渡辺武著 わかりやすい漢方薬
第二章 漢方薬はどう診断するか
5 肝腎の解毒と利尿作用
塩がまずくなった話
人間の五臓六腑というのは、心臓にしろ、胃腸にしろ、腎臓にしろ、互いに相関関係にあります。
腸に汚物がたまれば肝臓に負担がかかるし、腎臓が働かなくなれば心臓に負担がかかります。
われわれの器官臓腑はそれぞれ共同社会の一員であり、五臓六腑にそれぞれ序列があるのです。
心臓は左にあって、各器官に血液を一定の方向に循環させています。
口から食物が入るとまず胃に入り、腸では水で出すものは腎臓に、栄養として貯蔵するものは肝臓に送ります。
そして残りを大便にして排泄します。
肝臓は栄養を血液にして回します。
これを逆にするわけにはいきません。
漢方には、酸・苦・甘・辛・鹹の薬味による分類がありますが、この五つを結んだ五角形は、その序列、相関を表わしたものです。
五角形は、ちょうどアメリカのペンタゴン(国防省庁舎)みたいなもので、共同作戦ができる体制はどこから病がやってきてもスキがないという形です。
酸は肝臓をすっぱい薬で、苦は心臓、小腸、循環器をにがい薬で、甘は胃、脾臓、口唇を甘い薬で、辛は肺や鼻、大腸、皮膚をからい薬で、鹹は腎臓、膀胱、骨髓を塩っ辛い薬で、それぞれ守っているのです。
この序列を「散々(酸)(肝)難苦心して、甘い(胃)こともなく、心配(辛肺)ばかり嗚呼勧進(鹹腎)」と覚えやすく歌っています。
鹹は塩っ辛い薬で水気を出し、腎臓を動かします、皮膚から汗も出すので、心臓に負担がかかります。
塩はひと昔前は自然塩で塩化マグネシウムが入っていて、ミネラルやカルシウムがあり、骨を守る役割をもっていました。
塩にある〝ニガリ〟は、苦くて心臓の薬の肩代わりもしていました。
漢方薬でいう、いわゆる鹹(かん)の薬でした。
ところが、最近は塩まですっかり成分が変わってしまいました。
岩塩や粗塩をイオン交換で精製して、塩化ナトリウムが九九・九%入った塩にしています。
ニガリのない塩、マグネシウムのない塩になってしまい、自然塩の効力を失ってしまいました。
昔の結晶の大きい塩の方が、甘みがあってまる味があり、薬効も大きかったのです。
文明の進歩―多量に塩を生産するということ―は、ここでも人間を自然から遠ざけています。
日本の場合、塩は専売品で国が昔の塩を食べられないようにしているというのです。
京都に住んでいる随筆家の岡部伊都子さんが、『塩らしい塩』という随筆に「家族全員で塩らしい塩を、ニガリある塩をもっと配給してくれということをうたいましょう」と書いたところ、早速、政府のお偉方から「お前何言ってんだ」と怒られました。
岡部さんにすれば、人間の食生活を無視した国のやり方に腹を立てたのです。
文句をいうのだったら、ニガリのある塩を売ってくれ、といいたい。
そのお偉方の文句を、ウップンとして本のあとがきにていねいに記しています。
町で売っている塩は、薬効も乏しくて味も悪いのだから、漢方から見ても鹹の薬といいがたいわけです。
岡山の鯛の塩蒸しといったら、瀬戸内の名産として知られた料理ですが、最近は、鯛の塩蒸しの昔の味覚は何処へやら、まずくて名産とはいえなくなってしまいました。
先ごろ岡山に出向いた時、鯛の塩蒸し料理を探していたら、一軒だけ昔ながらの鯛の塩蒸しを食わせてくれました。
板前のおやじさんにその味覚のコツを聞いたら、
「お客さん、塩蒸しというのは、昔どおりのニガリ塩で蒸さなきゃ、鯛が死んでしまいますよ」とはっきりいっていました。
薬味とは、薬の味と書きますが、人間が食べて、塩辛くてもまろやかである味が、薬としても効力があることです。
これは中国の漢時代から、酸っぱいものは肝臓の薬とか、甘いものは胃の薬というように、人間の味覚という体験を通して、五角形の薬味のペンタゴン(五行説)がつくられてきました。
そもそも漢方薬とは、人間が食べる食物からはじまったのです。(渡辺武著 わかりやすい漢方薬 平成3年5月15日)9版
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