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ゴーマニズム宣言 新戦争論 1―(1)

2015-08-31 05:46:12 | ⑤エッセーと物語
小林よしのり著『ゴーマニズム宣言 新戦争論 1』を興味深く読みました。
大いに頷ける言葉あり、私の知識では納得できない箇所がありですが、
おぼろげながらも、戦争というものの正体が見えてくるように感じました。
心に残った言葉を引用させて頂きます。

(1)遠隔操作できるウオーロボットは味方の死傷者を一切出すことなく、
   敵を殲滅(せんめつ)させた。だが問題は、操縦者が罪悪感から
   PTSDになることだった。
   そこで防衛省は少年志願兵を募集した。
   14歳で退役だが、罪悪感が芽ばえたら、その時点で資格停止である。

   だがその後の調査では、退役まで何事もなく任務を果たした少年が、
   成長するにつれ、様々な症状を示すことが明らかになった。
   対人関係が上手くいかない者、暴力的になる者、子供の頃の記憶を消滅させる者、
   そして自殺率が異様な高さになった。

   そこで画期的な技術が導入された。
   誰でも遊べる【コンバット・アプリ】である。
   もはや資格は問わない。誰もが戦場と繋(つな)がるゲームの誕生だった。
   戦場はコンピューター・グラフィックに転換して、殺人のリアリティを
   圧倒的に減殺させた。
   女・子供もそれをゲームと信じて熱中した。
   地球の裏側で自分が罪なき人々を虐殺しているとは誰も思わなかった。

   戦争は完全に日常に持ち込まれた。

   ゲームではない!
   肉を裂き、
   血しぶきを上げ、
   瞳孔(どうこう)を開き、
   恐怖に顔をひきつらせ、
   悲痛に涙は涸(か)れ、
   怒りをほとばしらせ・・・
   憎悪で悶絶(もんぜつ)しながら・・・
   呪い・・・
   呪い・・・
   呪って、
   絶命する。
   それが戦場の現実なのだ!

   戦争をゲームと思ってないか?
   憎悪と呪いを受けとめる覚悟で
   戦場に行けるか!?

   アメリカのイラク侵略がなければ、イスラム国は生まれていない。

   アメリカ流の弱肉強食の資本主義で、世界を覆いつくそうとする
   グローバリズムによって、情報が国境を容易に超えるようになったこと、
   貧困層に落ちた若者が夢を持てなくなったこと、
   ・・・などの要因が、イスラム国のジハード(聖戦)に
   魅力を感じる若者を育てている。
   この傾向は止(や)まないだろう。

   オバマ大統領はイラク戦争を終わらせるのが目標だったが、
   とうとうイラクだけでなく、シリア空爆にまで踏み切った。
   また罪なき民衆が空爆の下で犠牲になっているのである。
   もうアメリカは中東の砂塵(さじん)の迷路から抜け出せないかもしれない。
   中東の国境線には無理がある!
   欧米が力ずくで擬似国境線にイスラムを封じ込めるのも限界が来るだろう。


(2)戦争は政治の延長であり、二国間の国益の衝突を解決する手段として、
   外交交渉が決裂したときに、武力解決が選択されるという説がある。
   この説から、戦争の目的には、合理性があると思い込みがちなのだが、
   イラク戦争はもっとバカバカしい原因で始まった。
   イラク戦争当時も、真の目的は石油だとか、経済合理性で解決する者もいたが、
   実はそんなわかりやすい目的ではない。

   イラク戦争は、9・11同時多発テロの「衝撃」を利用して、
   ブッシュ大統領の「熱狂」と、ネオコンの「妄想」が生み出した、
   極めて非合理的な戦争であった。
   9・11以降の「熱狂」醒(さ)めやらぬブッシュのテキサス親父的な
   フセイン=悪=やっつけるべしという信念に、
   ネオコン(新保守主義者)が「中東民主化構想」という理論づけを行ったことが
   この戦争の強力な推進力になったのである。

   日本も無関係ではない。国内にも、国際社会にも、
   アメリカのイラク戦争への支持を積極的に訴え、
   戦闘終了後の占領中、(占領中=戦争中なのだ)
   「復興支援」の建て前でサマワに自衛隊を出したのである。

   イラク戦争を支持した日本の選択について、
   政府もマスコミも国民もなぜ検証しないのか?

   行き当たりばったりの外交でよしとする国家では、
   第二次世界大戦のような破局を招く危険がある。
   集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、
   いつアメリカの要請で海外派兵の局面が来るかもわからない。

   Show the flag!
   Boots on the ground!

