拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

東西ドイツ統一20年

2010-12-30 | 旅人のひとりごと


先日、日本のテレビ番組をかけ流ししていた際、美輪さんが出演していて、「最近暗い話題が多いけれども、世の中悪いことがあれば、それと同じだけきっと良いことがあるはず」といった正負の法則の話をしていました。


その番組を見ながら、今月東ドイツを訪れた際に似た類のものを感じた事を、ふと思い出しました。


今年は東西ドイツが統一されてちょうど20年。


統一20周年記念の際は、ベルリンのブランデンブルク門前で行われた記念イベント映像が、ドイツはもちろんのこと、世界中で放送されていました。


しかし実際の国民感情はというと、東西ドイツ統一前の方がよかったという人達が西側だけでなく、東側でもかなりの割合いるということが、同イベントを前後してドイツで話題になっていました。


経済格差からくる各種社会保障負担割合等、西側にとってはデメリットが多いことは容易に推測できるものの、なぜ東側が?とその時は思ったのですが、ドレスデンを訪れた時に、感覚的に何となくそれが理解できるような気がしました。


ドレスデンで感じたこと、それは西側の町が失ってしまった「古きよきドイツ」といった類のもの。

町中を流れる音楽、町を行き交う人々の表情、扱われる食材と調理方法どれをとっても、ああこれがドイツなんだと、ドイツに住んで5年目になるのに、普段の西側での生活ではあまり感じない「ドイツらしさ」を肌で実感しました。



もちろん普段の生活でも「ドイツらしい」という言葉は、自分の周りの日本人の間でもよく使われるものの、それはどちらかというと「ネガティブ」な意味合いで使われる事が多いのですが、ここでいう「ドイツらしさ」はもっとポジティブな意味合いでの、「ドイツの良さ」といったものを感じた気がしました。


日本とドイツを比較してもそうですが、便利になればなるほど、人々の生活はより無機質になり、人と人との関係もより希薄になっていく気がします。


それはかつて政治体制・思想が違った東西ドイツでも同じ。もっと言ってしまえば、日本国内の東京と地方といった身近な枠組みでも、それはあります。


東西統一で東ドイツは、自由でモノが豊富になったかもしれないけれど、若者達は仕事やより豊かな生活を求めて西側に出ていってしまい、西側からは「世界中どこにでもある」流行の品々がどっと流れ込んできて、東側の人々がそれまで守ってきた文化や生活の中で息づいている「古き良きドイツらしさ」が縮小していっているのは、その町に住んでいない我々外国人でさえも一目瞭然です。


そして自分自身を振り返ってみても、日本にいた頃は海外での生活に憧れている自分がいましたが、実際に海外で生活をしていると、事あるごとに「日本はいいなあ」とこぼす自分がいます。



善と悪、損と得、幸と不幸、、、表裏を表す言葉は多種多様にありますが、確かに大きな視点でとらえると、良いこと悪いことは対の存在であり、何かを失えば何か得るといったものなのかもしれません。


そういった意味では、20年前の東西ドイツ統一も、良かったか悪かったかではなく、「人類の歴史の中での1つの出来事」にすぎないのでしょうか。



ひょっとすると物事の良し悪しなんてものは、本当は全て自分次第なのかもしれませんね。



※写真:ライトアップされたBrandenburger Tor(ブランデンブルク門/2010年12月)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン/ドイツ)

2010-12-29 | 音楽&MOVIE


ベルリンフィルハーモニーオーケストラの公式サイトを見ていたところ、好きな演目があったので、インターネットでチケットを購入し、クリスマスシーズンのベルリンを訪れました。


この日の演目は、Neeme Järvi指揮、Arcadi Volodosピアノのチャイコフスキー・ピアノ協奏曲第一番変ロ短調作品23。(Klaviekonzert Nr.1 B-Moll op.23)


学生時代から好きだった演目ということもありますが、最高級の音響効果を持つコンサートホールで、情熱的かつ冷静なピアノと力強いオーケストラが奏でる、チャイコフスキーの華やかな世界は、どれをとっても完璧と思える程素晴らしく、音楽を聴きながら思わず涙がこぼれそうになりました。


10代の頃、カラヤンとベルリンフィルハーモニーオーケストラの音楽は、四角いオーディオボックスから流れてくる、自分にとって遠い憧れの存在でしたが、その世界最高峰のオーケストラを目の前で実際に聴いてみた感想は、やはり「何1つ不足していない音楽」でした。

そしてロシア出身のピアニストであるアルカーディ・ヴォロドスは、まさに正統派という言葉がぴったりの演奏で、力強く男性的なオーケストラの中で、彼のピアノが奏でる繊細な美しさが際立っていました。


この日の演目は他にリムスキー・コルサコフのOpera MladaとSergej Tanejewの交響曲第四番の2曲があり、自分にとってオラが町のオーケストラであるフランクフルトオケ(hr交響楽団)の主席指揮者(パーヴォ・ヤルヴィ/2010年からパリ管弦楽団の音楽監督も兼任)の父親は、評判どおり「力強いブラスが好きなのだな」ということがよくわかるものでした。


