◇本年度(2024年)の木造建築士試験問題が公表されましたので、振り返り私見を記述させていただきます。
◇問題と正答表について、「財団法人建築技術教育普及センター」のホームページに公表されました。
◇公表された試験問題を参照しながら、本振り返りをご一読いただければと思います。
〔No. 1 〕用語定義に関して誤っている肢問を選択する問題です。
正答 1
1.誤り。法23条、法2条八号:設問の文章は、法23条の「準防火性能」のことを言っており、かっこ書きの説明文がそのまま設問として記述されている。
また「防火性能」とは、法2条八号に規定しており、同・かっこ書きで「延焼を抑制するために当該建築物の外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう」と規定しており、防火性能は、外壁だけではなく「軒裏」にも延焼を抑制する性能を要求している。
なお、防火性能は、令108条の技術的基準において、耐力壁は、加熱後30分以上の非損傷性(一号)、外壁・軒裏は加熱開始後30分以上の遮熱性能(二号)を要求しており。準防火性能は、令109条の9の技術基準において、それぞれ20分以上と規定している。
2.正しい。法2条十四号、法2条五号:屋内階段は「主要構造部(法2条五号)」であり、主要構造部の過半の修繕は、法2条十四号に規定する「大規模の修繕」に該当する。
3.正しい。法2条四号:店舗の売り場は、執務・作業その他これらに類する目的のために継続的に使用する室であり「居室」として定義される。
4.正しい。法2条六号:道路中心線、隣地境界線から1階は3m、2階は5m以下の距離にある建築物の部分のことをいう。
5.正しい。令1条三号:「火打材」は、「構造耐力上主要な部分」として定義されている。
なお、「構造耐力上主要な部分」は、力学上の重要性から定められており、構造規定の問題に出てくる。
「主要構造部(法2条五号)」は、防火上の重要性から定められており、主に防火規定の問題に出てくる。
〔No. 2 〕確認検査規定に関して誤っている肢問を選択する問題です。
正答 3
1.正しい。法6条1項、令9条一号、消防法9条の2第2項:住宅防災機器の設置に関しては、消防法9条の2第2項に規定されており、法6条1項の確認対象の「建築基準関係規定」として、令9条一号に規定されているので、確認審査等の対象である。
2.正しい。法7条1項、同2項:条文通りである。なお設問で、指定確認検査機関は考慮しないとしているので、法7条の2は検討の対象としない。
3.誤り。法6条2項:床面積の合計が10㎡以内の増・改築・移転の場合の法6条の適用除外規定は、防火地域・準防火地域以外の場合に適用する規定なので、設問は「防火地域・準防火地域において」としているので、本規定の適用はなく、着工前に確認済証の交付を受けなければならない。
4.正しい。法15条1項:床面積の合計が10㎡を超える建築物を建築しようとする場合は、「建築工事届」を、建築主が建築主事を経由して都道府県知事に届け出ることとしている。また、床面積の合計が10㎡を超える建築物を除去しようとする場合は、施工者が「建築物除却届」を届け出る必要がある。
5.正しい。法7条の3第6項:条文通りである。なお設問で、指定確認検査機関は考慮しないとしているので、法7条の4は検討の対象としない。
〔No. 3 〕 全国どの場所においても、確認済証の交付を受ける必要がある肢問を選択する問題です。
正答 1
(※ 令和7年4月改正の改正法に準拠すると、回答が異なるので、現行法での回答とする。)
1.確認済証が必要。法87条、法6条1項一号、別表第1(い)欄(2)項、令137条の18:診療所(患者の収容施設があるもの)は、別表第1(い)欄に掲げる用途の建築物であり、床面積が200㎡を超えるものは、法6条1項一号に該当する特殊建築物の用途変更確認申請の対象である。
また、令137条の18に該当する類似用途の場合は、確認の対象とならないが、設問の病院から診療所への用途変更は、令137条の18に規定する類似用途に該当しない。
2.必要としない。法6条1項四号:現行法(旧法)では、法6条1項四号に該当する建築物で、都市計画区域内等では、確認済証を必要とする建築物だが、全国どこでも確認を必要とする訳ではない。
しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも延べ面積が200㎡を超えるものは、「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
3.必要としない。法6条1項四号:現行法(旧法)では、法6条1項四号に該当する建築物で、大規模の模様替は、確認済証を必要とする建築物ではない。
しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも2階建ては「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
4.必要としない。法6条1項一号、同四号:延べ面積が200㎡を超えていないので、一号には該当せず、四号に該当する建築物なので、都市計画区域内等では、確認済証を必要とする建築物だが、全国どこでも確認を必要とする訳ではない。しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも2階建ては「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
5.必要としない。法87条。法6条1項一号、令115条の3第二号、別表第1(い)欄(3)項、令137条の18第六号:図書館は、令115条の3第二号により、別表第1(い)欄(3)項に該当する特殊建築物なので、原則、用途変更確認申請を必要とするが、博物館と図書館は、令137条の18第六号に該当する類似用途の建築物であり、原則、確認申請を必要としない。また、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域においては、類似用途とみなされないとしていることにも注意する必要があるが、いずれにしても、全国どこでも確認済証を必要とする訳ではない。
※二級建築士試験の問題は、令和7年4月の法改正を避けた問題になっているが、木造建築士試験では、法改正の変更事項が絡む問題になっていることへの注意が必要!・・・来年は適合しないのです!
