拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

“思い”を持ち続けたい

2012-11-27 | 旅人のひとりごと


今クールは何年ぶりでしょうか、本当に久々に月9のドラマを録画してみています。

木村拓哉主演のプライスレス(PRICELESS)ですが、視聴率云々は別として、キャスティング先行で、内容的にかなり酷いドラマだなと当初思っていました。

しかし、本日の放送分はすごくよかったです。



前職が撤退した、儲からない魔法瓶事業を買い取って、最高の魔法瓶を作る為に試行錯誤し、そしてそれを飛び込みで持って売り歩くという設定だったのですが、今回はその「ものづくりの中心にある“思い”」がテーマでした。


今の仕事で自分も、新しいサービスの立ち上げをやっています。

ITサービス事業なので所詮、既存技術の組み合わせなのですが、同じように少人数で「良いものを作ろう」というところからスタートして、出来上がったものを、自分達で売り歩いていたりします。


で、すごく良いものを作った(&顧客の反応も上々な)のですが、はっきり言って、なかなか売れない。(苦笑)

元々自分は技術職なので、営業トークにはてんで自信がありません。

そこにあるのはただ“思い”だけだったりします。


成功する秘訣は、成功するまでやり続けることだという話をよく聞きますが、なかなか結果がでないと心が折れそうになったりします。(汗)

そんな時に自分を支えてくれるのは、やっぱり、その思いだったりします。


音楽も同じですが、例えば病床にいる父親に、これまで自分を育て、支えてくれた感謝の気持ちを伝えたいという“思い”が、自分を動かし、そして自分の思いが、周りの人たちを動かして、今回CDを作ることになりました。

今回プロデュースを担当してくれている、先輩プロミュージシャンに、初めて自分の思いを語った時、次のような言葉を言われました。

「その思いを、今回かかわる人達が同じように持つことはできないし、持つ必要もない。でもその思いはこのプロジェクトの根っこだから、すごく大切なことだと思うよ」と。



自分がやっている仕事も同じように、それを使ってくれる人達の顔を思い浮かべて、その人達が、それが無かったときより、少しでもHappyになれるようなものを作り、使ってもらいたい(届けたい)という思いがあります。

それを必要としてる人達に、新しく仕組みを作って届けるという作業は、すごく大変で面倒なことですが、やる前から不可能と決めつけて諦めてしまうものでも無いのかなと思ったりもします。

それをやることに意味があるならば、頑張る価値のあることならば、そのチャレンジは素敵なことだと自分は思います。
(もちろん売れないものを永遠にやり続けることは、仕事をする上でも、世の中的にも許されませんが、与えられた時間の中で、精一杯頑張ることは、大切なことだと思っています)


もちろん仕事なので、キレイごとでは片付けられません。

どんなものでも仕事にすると、くだらないしがらみがついてまわるのも世の常だったりします。

それでも大きな木に育つには、やはり根っこが大切だと思います。


その“根が単純”だからなのか、一緒に音楽を作っている先輩ミュージシャンからも、すごくストレートな人間だよねとよく言われ、こんなことを書くとまた笑われそうですが、どんなときも“思い”を持っていたい今日この頃です。







分母を1億2千万から70億に変える作業

2012-10-22 | 旅人のひとりごと


LEVI`Sのジーンズの話をこのブログで書きましたが、ユニクロのジーンズが1000円以下で買える時代に、なぜ最低1本1万円を超えるLEVI`Sのジーンズを買うのか?と言われれば、“自分のこだわり”以外の何者でもありません。

それは右も左も分からなかった20代の頃、先輩ミュージシャンに言われた「良い音楽を作りたい、良いミュージシャンになりたいと思ったら徹底的にこだわることが大切だ。それは音楽でも、それ以外でも。好きなものは好き、良いものは良いとちゃんと言えることが大切」という言葉が、今も自分の中で根付いているからだと思います。


そういえばユニクロと言えば、今日WEBでユニクロの柳井さんが、「デモはあったが同社の中国を含めたアジア市場への挑戦こそ国益だ」という記事を目にしました。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121021-00000012-pseven-int



