◇過去の出題傾向分析
①竪穴区画(令112条10項) ⇒ 過去6年間の出題率67%
・主要構造部を準耐火構造とした3階以上の居室部分と階段などの縦方向に貫通する空間との区画
・準耐火構造の床、壁、及び防火設備(法2条九号の二 ロに規定する20分遮炎性能)で区画する。
・ただし書き緩和規定が2つある(竪穴区画が不要の部分)。
(1)避難階の直上階、直下階のみに通ずる吹き抜けで、内装を下地、仕上げ共に不燃材料とした場合。
(2)階数3以下で、200㎡以内の、戸建住宅、及び共同住宅内のメゾネット住戸の内部階段部分
⇒(注意事項)あくまで緩和対象は、住戸内階段であって、共同住宅の共用階段は竪穴区画が必要。
・今回の法改正で、小規模建築物の竪穴区画の緩和が挿入されている。⇒通称:簡易竪穴区画??
②異種用途区画(令112条17項) ⇒ 過去6年間の出題率50%
・建築物の一部が、法27条(法別表第1)に掲げる特殊建築物の部分と、その他の部分とを区画する。
⇒過去問のほとんどは、旧法24条があった場合で、17項に該当しないが、趣旨は同じと解釈する。
⇒(注意事項)法27条の特殊建築物に関しては、法改正が絡むので、下記の法改正解説を参照。
・1時間準耐火基準適合の床、壁、及び特定防火設備(60分遮炎性能)で区画する。
③防火壁の技術基準(令113条、告示197号) ⇒ 過去6年間の出題率50%
・旧法では、令113条に記載があった基準の一部が、令元告示197号に移項していることに注意。
・防火壁と改正法で新設された防火床とは、同じ性能であることを規定している。
・木造建築物の場合(令113条1項二号 ⇒ 大臣が定めた構造方法:告示197号第1)
(1)自立構造を要求し、かつ、無筋コンクリート造、組積造を認めていない。
(2)防火床の場合、支持する耐力壁、柱、梁には、耐火構造を要求している。
・防火壁、防火床に設置する開口部の形状寸法(令113条1項四号):2.5m×2.5m以下とする。
・法26条の改正で、従来の1,000㎡を超える建築物への防火壁設置規定において、
防火床による区画を認め、1階と2階のフロアーによる区画で、大規模フロアーを可能とした。
・今回の法改正による出題確率が、高い部分と推察している。
④防火間仕切り壁の規定(令114条) ⇒ 過去6年間の出題率83%
・令114条1項の界壁、同2項の防火上の主要な間仕切壁は、法改正で同等の扱いとなっている。
・原則、小屋裏、天井裏に達せしめる必要があるが、次の場合には緩和されている。
(1)令112条3項に定める強化天井とした場合。
(2)スプリンクラー設備等を設置した場合。
・令114条3項の準耐火構造の隔壁設置規定の対象は、建築面積が300㎡を超えるものである。
・過去問では、この「300㎡を超える」という基準を問う問題となっていることへの注意が必要。
◇法改正事項
①法21条:木造等の大規模建築物に、耐火構造を要求していた規模を緩和し、かつ性能規定を導入した。
(1)規制する建築物の規模
第1項一号:地階を除く階数が4以上である建築物
二号:高さが16mを超える建築物
三号:別表第1(い)欄(5)項又は(6)項の用途の特殊建築物で、高さが13mを超えるもの
(2)主要構造部に必要とされる性能に関する政令で定める技術基準
令109条の5第一号:通常火災終了時間に基づく準耐火構造 (45分以上、屋根・階段は30分)
同二号:令107条の基準(法2条七号の耐火構造の技術基準)耐火構造の基準
(3)ただし書きで、建築物の高さ以上の空地を有する場合には、この規制は、適用されない。
②法27条:特殊建築物の防火規制において、小規模建築物への緩和規定を新設した。
(1)従来の特定避難時間倒壊等防止建築物という用語を削除し、耐火構造と準耐火構造に整理した。
(2)特殊建築物に要求する防火性能の政令で定める技術基準
令110条一号:特定避難時間に基づく準耐火構造 ⇒ 構造方法は告示255号で変更なし
同二号:耐火構造 ⇒ 令107条の基準(法2条七号の耐火構造の技術基準)
(3)3階以上を法別表(1)項から(4)項までに掲げる用途に供するものへの緩和(法27条1項一号)
・階数が3で延べ面積が200㎡未満のもの
・就寝利用がある用途の建築物は令110条の5で定める警報設備を設けたものに限る
(4) 劇場、映画館又は演芸場の用途に供するもので主階が1階にないものへの緩和(四号)
・階数が3以下で延べ面積が200㎡未満のもの
③令112条11項、12項:小規模建築物の竪穴区画の緩和 ⇒ 通称:簡易竪穴区画??
(1)準耐火構造ではなく、間仕切壁でよいとしている(告示未制定)。
(2)患者の収容施設がある診療所などは、間仕切壁と防火設備(20分遮炎性能)としている。
(3)スプリンクラーなどを設置した場合は、間仕切壁と10分遮炎の防火設備でよいとしている。
(4)共同住宅や通所タイプの児童福祉施設などは、間仕切壁と「戸(告示未定)」でよいとしている。
⇒文章では分かりにくいと思うので、講座で使用するスライドを掲載します。
2020年4月30日 by SHRS(シュルズ)一級建築士、建築基準適合判定資格者