昨日の夜から朝方にかけては、また冬に戻ったような寒さでしたね。まさに「寒戻り」の感じでした。似たような季語でも「冴返る」になるともっと寒さを強く感じるような…他にも「余寒」「春寒」などがありますが、みな少しづつニュアンスが違いますので、状況に応じた使い分けをしたいものです。以下のそれぞれの季語の句を読み比べてみると、他の季語と入れ替えることができないと思いませんか。
冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨
寒戻る寒にとどめをさすごとく 鷹羽狩行
橋の灯の水に鍼なす余寒かな 千代田葛彦
春寒や竹の中なるかぐや姫 日野草城
昨日の句会の兼題は「春ショール」でした。冬の防寒用の厚手のショールと違って、素材は軽やかなもの。色もいろいろと豊富に揃っていて、和服にも洋服にも美しい装いのアクセントとして、春のおしゃれを楽しむ女性たちの必需品です。
腑甲斐なき身に巻き余る春ショール 不挟夫佐恵
春ショール靡きやすくて恋ごこち 檜 紀代
今日の句会で一番問題になった〈顔によせ肩にのせたり春ショール〉という句。これを採った人に「どんな場面かしら?ちょっと実演してみて…」と、ショールがありましたので言うと、手にとって首から肩へ回して掛けたので、「でも顔に寄せとあるから、そこの所をもっと分かるようにやってみせて」というと、あれこれやっていましたが、最後はどうして良いか分からずに終りました。
そうなんです。「肩にのせたり」は、まあ分かります。普通は「肩に掛けたり」というでしょうが、まあそこはよしとして、「顔によせ」は何のために…どういう場面?と思いますよね。作者に聞くと、「色や柄を選ぶのに顔に近づけたり、肩にのせたりして、似合うかどうかをみたんです」、さらに「最初は〈何度でも鏡に映し春ショール〉だったんですけど、ああだこうだと考えて…」と。
最初の句だったら、どれが似合うかしらとあれやこれやと鏡の前で見比べている様子はすぐに想像できるでしょう。結局その句の方が分かり易いし、女心も感じられていいということになりました。
こういうことってよく経験しませんか?考えすぎて却って句をダメにしてしまうということ。何事も〝過ぎたるは及ばざるがごとし〟です。分からなくなったら原点に戻ってみましょう。案外素直でいい句なのかも!
今日は載せる写真がありません。ゴメンナサ~イ!(実はこれ書いて写真は、…と探していたらいつの間にか寝ていました。)