欧州在住時には、“日本の未来を語ること”は日常であり、多国籍の民族が暮らす国際都市で、自分達が“日本代表”だという意識を常に持っていました。


しかし日本に帰ってきて、例えばお酒が入った場で、“この国の未来”について語ったりすると、失笑されたり苦笑いをされたりすることも少なくありません。


でも世界での日本のブランド力は日に日に衰えており、身近な例としても、液晶テレビを作る家電メーカー等が苦境にたたされていたり、ガラパゴス化していた日本の1つの聖域だった携帯電話端末市場も崩壊し、通勤時の電車で見かけるのはiPhone(US)やGALAXY(韓国)といった、今や世界標準のスマートフォンだらけになってしまいました。


最近自分が思うところとして、“日本の未来”というモノは、国やどこかのエライ人が作るのではなく、1人1人の思いが連動して作られていくものではないかと感じます。

ユニクロの柳井さんも同じく、個人の思いがあってそこに向かっているだけなのだと。


この個々人の力をより大きな力に変えるのは、やはり日本のマスコミの責任が大きいと自分は思っています。

スポンサー様至上主義の古い体質のマスコミのままでは、残念ながらこの国はこのまま沈んでいってしまいます。

同じように我々一般の日本人も、世の中の流行に流されるだけでなく、自分の目と耳と価値観で、良いもの、必要なものをちゃんと感じ、選択していかないと、ただ指をくわえて、自分達が乗った船が沈んでいくのを見ているだけの存在となってしまいます。


“日本人の持っている感覚の分母を、1億2千万から70億に変えること。”


それが今の時代を生きる僕達の、今“最初にすべきこと”だと、自分は信じています。

中国が大変な事になっていますが、、、。

2012-09-18 | 旅人のひとりごと


連日メディアでは、中国の反日デモが取り上げられています。

報道を額面通り受け止めると、正直日本人としては、かなり気分が良くないです。

同じように多くの日本人に、反中感情が高まっているのではないかと思います。


一方で、現在の仕事でちょうど北京の導入案件を担当したり、上海や成都の案件を担当したりと、この夏~秋は中国の案件が続いています。

先週金曜日から北京の案件でトラブルが出ており、ひょっとして現地企業の担当者から、日系企業の依頼はほおっておけと、ぞんざいな扱いをされるのではないかと心配していましたが、誠意ある対応をしてくれ、事なきを得ました。

その件を昨日、顧客の北京オフィスの中国人担当者に報告すると、大変感謝され、明後日もその担当者と電話でやりとりをしながら、一緒に作業を進める予定です。


自分の東京のオフィスにも、上海のオフィスにも、一緒に仕事をする中国人の同僚がいます。

彼達をみていると、連日の報道はまったく別の国の出来事ではないのか?とそんな気持ちになります。


欧州で何年も生活をすると、たいていの日本人は愛国者になると言われますが、自分も例にたがわずそのうちの1人です。

ただ一方で10年以上かけて、世界の半分以上の国を旅する中で知ったことは、全ての物事には表と裏があり、我々の目に触れるのは、ほんの一部分にしか過ぎないということでした。


おそらく連日報道されている反日デモは、現実の出来事だと思います。

しかしそれは物事の一部分だけを切り取ったものにしか過ぎないと思います。


悪意や憎しみは、さらなる同じ感情を生み出します。

世の中はキレイごとだけでは片付けられませんが、とにかく黙って従えなどという聖人君子の考えには到底自分は至らないものの、ガンジーの非暴力非服従のように、自分達の意思は明確にしながら、冷静に対処することが必要だと思っています。


我々日本人にも色々な人間がいるように、中国の人達にもそれは当てはまります。

日本人の一部が犯罪を犯したからと言って、全ての日本人が犯罪者ではありません。

同じように一部の中国人の愚行は、全ての中国人に当てはめられるべきでは無いと自分は考えます。


残念なのは中国と言う国が、長い年月をかけて、国をあげて反日教育を行ってきたという事実があります。

仮想敵国という考え方があるように、一部の権力者にとって都合の悪いことは、あえて敵を作ることで、1つにまとまってきたという大国の歴史があります。


しかし時代は変わりつつあります。

インターネットが日々、世界をずっと小さく小さくしていて、今回の出来事にも、心を痛めている良識ある中国人も国内外に沢山います。


暴徒化している中国人に、我々日本人が今何を言っても火に油を注ぐだけでしょう。

一方で日本で暮らしたりして、親日感情を持っている中国人も多くいます。

そういった良識ある中国人の声を、ほんの少しでも本国で騒いでいる人々に伝えることができればと自分は思います。


ただ不満をぶつけたいだけ、暴れたいだけ、騒ぎに便乗して略奪行為を行いたいだけのバカもいると思います。

しかし全ての人がそうではないと自分は信じています。



悪意ある感情は、さらなるそれを生み出すように、善意もまた同じだと思います。

我々は決して服従せず、自分達の信念を貫き、そして降り注ぐ悪意に対して、善意で迎え撃つことはできないでしょうか。


悲しい事実ですが、これまでは中国政府によって踏み潰されてきた善意も多くあったと思います。

しかし暴徒を制御できない中国政府の映像をみてわかるように、中国も今、大きく転換期を迎えようとしています。

良識ある中国人と、インターネットと、我々日本人の善意の気持ちがうまく連鎖すれば、例え時間がかかっても、その負のスパイラルの鎖を、断ち切ることができないでしょうか。


インターネット規制のある中国なので、アラブの春のようにはいかないかもしれません。

ただ我々はそれを諦めずに、手立てを考える努力を続けるべきだと、自分は思っています。




※写真:中国で知り合った友人が送ってくれた九寨溝(四川省)の写真。中国にも美しいもの、素晴らしいものは沢山あります。

仕方が無いという言葉

2012-09-05 | 旅人のひとりごと


日本語ではすごく一般的な言葉なのに、英語等の外国語にはちょうどよい表現が見当たらないものが時々あります。

そのうちの1つが、この「仕方が無い」という言葉。

その時々でより近いニュアンスの言葉をチョイスしますが、本当の意味で同じ言葉は英語には無いと自分は思っています。


僕達日本人は、年齢を重ねるごとに、この言葉を多用するようになります。

仕事で、日々の生活で、人生の岐路で、困難な事に直面すると、僕達はこの言葉を使って、本当はこうだと思うけど、やむを得ないと“我慢”します。

けれど、そう思うのは、日本人だけなんだと、海外でその土地の人達と一緒に働き、幾つもの季節を過ごす中で気付かされました。



最近、自分にとってとても大きな存在である人が入院し、命に関わる病と闘っています。

ここ数年、そして今年に入ってからも、入退院を繰り返していましたが、つい先日も緊急入院をしたという知らせを受けました。

病気だから仕方が無い、人はいずれ死ぬのだから仕方が無いという考え方もあります。

しかしいざ大切な人が命に関わる病と直面した時、果たしてそんなにものわかりがよくなれるものでしょうか。

少しでも長く元気でいてくれるよう、少しでも苦しまずすむようにと、精一杯その運命に抗いたくなるものではないでしょうか。



そんなこともあって、最近自分が人生の最後を迎える時ということを、よく意識するようになりました。

本当はこうしたかったけれど、仕方が無いってそんな風にはきっと自分は思えない、だから自分が納得するように生きていこうと、そんなことを感じるようになりました。

仕方が無いというのは、結局は自分が傷つかないように、面倒なことに巻き込まれないように、その場を収める為の、うまい言い訳の言葉なんじゃないかと、極端な言い方をすればそんな風に感じます。

元来争いを好まず、自己犠牲心が強い日本人の文化だとも言えますが、自分自身を振り返ってみても、この言葉を使っている時は、やりもせずに初めから諦めて、その行動を起こさないことの言い訳に使っていなかったか?と、自分自身に問いかけています。

好きなものは好き、やりたいことはやりたいで良いのではないかと。

もちろん相手があるものは、自分の思いだけでは難しいものもあります。

だからといってチャレンジをしない事とは違うのだと、そんな風に自分は考えています。


歌いたいから歌う。

ミュージシャンの仲間と一緒にいると、そんなシンプルさが、たまらなく素晴らしいと感じます。



7月に沖縄の離島を訪れましたが、素晴らしく澄んだ海も、以前と比較すると年々汚れており、珊瑚も減っているそうです。

それも僕達は、面倒だからと「仕方が無い」という言葉で片付けてしまうのでしょうか。



自分もこの夏にまた誕生日を迎え、1つ年を取りました。

1つ間違えば、事なかれ主義と同意語になってしまう、「仕方が無い」という言葉を、誕生日を機に、まずはこの1年使わないことを決めました。

でもそのように考え方を少しかえてみると、目の前の世界が違ってみえ、むしろずっと気持ち的に若返ったように感じます。


そんな言葉が存在しない国が、世界の多数派だったりするのですから、もう少しシンプルな生き方をしてみようと、そんな風に思っています。

そして人生の最後を迎えた時、楽しかったよと、笑っていられる自分でいたいと思っています。



※今年の夏に訪れた沖縄の海。(竹富島のコンドイビーチ)







