多摩川での野鳥の写真撮影の余禄なのか、はっきりしないが、野鳥の種類が多く、自然が残されているのが基本であると思う。毎回、何気なく見ていると、決まって止まる樹木がある。最近は、葉が落ちているため、観察にはもってこいの季節である。野鳥にとっても、葉があった方が安心できるし、雨や露を防ぐことができるし、葉があると姿を隠すこともできる。葉が落ちてしまうと猛禽などの野鳥に狙われやすくなるのであるが、決まって止まる樹木は周りが見通せる場所にある。
川があることは飲料水の補給や水浴びに必要であり、魚を餌にしている野鳥は、餌の採取場所にもなる。魚ばかりではなく水生昆虫が羽化するとセキレイやツバメのえさとなる。
葦原やススキあれば、小型の野鳥の棲み処にもなるし、雑草につく虫も餌になる。灌木と葦原も存在するし、これらの小型野鳥を狙う猛禽も多くなる。
多くの野鳥は縄張りを持つようであるが、これも定かではなく、常時移動しているように思える。留鳥であっても餌が無くなれば移動するのは、当然で、真っ赤に鈴なりとなっていたピラカンサの実も、ツグミやヒヨドリが食べつくすと、別の種類の木の実に群がる。ネズミモチの実も食べつくされた、センダンや、ムクの実も全く実が無くなっている。おいしいものから順番に食べるようである。わずかに残った実をジョウビタキやカワラヒワが食べている様子がうかがえる。
ベニマシコはセイタカアワダチソウやススキの穂を食べるようで、ホウジロ、カシラダカも食することがある。小型猛禽類の代表格はモズであるが、昆虫を主な食料としている。
こうしてみていると、食料のあることが野鳥を集め、留まる大きな理由である。その意味で自然が残っていることは野鳥を保護する第一条件のようである。むやみに河川敷利用を推進する方も多いが、自然を残すことによって癒される方も多いはずである。野鳥カメラマンにとっても、餌をばらまくことで野鳥を集めて撮影するなどは愚の骨頂と思われる。
我が国は四季がはっきりしていると言われている。四季折々の自然のなりわいにあまり人工的な手を加えず、極端な変更は好ましいことではない。多摩川がある以上、治水管理は十分に行わなければならないが、地域の一部には残しておきたい世界がまだある多摩川をこよなく愛する一人である。