今朝の野鳥撮影は、いうなればカメラマン冥利に尽きるものであった。何故か、今までに経験したわけではないが、戦場をルポするカメラマンの自分の姿と重なる状況が、頭をよぎる凄まじいものであったからである。いうなれば死闘の現場撮影であった。正月早々に、過激な内容となってしまい、読者を驚かすことが本意ではない。野鳥撮影にはまり込む要素の一つなのかもしれない。誰しもそのような現場で撮影することは、ほとんどのカメラマンが経験するものではないであろう。
お屠蘇気分が抜けないカメラマン同士の会話では、決まりきった挨拶をかわし、連日晴天に恵まれ、暖冬をありがたがる話であった。三々五々ちりぢりになったため、現場で目撃したのは自分を入れて3名であった。昨日も、今日と同様、早朝にハヤブサが川の上流に向かった姿は目撃したが、一向に戻ってこなかった。ところがである、ハヤブサ一羽が対岸の高木に数羽のカラスに追われて逃げ込んだ。ハヤブサの周りにはカラスが呼んだのか見る間に10羽以上になっていて、盛んにちょっかいをかけ、ハヤブサの追い出しにかかる。
じっとしていたハヤブサも我慢しきれずに飛び立ち、また高木に戻ろうという行動に出た。それを2~3回繰り返した後、川面で羽を休めていた一羽のユリカモメがハヤブサの餌食にされたようであった。ユリカモメをターゲットにしたハヤブサは、カラスの追撃を振り払い、何度もユリカモメに攻撃を加え始めた。回数にして4~5回であったと思が、はっきりとカウントしていない。ハヤブサは水面に浮かぶユリカモメに対し、足の爪を立てて攻撃する。
攻撃を受けたユリカモメは必死に羽をばたつかせ、そのたびに水しぶきが上がる。たぶん水中にもぐることができるカモメであるが、突然、数回の攻撃を受けるとユリカモメは、なす術(すべ)もなく、パニックになっていたようであった。ハヤブサとしても体の大きさや重さが影響してか、水面に浮かぶ鳥を捕る技はないようで、驚いて水面から飛び立たせ、空中に飛び出せば、加速度がつくので、容易にとらえ、鋭い爪を立てて殺傷できる。
その理屈が正しかったのか、数回の攻撃に耐え、飛び立たなかった(立てなかった)ユリカモメは命を落とさずに済んだようである。ハヤブサも猛スピードでの水面の上下飛行につかれたようで、対岸に降り立ちユリカモメとのバトルは終了した。この間、カラスは手出しができず高木に止まり、遠巻きに見ているだけであった。
自分としても、このようなシーンを撮影できる機会はほとんどないのであるが、自然が繰り広げる、野鳥の生存競争の現場は、凄まじいものがあり、しばらくの間、興奮状態が続いた。