エジプトにイスラム原理主義政権が誕生した日

2012-06-26 | 旅人のひとりごと


イスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身のモルシ氏がエジプト大統領選で勝利し、とうとうエジプトにイスラム原理主義政権が誕生しました。

わずか8ヶ月前にエジプトを訪れた際には、このエジプトに平和が訪れてくれたらという祈りに近い気持ちを持っていましたが、このニュースを聞いて、昨日みたDVDの主題歌にも使われていた、RadioheadのLast Flowersが自分の頭の中で鳴り響きました。


※Last Flowers(日本語訳テロップ付)

http://www.youtube.com/watch?v=lxOFntxnDPE


エジプトでは現政権が軍部と手を握り、この新政権と対立するような動きを見せています。

場合によっては内戦が起こる可能性があり、一方で新政権と隣のイスラエルとの戦争を危惧する声もあがっています。

くそったれの現実から抜け出したいと思うエジプトの若者たちと、その思いを利用した過激派の構造。

西側諸国に住む我々の目にはそんな風に映っていますが、果たして真実は、、、。



この世の中は、対極(アンチテーゼ)な2つの存在によって、バランスがとれていると言われています。

それが事実であるならば、今回イスラム原理主義政権(一部では"元原理主義組織"という説もあり)がエジプトに誕生したという事実は、この世界のどこかにそれと対極な存在があるということなのでしょう。



そしてこのくそったれの現実の対極にある美しい存在も、きっとこの世界のどこかにある(ひょっとすると我々のすぐ身近にもある)と自分は信じています。



そこに銃とギターの対なる存在(もの)があるならば、自分は迷わずギターを手にとる。

エジプトの若者達にこの曲を送りたいと思います。


※Radiohead - Creep

http://www.youtube.com/watch?v=XFkzRNyygfk




※写真:8ヶ月前に訪れたエジプトのハルガダ。
砂漠や遺跡だけなく、エジプトには美しい海や多くの豊潤な果実もあります。
自分にとって、北アフリカ諸国の中で、最も好きな国であるエジプト。
この国に、血を流すことなく平和が訪れることを、切に願います。




あれから1年

2012-03-12 | 旅人のひとりごと


3.11の東日本大震災から1年が経ちました。

震災からの復興も、福島原発事故の問題解決も、未だ道半ばの状態。

同日、各地では追悼式典が行われた一方、国内および海外で、脱原発の大規模デモが行われたようです。


3.11のその日に自分はドイツにいて何もできず、ただテレビの画面越しでしか、知る由も無かった東日本大震災。

少しでも今の被災地がどうなっているか、報道ではない、生の現実を知りたいと、実は日帰りボランティア等を、2週間程前から調べてみたのですが、さすがに3.11からちょうど1年ということもあってか、この週末のボランティアは既に定員が一杯になっていました。

他にも色々調べてみると、最近では旅行的なものがセットになった、1泊2日もしくは2泊3日(車中1泊で金曜日から出て、土曜日を温泉宿泊で日曜日戻り)の1日ボランティア+1泊旅行ツアーみたいなものも出ていて、1年経った今でも幅広い人達がボランティア活動に参加していることを、今回知りました。


旅行とセットというのはいかがなものか、、、という意見もあるでしょうが、旅行も含めて、復興の為に1人でも多くの人が東北を訪れることが、被災地の経済的な自立と本当の意味での復興には、大きな力になると思います。


3.11を忘れないことはとても大切なこと。


一方で、人々が気軽に東北に訪れて、美味しいものを食べたり、温泉につかったりすることで、現地に産業や雇用が復活することにつながり、これは本当に、本当に意味のあることだとも思います。


今週末には実現しませんでしたが、ぜひ近いうちに東北を訪れて、この目、この耳、そしてこの五感で、今の東北を直接感じてきたいと考えています。

日本での生活が再スタートしました

2012-01-01 | 旅人のひとりごと


あけましておめでとうございます。

新年早々ですが、この1月より仕事の関係で日本へ本帰国することになりました。
1月のお正月明けから東京都内での生活がスタートします。

約6年間のドイツ生活を振り返ってみると、長いようであっという間だった気もします。

現在の日本経済をとりまく情勢の中では、日本人はこの先さらに世界へとその活躍の場を広げざるをえない状況にあり、また自分もいつか海外で生活する日が来るかもしれませんが、まずは日本に戻って、日本で自分ができることを1つずつやっていきたいと思っています。