〔No. 4 〕 地盤面からの高さを求める用語定義に関する図形問題です。
正答 4
◇図形問題等での算定方法の基本原則 ⇒ 法92条
◇法92条:建築物の敷地面積、建築面積、延べ面積、床面積及び高さ、建築物の軒、天井及び床の高さ、建築物の階数並びに工作物の築造面積の算定方法は、政令で定める。
◇地盤面(令2条2項):建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面
・地盤面=斜面等で地面に見え隠れしている地盤部分の面積÷周長
・隠れている部分の面積南北2面=長さ2m×高さ2m×(南&北)2面=8㎡
・同様に西面=長さ10m×高さ2m=20㎡
・平均水平面=(8+20)÷[10×4(周長)]=0.7m
∴建築物の高さ=(6+1.5)-0.7=6.8m・・・「4」
2024年8月27日 by SHRS(シュルズ)建築基準適合判定資格者、一級建築士
◇問題と正答表について、「財団法人建築技術教育普及センター」のホームページに公表されました。
◇公表された試験問題を参照しながら、本振り返りをご一読いただければと思います。
〔No. 1 〕用語定義に関して誤っている肢問を選択する問題です。
正答 1
1.誤り。法23条、法2条八号:設問の文章は、法23条の「準防火性能」のことを言っており、かっこ書きの説明文がそのまま設問として記述されている。
また「防火性能」とは、法2条八号に規定しており、同・かっこ書きで「延焼を抑制するために当該建築物の外壁又は軒裏に必要とされる性能をいう」と規定しており、防火性能は、外壁だけではなく「軒裏」にも延焼を抑制する性能を要求している。
なお、防火性能は、令108条の技術的基準において、耐力壁は、加熱後30分以上の非損傷性(一号)、外壁・軒裏は加熱開始後30分以上の遮熱性能(二号)を要求しており。準防火性能は、令109条の9の技術基準において、それぞれ20分以上と規定している。
2.正しい。法2条十四号、法2条五号:屋内階段は「主要構造部(法2条五号)」であり、主要構造部の過半の修繕は、法2条十四号に規定する「大規模の修繕」に該当する。
3.正しい。法2条四号:店舗の売り場は、執務・作業その他これらに類する目的のために継続的に使用する室であり「居室」として定義される。
4.正しい。法2条六号:道路中心線、隣地境界線から1階は3m、2階は5m以下の距離にある建築物の部分のことをいう。
5.正しい。令1条三号:「火打材」は、「構造耐力上主要な部分」として定義されている。
なお、「構造耐力上主要な部分」は、力学上の重要性から定められており、構造規定の問題に出てくる。
「主要構造部(法2条五号)」は、防火上の重要性から定められており、主に防火規定の問題に出てくる。
〔No. 2 〕確認検査規定に関して誤っている肢問を選択する問題です。
正答 3
1.正しい。法6条1項、令9条一号、消防法9条の2第2項:住宅防災機器の設置に関しては、消防法9条の2第2項に規定されており、法6条1項の確認対象の「建築基準関係規定」として、令9条一号に規定されているので、確認審査等の対象である。
2.正しい。法7条1項、同2項:条文通りである。なお設問で、指定確認検査機関は考慮しないとしているので、法7条の2は検討の対象としない。
3.誤り。法6条2項:床面積の合計が10㎡以内の増・改築・移転の場合の法6条の適用除外規定は、防火地域・準防火地域以外の場合に適用する規定なので、設問は「防火地域・準防火地域において」としているので、本規定の適用はなく、着工前に確認済証の交付を受けなければならない。
4.正しい。法15条1項:床面積の合計が10㎡を超える建築物を建築しようとする場合は、「建築工事届」を、建築主が建築主事を経由して都道府県知事に届け出ることとしている。また、床面積の合計が10㎡を超える建築物を除去しようとする場合は、施工者が「建築物除却届」を届け出る必要がある。
5.正しい。法7条の3第6項:条文通りである。なお設問で、指定確認検査機関は考慮しないとしているので、法7条の4は検討の対象としない。
