平成21年4月 第19代消防長に就任 消防長1年目!
消防職員数131人 彦根市人口111,728人(管内人口135,233人)
第19代消防長 笠原恒夫 (平成21年4月~平成24年3月)
平成21年4月、「消防長」いわゆる消防機関の長に就任しました。
その時点から、さらに遡ること2年、組織内部で色々と問題があり、当時の副市長が、「長く総務課長をしていると、敵も多くなり、大変だから、一度、市役所で仕事しなさい」という一言で、2年間、消防本部から市へ出向し、市の防災担当をしていました。
当時、あと3年で定年退職だし、市役所には、危機管理の専門官(危機管理監)を置く必要があって、私はその設置を自ら提案し、自らその席に座ろうと、いろいろと策略を巡らしていました。
そして、市役所で定年を迎え、もう、消防の世界には戻らないと、ほぼ、私の策略は成功に近づいていました…
ところが、天の声か?!、大どんでん返し。
消防長として、また消防の世界に戻ることになってしまいました。(前回のあらすじ)
私は実に自分勝手だったと・・・後で反省しました。
(ここから消防の世界)
戻ってびっくり、平成20年11月には山岳救助の滑落事故で職員が死亡、その1週間後には救急搬送中の死亡事故も重なり、懸案事項も山積で組織はバラバラ、職員のモチベーションも最低ライン、市議会対応も後手後手で、ある意味、組織崩壊の危機でした。
少なくとも、私はそう感じました。その後、私以外からも危機感が伝わってきました。
もう「腹を括る」しかありません・・・
人間、人生において、「腹を括る」ことが何回かあると思います。
私は、現状を受け止め、ここで自分が責任をとる立場にあることを認識し、やれるだけのことれることはやると、決意しました。
命までは取られないのだから、自分にできることを自分だけでやろうせす、協力を求めることは、立場を超えて心からお願いすることで通じると思いました。
こう思えるようになった時が、実際に腹が括れた時です。
世間では、もっと大きな問題に対して腹を括っている人もあるでしょう。
こうして、消防長の仕事が始まりました・・・・・
蘭の花のプレゼントが消防長室へ・・・
平成21年4月初旬の話です。
消防長就任の挨拶回りから帰庁したら、事務所でガヤガヤ「蘭の花がきた」と騒いでいました。
写真は、その蘭の花です。二か月半ほど消防長室で大切にしていました。
すっかり忘れてしまっていたのですが、この2年間は、市役所で防災担当をしていたので、飲み会は「居酒屋」さんばかり・・・(笑)
二次会も行きませんでしたので、彦根市の歓楽街である袋町のスナックには縁がなかったのですが、消防の世界に帰ってみると、やはり、宴席は半端じゃありまん。
蘭の花は、以前、二次会でよく使っていたスナックのママさんからの贈り物でした。
少なくとも2年間は行っていなかったので、商売とはいえ、感謝するとともに、改めて、社会は色々とつながっていることを理解しました。
私はまたこの世界で生きるのか・・・・・お酒で健康を害するかも?
また、私を見ている人がいる、見られているから、やはり何事にも人として外れることはしてはいけないと再認識しました。
さらに、自宅に帰ると、別のママさんから就任祝いとしてビールが届いていました。このママさんは現在77歳で現役。頑張っています。
もちろん、消防団幹部のOBや以前上司だった元消防長等、たくさんの激励の手紙をいただき、その重責を改めて感じました。
このように職種が違っても、人は見ています。
つまり人は常に人を通して社会から見られているのです。
見られているからやるのではなく、人としてどのように生きているか、が問題となるのでしょう・・・
今の人格では消防長は務まらない・・・もっと人格を磨かないと!
さて、消防長に就任し、何をすべきか。
何しろ、組織はガタガタでしたから、まず、問題点の洗い出しですね。
出てくる。出てくる。完成された組織の場合、その問題点を探すのは大変な作業ですが、問題が有りすぎると、返って楽ですね。
まず、問題点を徹底的に検証すれば、何が問題なのか、見えてくるものです。
私は、ハードを含む比較的簡単な事業を3つに絞り込みました。
その上に問題となるのが、職員の意識を向上させなければならないという大きな命題も浮かんできました。
まず、殉職者が出て山岳救助の問題、次に、水難救助の問題、そして、2年間放置されていた消防戦術の改革の問題でした。
そこで、プロジェクトチームを3チーム作り、期限をつけて消防長に上申するよう命じました。
5月に指示を出して、8月中にチームリーダーから報告書の提出を受け、9月の補正予算で措置するものや、直接、市長に談判し、10月には一定の方向性を決定することができました。
さらに、職員の意識改革に取り組みました。
これまで、連絡会議という名称だったものを所属長会議に変更し、私が自ら議題を設定し、これまで1時間で終わっていた会議が、余りに議題が多く、3時間になってしまいました。
そして、平成21年度が終了し、概ね80パーセントの懸案事項が解消しました。と私は勝手に思っています。
結論として言えることは、懸案事項を解消することは、意外に簡単であるということでした。
それは、トップが危機意識を持ち、率先垂範の姿勢を持つこと。また、職員を信頼し、任せることはしっかり任せ、その結果を実現してあげることです。
まだ、平成22年度には、残り20%の懸案事項が残っています。
今、振り返ると、平成21年度は、昼休みを含め、休んだことはありませんでした。
また、自慢話になってしまいましたが、人間、腹を括れば、何とかなると思いました。
注) ここでお断りしておきます。私が市役所に出向したから組織が悪くなったと言っているように捉える方があると思います。言い訳をしますと、近年消防長の1年交代が続く人事背景や、これまでの組織体質の問題など、様々な要因が複雑に絡みあっていたもので、私自身も組織を悪くしていた一人だったと反省するところがあります。したがって特定の消防長さんの責任ではありませんし、返って殉職対応なと大変なご苦労をいただいたと思っています。
やっと、平成22年度の話に入れそうです。…
平成21年11月 8日 第5回彦根城下町検定 合格