2012年のこのブログですが、まだ欧州生活での旅の写真等が残っており、少しずつアップロードしていこうと思っていますが、実は海外で仕事しながらでは書くことができなかった、海外生活の中で自分が感じていたこと、これから世界へと日本人がより出ていく状況の中で、新たな仕組みづくりが必要と思われることが沢山ありました。



世界に出て戦うには"自分達の強み"という武器が必須ですが、日本の強みは間違いなく"製品やサービスのクオリティ"であり、そして弱みは、うまくいって当たり前、失敗すればマイナスという減点方式からくる、民間でも役人気質が増えているのではないかとさえ感じる"事なかれ主義"と、石橋を叩きすぎる"圧倒的なスピード感のなさ"、そして視野の狭さからくる"島国気質"です。


また日本では大企業の会社でも、海外では名前が知られておらず人・モノ・金すべてがたりないベンチャー企業と同じ状況下で、"最前線で篭城して孤軍奮闘"している日本人が沢山います。

高いクオリティを維持する為に、個が身を削らなくてはいけない局面は多々でてきますが、個のふんばりだけでそれを維持し続けることは容易ではなく、やはりそれを継続し続ける為の「新しい仕組みづくり」が必須なのだと強く感じることがよくありました。


そして今や世界で日本が戦う上で、大きなライバルとなっているのが韓国です。

関税の仕組みの問題もあって、欧州では韓国製品と日本製品の間では2割以上のコスト差があり、スピード感・決定感でも日本は大きく遅れをとっています。


2ヶ月前にエジプトでタクシーの運転手と話をしていた際も、以前は安くてすぐ壊れる中国製品と、高いけれども殆ど壊れない日本製品との間で我々は日本製を選んできたが、もちろん日本製品はすごく良いけれども、最近はそこそこの品質でそこそこの値段の韓国製品が入ってきて、金持ちは日本製を選ぶが、多くの人々は皆韓国製品で充分だと感じているという言葉を投げかけられました。(実際にエジプトではヒュンダイ製のタクシーが増えています)

それを象徴するように、国内メーカー同士で削りあって疲弊し、政府からの支援も殆ど無い日本製品が、サムソンやヒュンダイ等国内での競争が少なく官民一体で攻勢をかける韓国製品にことごとく市場競争で負け続け、ソニーや松下電器といった一流の日系企業さえ事業撤退の危機に直面している現実があります。


他にも現地企業担当者の話で、韓国・中国・インドといった国々の担当者が、海外の地方都市でも現地に根を張って商売をし、やってきた担当者と話せば即ビジネスが成立するのに対して、日本の担当者は出張ベースでやってきて名刺交換するだけで、大きなビジネスの話をすると、稟議や役員決済が必要な為、すぐ話が持ち帰りになるとこぼされたこともあります。


日本で国際化を語る際には、「言葉の問題」ばかりがクローズアップされますが、本質的な問題はそこではなく、「いかに異なる文化・習慣に溶け込んで、どんな場面でも日本の強みを発揮し続け、結果につなげられるか」だと思います。

これから日本が世界で戦い、より大きな成果を収める為には、「新しい仕組み」が必要になっています。
そしてそれは現地ではなく、日本でその仕組みを再構築して現地に持ち込むことが必要です。


しかし海外で日本側と一緒に仕事していると、現地と日本側では大きくその温度感の差を感じることが多々あり、日本側は「日本の感覚」でモノを言われるものの、現地の状況・文化を無視しては物事が進まないという現実があります。

実体験から言えば、海外に出て日本人が真っ先に捨てなくてはいけない言葉、でもなかなか捨てられない言葉が「日本だったら~」です。

日本では当たり前に思える些細なことが、一歩この島国を飛び出すと、それがものすごくスペシャルな事だと気付かされます。



そういう意味で海外に出てその現状を知る、自分達のような"現場の日本人"が、その新しい仕組みづくりの為に、現地で感じたことを声を大にして、"現場の生の声"を伝える必要があるのだと感じています。



2012年は現地で感じていた"現場の生の声"をベースに、フィクション形式(生々し過ぎると多方面にご迷惑をかけますので。苦笑)で、世界と日本をつなぐインターネットを生かし、"アラブの春"にも使われたグローバル・デファクト・スタンダードになりつつある"Facebook"と連動する形で、1つの読み物をこのブログで連載したいと考えています。


