
上野に行く時素通りし続けた東洋文庫ミュージアム、日曜日にようやく足を踏み入れた。お目当てはモリソン書庫。
こちら〜
圧倒的な存在感、みたかったんだ〜(素通りしてたくせにね)。ロンドンタイムズの通信員として20年の長きにわたって北京に駐在した、オーストラリア人のジャーナリストG.E.モリソンが収集した、ヨーロッパの言語で書かれた東洋に関する質の高い書籍24,000冊。1917年に岩崎久弥が一括購入した。今のお金にして約70億円。
ところどころ本と本の間に白い紙が挟んであった。研究者に貸し出した本が置かれていた場所だそう。書庫自体が展示物であり、現在進行形で研究者が拠り所とする資料でもある。ガラスケースに展示されているのは、選りすぐりの書籍。神と教皇の戦士としてカトリックの海外布教に力を注いだイエズス会士、日本滞在中の宣教師ルイス・フロイスからの手紙をまとめた書籍があり、開国後オランダ戦で1860年にヒョウが、1961年にトラが日本に持ち込まれ、見せ物興行に多くの人が集った、そういう時代に描かれた「静物画譜」あり。ちなみにヒョウだけが来た時には、トラとの区別がいまいちできなかったらしい(苦笑)。
そして、なんか、これ
見たことあるよね!
フランス人の画家ジョルジュ・フェルディナン・ビゴー(1882年1月に来日)の風刺画。漫画雑誌「トバエ」に掲載された、日本、清、ロシアが朝鮮をめぐって争っている日清戦争をモチーフにしている。教科書で見た気がするぞ。
こういった素晴らしい常設展に加えて、企画展「シルクロードの旅」展を見た。シルクロードを通じての交易でヒトモノカネだけじゃなく文化も宗教も伝わったんだなぁと思える展示が充実していた。
梵語雑名 クチャ出身の僧侶が編纂した梵語の字書
人体・季節・時間、動植物、地名などの1250の漢語とその梵語訳、漢字音と仮名名が列記された単語帳のようなもの。このページは地名が記載されている。中国では「胡」とは西方・北方の異民族を指す多義的なコトバだったものが、唐代にはソグドを指す固有名詞であったということがわかる、と説明があった。
そういえば「胡」がつく食べ物、胡椒・胡麻・胡桃・胡瓜などは全てシルクロードを通って中国にもたらされ、それが日本に伝わったものらしい。中国では「胡食」と呼ばれる、イースト菌なしのパンが流行した、それまで粒のまま穀物を食べていた文化に粉にしてパンや麺にして食べる文化が広まり、それが日本に入ってきたのだそう。粒食の典型のご飯だけじゃなく、粉食の麺類が食卓に登るのはシルクロードのおかげだそうざんす。
ソグド人とは?シルクロードの交易の主役、サマルカンドを中心に今のウズベキスタンからタジキスタンにまたがるあたりはかつて「ソグディアナ」と呼ばれたソグド人の故郷。肥沃なオアシスが多くて農業してたんだけど、人口が増えて「移民」してシルクロード沿いにコミュニティを作って交易を支えた。日本には8世紀に鑑真さんと一緒に来日した安如宝を始め、何人かが日本にまでわたって来たようだ。
日本の大谷探検隊が持ち帰った出土品は東博で見たことあるけど、謎なアイマスクしか記憶に残ってない。
書籍から当時の様子を偲ぶっていうのもなかなか面白いなぁと思った。東博の東洋館で大谷探検隊の持って帰ったもの、また見に行きたくなった。
倉敷の大原孫三郎も 織物産業だけでなく 銀行 病院 水力電気 学校 教会 孤児院 たくさんの研究所 そして美術館など
大変に幅広い仕事を成しています。
昔の実業家ってすごいなあと思います。
財閥がこうして大枚をはたいて 24,000冊もの本を買い後世に残してくれたことは
ありがたいことですね。
久弥の娘がエリザベス・サンダースホームを作った沢田美喜さんだったことを
今になって知りました。
ホームを作るにあたり 岩崎財閥からの資金なくしては とても成しえません。
美喜さんは 米兵と日本女性との間に生まれた子の 引き取り手のない
主に黒人の血を引くベビーをたくさん救いました。
岩崎一族の中の岩崎小弥太は 山田耕筰が大成するまでの資金を 長年援助しました。
昔の財閥・富裕層はやることが粋ですね。後々まで残る人材を育てたり
貴重な書籍を大枚をはたいて買い こうして残すなど
ようさんも書いておられる 大原孫三郎も岩崎一族も 今のにわか成金とは大違いです。
いかに大変かをご存知だったのかな、とふと思いました。
絵画もこういった蔵書群も、一旦散逸したら元に戻すことはできませんからね。
でも美術館や文庫を持つということは、永遠に扶養家族を抱えるようなもの。
並大抵の覚悟ではなかったと思いますけど、
それがまた事業・本業へのモチベーションになったのかなぁ。
とにかくすごいバイタリティ、そして文化への深い理解。
もちろん批判も含めていろんな見方ができるのだとは思いますが
昔の実業家は本当に素晴らしいものを残してくれた、と思います。
モリソン蔵書は今も学術資料として研究者に貸し出しているそうで、それもすごいです。
普通だったらその場での閲覧しか許されないような貴重なものばかりでしょうに。
残した書籍が後に使われることを望んで購入したはずですが
使う人の手元に預けるってすごいなぁ、と思います。
沢田美喜さんも岩崎の方だったんですね、さすが志が違います。
おっしゃる通り、今の成金とは資産規模でも使い道の質でも、
比較することすら憚られます。
2枚目の写真のモリソン書庫、美しい・・・
実際に本を貸し出していることにもビックリ。
研究者との信頼関係なくしてできません。
沢田美喜さんの話も知りませんでした。
何もかも知らなかったことばかり。
凄いです!!
平凡社のは知らないんですが(苦笑)
2枚目の写真は全体の半分弱なんです、素晴らしいですよ。
何気なく白い紙が挟んであって、学芸員さんに聞いて初めてわかる資料貸出。
ちなみに、特別展の展示物にはすごく専門的な説明がついてるのですが
こぼれ話的ディスプレイは凄く面白くて、唸りました。
昔の実業家は、本当にすごいです。
仕事で付き合いのある西洋のノブリスオブリージュを真似したのかも
人財産築いてもその謙虚さ、爪の垢飲ませたい人いっぱいいます(苦笑)