今日のうた

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二十歳の原点 (3)

2019-08-20 05:39:07 | ⑤エッセーと物語
⑪なぐられたら殴りかえすほどの自己愛をもつこと。

⑫「ティファニー」にて
 一切の人間はもういらない
 人間関係はいらない
 この言葉は 私のものだ
 すべてのやつを忘却せよ
 どんな人間にも 私の深部に立入らせてはならない
 うすく表面だけの 付きあいをせよ

 一本の煙草(たばこ)と このコーヒーの熱い湯気だけが 
 今の唯一(ゆいいつ)の私の友
 人間を信じてはならぬ
 己れ自身を唯一の信じるものとせよ
 人間に対しは 沈黙あるのみ

⑬一・00PM
 生きている 生きている 生きている
 バリケードという腹の中で 友と語るという清涼飲料水をのみ
 デモとアジ アジビラ 路上に散乱するアジビラの中で
 風に吹きとび 舞っているアジビラの中で
 独り 冷たいアスファルトにすわり
 煙草の煙をながめ
 生きている イキテイル

 機動隊になぐられ 黒い血が衣服を染めよごしても
 それは非現実なのか!
 おまえは それを非現実というのか!
 しかし何といわれようと 私は人を信じてはいないのだ!

 警察官総数八万四千人
 十万の人をもってすれば警官は打ち破れる
 自衛隊員の総数二十五万人
 三十万人の人をもってすれば自衛隊はうち破れる
 しかし その十万人の人 三十万人の人とは一体何なのだ

⑭旅に出よう
 テントとシュラフの入ったザックをしょい
 ポケットには一箱の煙草(たばこ)をもち
 旅に出よう

 出発の日は雨がよい
 霧のようにやわらかい春の雨の日がよい
 萌(も)え出でた若芽がしっとりとぬれながら

 そして富士山の山にあるという
 原始林の中にゆこう
 ゆっくりとあせることなく

 大きな杉の古木にきたら
 一層暗いその根本に腰をおろして休もう
 そして独占の機械工場で作られた一箱の煙草を取り出して
 暗い古樹の下で一本の煙草を喫(す)おう

 近代社会の臭(にお)いのする その煙を
 古木よ おまえは何を感じるか

 原始林の中にあるという湖をさがそう
 そしてその岸辺にたたずんで
 一本の煙草を喫おう
 煙をすべて吐き出して
 ザックのかたわらで静かに休もう
 原始林を暗やみが包みこむ頃になったら
 湖に小舟をうかべよう

 衣服を脱ぎすて
 すべらかな肌をやみにつつみ
 左手に笛をもって
 湖の水面を暗やみに漂いながら
 笛をふこう

 小舟の幽(かす)かなるうつろいのさざめきの中
 中天より涼風を肌に流させながら
 静かに眠ろう

 そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう       (引用ここまで)

※この美しい詩で終わっています。







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