今年もよろしくお願い致します。



※写真:東海道新幹線の車窓からみた富士山

「アラブの春」のその後(From Egypt)

2011-10-22 | 旅人のひとりごと



昨日エジプトのハルガダで、流しのタクシーに乗った時のこと。

USBスティックを使ってインターネットからダウンロードしたアラブ音楽を車内でガンガン流す、イマドキの若者風なエジプト人運転手に、これはエジプトの音楽?ときくと、いや他国のアラブ音楽だよとのこと。

文字も言葉も音楽も、そして(大枠では)宗教もアラブでは皆同じだからねと、彼は会話を続けました。


市内近郊(10分程度)へのタクシー運賃が、約15~20エジプトポンド。(約200~250円)
郊外(15~20分程度)へは、約25~30エジプトポンド。(約300円~400円)

先日使ったカイロ空港からギザのホテルまで(早朝の渋滞が無い場合で30~40分、昼間の渋滞時で1時間~2時間)が、約100エジプトポンド。(約1300円)


相変わらず定価の無いこの国では都度言い値での交渉ですが、相場の金額は4年前にエジプトを訪れた際と殆ど変わっていません。



一方でアラブの春の民主運動のきっかけとなったのは、世界的に小麦の値段が上がり、国民がパンを買えない程生活に困窮したものの、長期独裁政権である政府が無策だったからとか。
(いわばその発端は米騒動や一揆のようなイメージでしょうか)


この民主革命を成功に導いたのは、日本の報道では、フェイスブックのようなSNSやツイッターの存在だと言われています。

しかし実際のところは、そのようなITツールやインターネット、既存のTV放送等を駆使して、
「パンが変えない程国民が困っているのに、何もしないお前のところの政府はオカシイぞ」、
「同じアラブのチュニジアでは、民衆のデモで長期独裁政権が倒れたぞ」、
「お前の国でも今度○×広場で抗議デモがあるらしいぞ。Facebookやツイッターでその情報が見られるぞ」、、、等といった情報を流した、
アルジャジーラのような新興メディアの存在が大きかったようです。
(世界に向けた英語放送と、アラブ人向けのアラブ語放送の2言語放送をしているアルジャジーラは、アラブの春の民主運動が始まった直後、
旧エジプト独裁政権から、同国内での報道許可を一時期取り消されたことからも、いかにその影響力が大きかったがわかります)



チュニジアから始まったこの「アラブの春」の民主革命ですが、エジプトに飛び火し、昨夜はリビアでも革命樹立の大きな節目を迎えました。
そしてこの後はアラビア半島でも、さらにその広がりが加速していくと思われます。




日本の報道ではアラブの春の後、リーダー不在のエジプトで、過激なイスラム原理主義政権が政権をとるのではないか?と危惧する声があります。


しかし今回の民主革命は、「もっと豊かな生活をしたい民衆」へ、「ITインフラやツールを駆使」し、「"自分達の生活と未来は自ら変えることができる"と具体的な成功事例と手法を、新興情報メディアがうまく伝達した」ことで実現したものです。


一時期過激な思想をもった政権が樹立したとしても、死後の世界での幸福を促し、現世に痛みや死を強要する過激な宗教政権を、「もっと豊かな生活をしたい民衆」は決して受け入れないでしょう。


世界中の若者がiPhoneを持ち、子供達はハローキティのグッズやニンテンドーDS、プレイステーションポータブルを親にねだり、外資系のホテルのプールサイドでアラブ人女性が、黒い全身水着を着て人前で泳ぐ時代。

アラブの春の半年後にエジプトに来てみて、はっきりと今それを感じています。


また中立的な民衆寄りの情報を提供するアルジャジーラのような存在がある限り、民衆は自分達の未来を自らの力で軌道修正していくことでしょう。


この構図は言い換えると、「情報メディア」の影響力が、独裁政権や厳格な宗教の教えよりも上回ることを意味します。



まだまだ産みの苦しみはあるでしょうが、この先、シリアやバーレーン、そしてアラブの最後の砦であるサウジアラビアでも、民主政権が樹立したならば、その先に見えるのは、EUのような「民衆によるアラブの統合」というキーワードです。


言語や文化が異なり、歴史的には対立してきた欧州各国も、国際社会の中での競争力を高める為、EUの加盟国拡大と連携強化、そしてEUROへの通貨移行と、この10年で欧州統合を進めてきました。

