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ソローキンの桜、海を駆ける、あぜ道のダンディ

2020-02-03 16:18:13 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
阿部純子さんの3作品を観る。
 
(1)ソローキンの見た桜

日露戦争の時代に、日本初のロシア兵捕虜収容所が松山にできた。
日本は世界から認められたいがために、ハーグ陸戦条約に則って捕虜を扱おうとする。
「俘虜は博愛の心を以て取り扱ふへきものとす」、といった当時の日本人からは、
映画を観る限り、日本人としての「矜持」が感じられる。

ところが、現在の状況はどうであろう。
「荻上チキ・セッション22」で、入国管理センターに収容されている人たちの
酷い扱いを聴いたばかりだったので、その違いに衝撃を受けた。
以前、収容されていた人の話によると、急病でも医師に診てもらえない場合が多く、
症状にかかわらず、せいぜい市販のバファリンかオロナインを出されるだけという。
収容者に対しては一切の説明はなく、人権は認められず、精神的に追い詰めて
自発的に諦めて帰るような雰囲気を作ろうとしているようだ。
母国で生命の危険があるからこそ、危険を冒してまで日本に来たのに
憲法も国際人権も一切適用されていない。
【長期収容は、精神の殺人】だという。
これは1904年の松山の捕虜収容所のことではなく、茨城県牛久にある
入国管理センターなどの今の実態だ。
21世紀に、こんなことが通用するのか!
こんなことが世界に通用するのか!
オリンピックを開催する国として、恥ずかしくないのか!

話は逸れましたが、松山の捕虜収容所では、ロシア兵たちはある程度の
自由が認められていた。許可を得れば外出することも出来る。
この映画はロシア兵と看護を担っている日本女性の恋の物語だ。
その後、2人は歴史に翻弄されていく。
歴史を知らなくても解りやすく、また阿部純子の可憐さ、健気さが際立っている。

だが私には物足りなかった。
人間や歴史の闇にも光を当て、もっと物語を膨らませることが
出来たのではないだろうか。
あまりにも登場人物が善男善女で、性善説の見本のような内容に、
「もしかしたら日露合作なので忖度した?」と思ったほどだ。

(2)海を駆ける

この映画も日本とフランス、インドネシアの合作だ。
だが深田晃司脚本・監督により、のびのび作られたように感じた。
2004年のスマトラ沖地震による津波被害や、太平洋戦争の頃の
「バンダ・アチェ独立運動」が下地にある。私は歴史に疎いので調べると

ウィキペディアによると、アチェの独立運動とは

「1942年オランダ領東インド全域を占領した日本軍をアチェ側は当初解放軍として
 歓迎し日本軍も独立運動に着手した、のちの独立運動時に元日本軍がこの地で
 オランダ軍と戦闘になり死亡している。
 1949年インドネシアがオランダから独立すると、スカルノ大統領の政府は
 アチェを北スマトラ州に併合、アチェ人はこれを外国の占領とみなし抵抗した。
 このため、インドネシア共和国政府は1959年アチェを特別州とし、
 高度な自治を認めたが、抵抗運動はなお続いた」。  (引用ここまで)

インドネシアは多民族国家で、宗教もさまざま、また太平洋戦争で戦った記憶を持つ。
その海岸に記憶喪失の男が打ち上げられ、いろいろな奇跡を起こす。
歴史が分からなくても、宗教が分からなくても、風習が分からなくても、
その男の正体が分からなくても、そこに居合わせた人たちは、
彼を受け入れ、のびやかに生きている。
分からないなりに、風に吹かれているような、気持ちよく楽しめる映画だ。
この映画の中の阿部さんも、のびやかに生きている。

先日、「孤狼の血」を録画して観た。
ところが最初の場面の、豚小屋でのリンチに怖れをなして5分で削除してしまった。
あとで阿部純子が出演していることを知った。
彼女がどういった演技をしているか気になるが、観る勇気は私にはない。

(3)あぜ道のダンディ

石井裕也監督、光石研・田口トモロヲ主演。
この映画で阿部純子は吉永淳の名前で、光石の娘役で出ている。
武骨で一刻者の光石と、気が弱く心優しい田口との、中学からの友情を描いている。
このコンビが絶妙だ。
父子家庭で息子や娘とうまくコミュニケーションが取れない光石。
時に空威張りし、やせ我慢する光石を、田口がいつも受け容れている。
息子と娘の成長に戸惑いながらも成長する光石の姿に、なんだかホッとした。
映画の中で阿部純子は、いつも考えている。
それが彼女の演技をありきたりなものではなく、深みのあるものにしていると思った。












(画像はお借りしました)


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