1部と2部間の休憩時間の際に、ステージ近くにたってフィルハーモニーのホールを見渡すと、そこに広がっていたのは10代の頃の自分が憧れていた風景。

しかし生まれて1度も飛行機にすら乗ったことが無い10代の当時の自分には、現実から遠すぎる(と思い込んでいた)世界でもありました。


16歳の頃、最初に行った高校を辞めて、半年ほどJPOPミュージシャンのコンサート関連のアルバイトをしていたことがあり、当時彼らの音楽に勇気づけられ、自分も彼達のように何かを伝える音楽を生み出したいと思い、その後2度目に入った高校、音大とクラシック音楽の世界に戻ったものの、人生の最初の岐路で自分は、自ら詩や曲を書く歌い手になることを選択したのだけれど、10代の自分がもしこの場所で、この音楽に触れていたら、目指した世界が違っていたかもしれないな、とそんなことを感じていました。


でも人生は一度きり。

そこにはTVゲームのようにリセットボタンは無く、ただ前へ、前へと進むしかありません。



全ての音楽が終わった後は、誰にも負けないくらいの力いっぱいの声で「ブラボーーー!!!」と叫んでみました。


最高の雰囲気の中、この日はピアノとオケの2度のアンコール演奏があり、オーケストラが退場した後も拍手はやまず、指揮者のネーメ・ヤルヴィが茶目っ気たっぷりに誰もいなくなったステージに再度現れ、観客に応えていました。


演奏前、入場時間を過ぎた客入れ後もゲネプロ(リハーサル)が続いており、この日は20時の開演時間から少し遅れてコンサートが始まり、フィルハーモニーを出たのは22時30分頃でした。



Sバーンの駅に着くと電車が止まっていて、雪の舞うこの日のベルリン市内を、ホテルまで1駅半ほど歩いて帰りました。


フィルハーモニーからホテルまでのびる通り名の標識をふと見ると、シュトレーゼマン・シュトラッセ(シュトレーゼマン通り)の字が。

その名から思い出したのは「のだめカンタービレ」のTVドラマの、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番のステージ場面。

シュトレーゼマンが千秋に言った、「大事なのは君がこの曲(音楽)と、どれだけ真剣に向き合ったかということ」という言葉をかみ締めながら、雪の降り積もったシュトレーゼマン通りを歩いていました。


※写真:コンサート前のフィルハーモニー。

帰国早々、、、

2010-12-28 | その他

年末の一時帰国早々、風邪でダウンしていました。

今年は日本の冬も寒いですが、1番大きいのは室内気温の違いです。

ドイツは寒い地域だけあって、壁が厚く二重窓が多く、暖房器具がしっかりとしていますが、木造住宅のエアコンは家の中だとすごく寒くて、室内でもジャケットが脱げないほど。<最近のマンションや寒冷地だとちょっと違うかもしれませんが、ウチの実家は古い木造住宅なので(汗)

せっかくの日本滞在ですが、まだどこにも出かけられておらず、食べた食事もおかゆや雑炊ぐらいです。(汗)

正月早々にドイツ戻り予定なので、何とか大晦日までには治して、おせち&雑煮にありつきたいと思っています。



さて気づけばこのブログも4年目に突入。


移動生活が多い月などは亀更新ですが、来年も続けていきたいと思っています。






ドレスデンのクリスマスマーケット(ドレスデン/ドイツ)

2010-12-25 | 旅フォト(ドイツ)


ドレスデンのアルトマルクト広場周辺のヴァイナハツ・マルクト(クリスマスマーケット)です。

ドイツ最古のクリスマスマーケットと言われるドレスデンのクリスマスマーケットですが、最も有名なニュルンベルグ、最大のシュツットガルトと併せて、ドイツ3大クリスマスマーケットと言われています。

ニュルンベルグやシュツットガルトのものは、これまで何度か訪れていますが、ドレスデンは今回が初めての訪問。

町中にはクラシック音楽が溢れ、素朴な東ドイツの人々と美味しい焼きソーセージと併せて、個人的には3大クリスマスマーケットの中でここが1番好きです。

東ドイツであるドレスデン近郊出身の同僚とニュルンベルグを仕事で訪れた際、オラが町のソーセージの方がずっとうまいと言っていたのですが、今回それが納得のお味。

ドイツのクリスマスケーキ(ドライフルーツ入りのパン)であるシュトレンや、バームクーヘンもここドレスデン近郊が本場です。


交通の便はあまりよくないですが、もし本場ドイツのクリスマスマーケットを1箇所だけ訪れるのであれば、ドレスデンはイチオシです。





White Christmas

2010-12-24 | その他

フランクフルトは予想通りのホワイトクリスマスです。

午前中はお店が開いているというので(午後からクリスマス期間にかけてお店がしまるので)、雪で真っ白になった町に出てみましたが、この寒い中をストリートパフォーマー達が寒さに震えながら頑張っていました。