通貨については、ギリシャへの対策が一例に挙げられるようなEURO危機を迎えている今、まだまだ大きな課題はありますが、元々言語や文化を同じくし、イスラエルを除いて歴史的な対立が少ないアラブの方が、民衆の情報共有や教育水準が高まれば、関係強化への敷居は低いと思われます。


これまでの大きな課題としては、石油等の資源格差がありますが、半世紀という単位でみれば陰りが見えており、もしバイオエタノール等へ次世代エネルギーへの流れが傾けば、国土の大半が砂漠であるアラブ各国は、間違いなく衰退の道をたどっていくでしょう。


先述のiPhoneやハローキティグッズの例のように、情報技術や航空技術の発達と比例して、各国の独自性が減少して均一化が進み、めまぐるしいスピードで、日々世界が近く小さくなっています。


そのような国際情勢の中で、石油エネルギーが枯渇する前に、アラブ各国が国際競争力強化を目的に、欧州のように連携を強めることは容易に想像できます。



一方でアラブの春の民主運動は、欧米にも飛び火し、未来は絶望するものではなく、希望に満ちたものであるはずと、経済の停滞による所得水準があがらないイギリスやアメリカの若者にも、大きな力を与えています。
(暴動行為は推奨されるべきものではありませんが)



日本のバブル経済が崩壊してから約20年。希望に満ちた未来の光は未だ見えません。

日本人は世界でも屈指の忍耐強い国民性と言われていますが、いい加減に我慢するだけでなく、未来へ向けて行動すべき時なのではないでしょうか。


日本再浮上のキーワードには、「次世代エネルギー」、「国際競争力の向上」といったものがあげられますが、流行に流されやすく島国気質が根強い日本人の意識改革の為に、視聴率&部数主義といった古い体質の、日本のメディアの改革も必要だと思われます。



もはや「アラブの春」は、遠いアラブの国々だけの話ではありません。

「アラブの春」はこの先、いったい世界を、そして日本の未来を、どのように変えていくのでしょうか、、、。



※写真:アラブの春運動の発端になったエジプトパンのアエーシと、パンにつけるタヒーナ。

時代が変わる時(From Egypt /Watched ALJAZEERA TV Program)

2011-10-21 | 旅人のひとりごと


昨晩エジプトのホテルへ戻り、英語放送のアルジャジーラを見ていたのですが、
エジプトと国境を隣するリビアで、NATO軍の攻撃によってカダフィ大佐が死亡したニュースが、長時間にわたりLive放送されていました。

今週エジプトに滞在中、この数年その中立性で話題の、中東カタールの国営放送局であるアルジャジーラとはどんなものだろう?と興味があり、連日ホテルで見ていたのですが、この夜の放送はまさに、アラブ諸国にとって歴史上の1つの時代が変わる瞬間を報じたものだと思います。


象徴的だったのは、現地取材によるその情報量と、物事の両面性に向き合った報道の仕方。


NATO軍から入手したと思われる空爆時の映像や、Live中継されるトリポリの市民のインタビュー、ワシントン(US)やロンドン(UK)からの中継映像といった勝者である欧米側の声だけでなく、カダフィの残した功績と、今後のリビアについても多く時間を割いていました。


トリポリ市民は、「これですべてが終わった。新しいリビアが今日から始まる」と皆興奮していましたが、アルジャジーラの放送では
「NATOのミッションはカダフィを殺して終わりではない。NATOはこれからリビアをどうするつもりか?」という視点に軸足を置いているようでした。


NATO(今回は主に英仏が積極介入)の軍事介入は、隣国の「アラブの春」の民主革命に触発されたリビア国民の民主運動に対し、カダフィ大佐率いる政権側の空爆等による軍事的な制圧は、人道的に許すことができないというのが、NATO側の言い分です。


しかしエジプトを挟んで、反対側でまったく同じことが起こっている「資源の乏しい国シリア」には、NATOは見てみぬふり。

英仏が以前より利権のあるリビアの豊富な資源を、かねてより反欧米の姿勢を持つカダフィ政権を倒して、より有利に得ようとしているのは誰の目にも明白です。

これはブッシュJr.の前政権時代に、言いがかりをつけてアメリカが、石油資源の豊富なイラクへ侵攻したのと大差ありません。



歴史は常に時の勝者側、強者側の視点で語られるもの。

しかし全ての物事には二面性があり、語られる歴史と史実が、必ずしも真実であるとは限りません。

それは欧米のキリスト教諸国において聖戦の英雄だった十字軍が、エジプト等のアラブ諸国においては「悪魔のような侵略者」として今なお語られていることからもわかります。


歴史書物の編集と同様、TVや雑誌等各メディアの編集側の意図によって、いかようにも「見せ方」や「見え方」を変えることができるという事実があります。

独裁政権によるロシアや中国、北朝鮮等のメディア規制は極端な例ですが、実は欧米や日本にとってもそれは例外ではありません。



インターネット等の新しい媒体を通して、情報が乱立する現代。

国連軍のアフガン・イラク侵攻時においても、民衆へ自由を与える使者を自称する欧米側と、
所謂悪者であるテロリストのレッテルを貼られた側の両者の声、物事の両面にスポットをあてることでその中立性を前面に打ち出し、
各地にレポータを飛ばし独自取材で徹底的に生の声を集め、
かつ非英語圏である中東の小国カタールからアラビア語以上に、英語放送に重きを置き、
自国民向け以上に全世界に向けた報道を意識し、地上派や衛星放送だけなく、Youtubeやスマートフォン向けにもLIVE放送する同局は、
日々世界が急速に小さく(近く)なっていく現代において、1つの新しいメディアの形だと思います。



アフガン・イラク侵攻時には、欧米側からも、同局の当初のオーナーであるカタール首長一族や、タイアップしていたCNN等に対してもかなりの圧力がかかり(政治的な圧力を受けないことを目的に、スポンサー収入をあまり積極的に求めない同局は、海外メディアからの映像使用料が収入の大部分を占めるとか。日本ではNHKがかなり同局へ映像使用料を支払っているようです)、
欧米側メディアによる放送でも一時期、「テロリスト寄りのメディア」といったレッテルが貼られがちでしたが、ここにきて世界の人々もこの小さな放送局の存在価値を認めつつあります。



我々日本人は、過去の歴史においては、外敵から身を守る等の島国のメリットを享受してきましたが、世界が急速に小さくなる現代において、
その島国的な視点がデメリットに働いている部分も少なくないように思えます。



情報社会である現代において、入手する情報の内容と質は、これからの時代を生き抜いていく上でますます重要になっていきます。

欧米や日本だけなく、発展途上国であるエジプトでも、日常的にiPhoneを使う人々の姿が目につく時代。

11年前の世界一周の旅で訪れた際、インターネットカフェでISDN回線を使ってピー・ガーと遅いネットワークに接続していた頃のエジプトが、
現在のようになるとはまったく想像できませんでした。


この先の10年という単位を考えると、まさに「世界レベルでのメディア再編」という言葉が頭をよぎります。


日本も情報・メディアの分野において、新しい選択肢と価値観を真剣に考えなくてはいけない時代に突入したのかもしれません。


※写真:エジプトのホテルのテレビでみた、NATO軍の攻撃によりカダフィが死亡したニュースを伝えるアルジャジーラの放送

ニッポンの未来のために

2011-08-31 | 旅人のひとりごと


民主党三人目の総理大臣となる、野田首相が誕生しました。

野田さんは調整型リーダーのイメージがありますが、党代表選のスピーチを聞く限りでは、なかなかやり手の方の
様子。

震災後の大切な時期にも関わらず内輪もめをしている民主党に対する世論の目は非常に厳しく、ゼロどころか非常に大きなマイナスからのスタートで、原発問題、震災からの復興、超円高による景気低迷、財政再建等課題は山積みですが、民主党最後の首相にならないよう、三度目の正直???で、庶民派首相として国民の視点を持って、ぜひとも国民の為の政治をやり抜いて欲しいと思います。


今国民が求めているものは、自分達の将来に希望や期待を持ちたいということ。

今日より明日、明日より明後日と、ほんの少しづつでも良くなっていくという期待感が、今日1日を頑張れる大きな力になります。


「自民も駄目、民主も駄目、どうせ日本の政治は駄目だから、期待するだけ無駄」といった諦め感を払拭させることができるか、古い自民党の永田町政治の後継者として期待された、民主党の「存在理由」をかけた正念場だと思います。


小さくてもいい。ニッポンの未来に、しっかりとした希望の光を灯して欲しいと切に願います。


「泥臭い政治」に期待しています。