   今度は武力衝突も覚悟しなければならない。

   わし(作者)はイラク戦争を反省するか否かが、日本の未来を決定づけてしまう、
   重大な運命の分かれ目になると考えている。
   日本はアメリカと共に、中東で、アラブを敵に回して、
   永遠に戦うことになるかもしれない!
   中国が恐いから、北朝鮮が恐いから、アラブ人を殺せでいいのか?
   当時わしが「親米ポチ」と呼んだ者たち、
   親米がもはや「恐米」となってしまった論客、政治家、官僚たちが、
   アメリカ人の妄想にだまされたのがイラク戦争だった。

   2001年9月11日――アメリカ同時多発テロで約3000人が死亡。
   すべてはここから始まった。

   9月20日――ブッシュ大統領はこう演説した。
   すべての国、すべての地域は、今こそ一つの決断を下さなけばならない。

   我々につくか、テロリストにつくのかいずれかだ!

   米国中がナショナリズムに覆われて、異論を許さぬ空気が形成された。
   米国人が異常なのは、その空気を世界にまで拡げようとしたことだ。

(3)日本は先の大戦で、米軍に全国200以上の都市を無差別空襲され、
   死者33万人、負傷者43万人の犠牲者を出し、(国際法違反)
   広島・長崎に2個の原爆を落とされ、30万人が殺戮された。(国際法違反)
   まさに大虐殺である。
   日本人ならこの恨みを少しは持続させているか、と思ったら、全然違った。
   彼ら(保守派)は全員、敗戦後の占領政策でアメリカに魂を抜かれ、
   「親米保守」になっていたのである。

   9月15日――アーミテージ国務副長官が柳井駐米大使に、
   「ショー・ザ・フラッグ」と発言。
   日本でも「対テロ戦争」への参加を示す旗を立ててくれと言うのだ。

   10月7日――テロの報復として米国がアフガニスタンを攻撃。

   抵抗する者をすべて「テロリスト」で括(くく)って、巨大な暴力装置で
   弾圧・殲滅(せんめつ)すれば万事解決と言えるのは危険である。
   「テロとの戦い」を口実に空爆を繰り返すアフガニスタンで、
   何人の無辜(むこ)の民が誤爆で死んでいるのか、親米保守派はまったく鈍感だった。

   2002年1月29日――ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクを非難する
   「悪の枢軸」発言。
   ブッシュの言う「悪の枢軸」とは、イラク、イラン、北朝鮮である。

   2月27日――米軍が発表した「対テロ戦争貢献リスト」から、日本が落ちる。
   親米保守派にはこういうことがコンプレックスになるのだ。

   7月8日――ブッシュ大統領が宣言。
   「フセイン政権は排除されなければならない!」

   8月26日――チェイニー米国副大統領。
   「イラクの核脅威は、予防的攻撃の正当性を証明している」

   9月12日――ブッシュ大統領、国連総会で演説。
   「サダム・フセインは大量破壊兵器を開発し続けています。
    イラク政権のふるまいは、国連の権威に対する脅威であり、平和に対する脅威です!」

   アフガニスタンを崩壊させてもビン・ラディンの行方は知れない。
   9・11の屈辱とフラストレーションを解消するにはまだ足りない。
   ブッシュは、まだ醒めない「熱狂」の大波に乗って、
   「テロとの戦い」を踏み越える次の戦争を画策していた。
   そのためには、フセインが大量破壊兵器を隠し持っていなければならない。

   イラクは罪をでっち上げられようとしていた。

   さて、ここで日本国内で異様な言論を展開した人物がいる。
   「日本はアングロサクソンについて行けば百年安泰」と主張する岡崎久彦である。
   彼は小泉内閣でも安倍内閣でも安全保障のブレーンの役割を果たしていた。

   9月14日――岡崎は産経新聞でこう主張したのだ。
   「米国がイラクを攻撃すればパレスチナ問題も解決するかもしれない。
    イランも大きく影響され、中東全体が変わる契機になる。
    北朝鮮は震え上がり、中国もおとなしくなる。
    台湾問題も中国側が引っ込む形で解決する可能性がある。
    成功の可能性は90%。
    世界史的な「アメリカ帝国」ができようとしている。
    こうして「パックス・アメリカーナ」が実現したら、
    米国は世界の中で問題を起こす国があると、
    米市民の命を犠牲にしてもそれを抑え込むだろう」

   ところがこの妄想的な感覚を当時の自称保守派は共有していたのである。
   アメリカに敗戦し、占領された時代を知る世代は、アメリカへの恐怖に支配されていた。
   保守論壇の大御所に影響された若手も似たようなものだった。
   「親米」はもはや「恐怖」に達していたのだ。

   アメリカがフセイン政権を崩壊させて、イラクを民主化させれば、
   そこから中東全域に「民主化のドミノ倒し」が起こるだろう!
   アメリカは一旦その気になったら、何が何でも戦争する。
   理由も目的もでっち上げるし、その強引さは止められない。    (2につづく)



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