持ちに
飲み込まれてゆく

ミンナ ワタシヲ バカニシヤガッテ──

声の限り叫ぶ
声は闇に吸い取られる
魂までも吸い取られそうで
私は 思わず
走り出した

どこまでも続く闇を
走って 走って
目蓋をぎゅっと閉じ
どこまでも闇雲に
走って 走って……



闇は 突然終わった
目蓋の向こうに光が射し
ゆっくりと目を開く

見慣れた部屋の天井
窓から差し込む朝日
遠くで囀る小鳥の声
私を囲む 私の日常

「夢……だったのか」

夢の中でも
私はなにかに
追い立てられているのか

悪夢は消えても
心に残る不愉快な濁り
現実は なにひとつ
消えてはいない

「馬鹿馬鹿しい
      人生だな……」

気付けば
泣きながら 笑っていた