Hauptwache(ハウプトヴァッヘ)の駅前では、ペルー人のグループ演奏家が民族楽器の武笛を吹いていましたが、寒くて終始小刻みなビブラートになっていたのにはちょっと同情。

自分も極寒の路上で歌っていた時、ギターを弾く手がかじかんだり、厚着をすると服が楽器にひっかかるので、上着を脱いで雪の中でもシャツを腕まくりして演奏したりしていたので、気持ちはよくわかります。(笑)



さて来週から年始にかけて、1週間ほど冬休みで日本に一時帰国予定です。

この雪でちゃんと飛行機が飛ぶかがちょっと心配なのですが、無事に帰国してチャンスがあれば旅先更新をしたいと思っています。



欧州の寒波

2010-12-23 | その他


今年の欧州の寒波は強力で、毎週のように雪が降り積もっています。

それに伴い、飛行機や電車の欠航、遅延が頻発しています。


先週末にベルリン&ドレスデンに行った際も、電車は軒並み遅れ、気温氷点下で雪の舞うプラットフォームにて、あてにならない僅かなアナウンスを頼りにひたすら電車を待ち、帰りのドレスデンからフランクフルト行きの電車も突然キャンセルとなり、本来は4時間程度の移動が倍近くかかって、何とか家に辿り着きました。


本当はこんな時期、家でゆっくりしているのが良いのかもしれませんが、ベルリンフィルの演奏もドレスデンのクリスマスマーケットも、「ああドイツにいてよかった」と感じる程(←普段はあまり感じていない???)、ものすごく素晴らしかったので、大変な目にあいつつも、やっぱり行ってよかったと思っている自分がいます。


間もなくクリスマス~年末年始ですが、特に今年の冬の移動は、「かなり時間に余裕を持って」がキーワードのようです。

今週末

2010-12-17 | その他
ドイツは相変わらず氷点下の日が続き、本日もフランクフルトは雪でした。


さて今週末ですが好きな演目があったので、公式サイトでチケットを買って、ベルリンフィルハーモニー交響楽団の演奏を聴きに、ベルリンまで行ってきます。

週末のドイツは大雪の予想なので、ちゃんと電車が動くかがちょっと心配。


時間があれば帰りがけに、ドレスデンのクリスマスマーケットに寄り道しようかと考えています。

明日から

2010-12-12 | その他

今年も残りあと半月程となりました。

年末最終週~お正月は日本に一時帰国予定なので、今週末あたりにクリスマスマーケットへ行ってみようかと思っています。


さて明日から仕事で欧州内出張です。

最近は出張時もプライベートPC持込み&無料インターネット接続ができるホテルを利用していましたが、今週はちょっと難しそうなので、次回更新は週中位を予定しています。




ドイツの育児休暇事情

2010-12-10 | ドイツ生活情報


皆さんご存知の通り、ドイツではバケーション(休暇)をしっかりとる習慣があり、クリスマスが近くなった12月などは相手先を含めて、周りのドイツ人がすっかり休暇モードで、ほとんど仕事が進まなかったりすることも珍しくありません。


そんなお国柄のドイツで、先日育児休暇制度のことが話題になっていました。


2007年から両親手当という制度が導入されたらしいのですが、片親だけであれば12ヶ月、両親でとれば2人併せて合計14ヶ月の間、法律上は希望者に有給で育児休暇をとらせなくてはいけない制度なのだとか。


申告制なので、取得しない人たちも沢山いますが、州ごとで平均取得が異なっているようで、今年上半期の取得資格のある男性の育児休暇取得率は、最高がミュンヘンの3人に1人程度、全ドイツ平均で4人に1人程度の男性が育児休暇を取得したのだとか。
(最も少ないケースでは、フランス国境近くのザールブリュッケン等のザールラント州で14%だったとか)


しかしドイツでも取得するのは、実際に出産をする女性の割合がまだまだ多いようで、同制度導入以来、多いのが女性が12ヶ月、男性が2ヶ月で計14ヶ月とるケースのようです。
(女性は最大の12ヶ月間取得し、男性もせっかく育児休暇がとれるようになったのだから、2ヶ月休んでおこうという事なんでしょうか)


日系企業で働く自分達日本人は、ドイツといえど、フツーの有給休暇も消化しきれず残ってしまうことが一般的です。
(法律上企業側は完全消化させなくてはいけませんが、人手不足の職場だと仕事に穴をあけられないと多くの日本人は考えるので。もちろん日本本国に比べるとずっと平均的な取得日数は多いと思いますが、その分祝日も少ないので、年間を通してみるとそれ程変わらないかもしれません)


そんな日本人からすると、法律は変わっても、ドイツ人ですら全員が取得していないのに、日本人男性が育児休暇なんてとんでもない!という雰囲気がまだまだあるのですが、一昨年の平均取得率が2割程だったことから比べると、ドイツ人男性の育児休暇取得率は年々増えており、そのうちドイツでは女性と同じように男性も、ほとんど全員が育児休暇をとる日がくるのかもしれませんね。