〔No. 3 〕 全国どの場所においても、確認済証の交付を受ける必要がある肢問を選択する問題です。
正答 1
(※ 令和7年4月改正の改正法に準拠すると、回答が異なるので、現行法での回答とする。)
1.確認済証が必要。法87条、法6条1項一号、別表第1(い)欄(2)項、令137条の18:診療所(患者の収容施設があるもの)は、別表第1(い)欄に掲げる用途の建築物であり、床面積が200㎡を超えるものは、法6条1項一号に該当する特殊建築物の用途変更確認申請の対象である。
また、令137条の18に該当する類似用途の場合は、確認の対象とならないが、設問の病院から診療所への用途変更は、令137条の18に規定する類似用途に該当しない。
2.必要としない。法6条1項四号:現行法(旧法)では、法6条1項四号に該当する建築物で、都市計画区域内等では、確認済証を必要とする建築物だが、全国どこでも確認を必要とする訳ではない。
しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも延べ面積が200㎡を超えるものは、「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
3.必要としない。法6条1項四号:現行法(旧法)では、法6条1項四号に該当する建築物で、大規模の模様替は、確認済証を必要とする建築物ではない。
しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも2階建ては「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
4.必要としない。法6条1項一号、同四号:延べ面積が200㎡を超えていないので、一号には該当せず、四号に該当する建築物なので、都市計画区域内等では、確認済証を必要とする建築物だが、全国どこでも確認を必要とする訳ではない。しかし、令和7年4月の改正法では、木造でも2階建ては「新二号建築物となり、原則、確認済証を必要とする建築物に変更になる。
5.必要としない。法87条。法6条1項一号、令115条の3第二号、別表第1(い)欄(3)項、令137条の18第六号:図書館は、令115条の3第二号により、別表第1(い)欄(3)項に該当する特殊建築物なので、原則、用途変更確認申請を必要とするが、博物館と図書館は、令137条の18第六号に該当する類似用途の建築物であり、原則、確認申請を必要としない。また、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域においては、類似用途とみなされないとしていることにも注意する必要があるが、いずれにしても、全国どこでも確認済証を必要とする訳ではない。
※二級建築士試験の問題は、令和7年4月の法改正を避けた問題になっているが、木造建築士試験では、法改正の変更事項が絡む問題になっていることへの注意が必要!・・・来年は適合しないのです!
〔No. 4 〕 地盤面からの高さを求める用語定義に関する図形問題です。
正答 4
◇図形問題等での算定方法の基本原則 ⇒ 法92条
◇法92条:建築物の敷地面積、建築面積、延べ面積、床面積及び高さ、建築物の軒、天井及び床の高さ、建築物の階数並びに工作物の築造面積の算定方法は、政令で定める。
◇地盤面(令2条2項):建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面
・地盤面=斜面等で地面に見え隠れしている地盤部分の面積÷周長
・隠れている部分の面積南北2面=長さ2m×高さ2m×(南&北)2面=8㎡
・同様に西面=長さ10m×高さ2m=20㎡
・平均水平面=(8+20)÷[10×4(周長)]=0.7m
∴建築物の高さ=(6+1.5)-0.7=6.8m・・・「4」
2024年8月27日 by SHRS(シュルズ)建築基準適合判定資格者、一級建築士
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます