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令和元年「2級建築士試験」ブログ解説 ②

2019-10-27 09:54:48 | ビジネス・教育学習
◇原則、今年(令和元年)の「2級建築士試験・建築法規」の解説を基本とします。
◇ただ、今度の試験は来年ですので、今年の6月に施行された改正法が適用になります。
◇そこで改正部分を考慮し、問題文の修正なり、解説を細かくするなりの対応を図ります。

◇なお問題と正答肢は、公益財団法人建築技術教育普及センターのH.P.をご参照ください。
◇実施された二級建築士試験の問題文と正答肢表が公開されています。

〔No.4 〕換気設備、階段形状等の一般構造規定に関する不適合記述を選択する問題です。
正答 1
1.適合しない。法28条3項、令20条の3:調理室は、原則、換気設備を必要とし、令20条の3において適用除外されているのは、「床面積の合計
が100㎡以内の住宅又は住戸」であり、設問の120㎡の住宅には、除外規定の適用はないので、換気設備が必要である。
2.適合する。令23条ただし書き:戸建て住宅の階段は、設問の寸法で適合する。
3.適合する。令25条4項:条文参照。
4.適合する。令22条ただし書き:条文参照。
5.適合する。法31条:下水道法に基づく処理区域内では、水洗便所とする義務がある。
【解説】この問題の設問2~5の法令に適合する記述に関しては、比較的易しく条文参照で理解できると思います。正答の法令に適合しない記述
 の設問1は、法28条3項に基づく換気設備を必要とする火気使用室の規定で、かっこ書きで、政令で定めるもの(令20条の3)を除くとしており、
 換気設備設置の適用が除外されます。令20条の3では、換気設備を必要としない火気使用室が3項目定義されており、過去、1年おきに出題され
 ている分野です。そこで、改めて整理しておきます。
  一号:密閉式燃焼器具を使用している火気使用室。
  二号:床面積の合計が100㎡以内の住宅、住戸の調理室で、発熱量の合計12kW以下の火気設備仕様で、床面積の1/10以上の有効換気面積を有
 する室。
  三号:調理室を除く室(洗面・浴室等)で、発熱量の合計6kW以下の火気設備を使用する室。
 という事は、設問の記述は、延べ面積120㎡の住宅なので、二号の「床面積100㎡以内の住宅、住戸の調理室」には該当せず、換気設備を必要
 とする調理室となり、設問1は法令不適合である。

〔No. 5〕ホルムアルデヒドに関する有効換気量を算出する図形問題です。
正答 3
 令20条の8第1項一号イ:集会室に機械換気設備を設けるに当たり、法28条の2第三号による政令(令20条の8第1項一号イ)で定めるホルムアル
 デヒドに関する技術的基準による必要有効換気量(Vr)
 Vr=nAh
 n=1時間当たりの換気回数(住宅の居室:0.5、その他の居室:0.3)⇒本問では0.3
 A=居室の床面積:集会室に対して常時開放された開口部を通じてこれと相互に通気が確保されている収納、玄関・廊下を含むものとする。
 (令20条の7第1項一号かっこ書き)
  =26+2+10=38㎡
 h=居室の天井の高さ(問題文記載事項)=2.5m
 Vr=0.3×38×2.5=28.5㎥/時
【解説】この問題は、図形に、常時開放された開口部が矢印で明示されており、居室に常時開放されている開口部で接している納戸等の居室以
 外の面積を合計して、公式に当てはめて算出すればよく、令20条の8に、算定用の公式が記載されていることが理解出来れば、難しい問題では
 ないと思います。ちなみに、平成21年に、ほぼ同様の問題が出題されています。

〔No. 6〕木造一戸建て住宅における構造強度に関する記述の正誤問題です。
正答 1
 1.誤り。令45条2項(木造の規定):厚さは1.5㎝では不適合で、3㎝以上としなければならない。
 2.正しい。令49条2項(木造の規定):条文参照。
 3.正しい。令46条4項(木造の規定):階数が2以上、延べ面積が50㎡を超える木造建築物には、各階床面積に「表2」の数値を、また、床面か
  ら1.35m以下の部分を除いた見付面積に「表3」の数値を乗じて得た数値以上としなければならないとしている。
 4.正しい。令38条6項(構造部材の規定):設問の建築物のように、平家建の木造建築物に限り、常水面下にしなくてもよいとしている。
 5.正しい。令42条2項(木造の規定):原則、設問通りであるが、ただし書きで、平家建50㎡以内の建築物に関しては、除外されている。
【解説】条文参照で理解できる問題で、何処にその条文の記載があるかだと思います。私は学生に、この部類の問題では、施行令の目次を参照
 すれば、条文検索が容易であることを諭しています。この問題でも、問題文から、政令の目次から適用条文検索は容易なので、比較的易しい
 問題ではなかったかと思います。

〔No. 7〕木造住宅の柱の小径を算定する計算問題です。
正答 4
 令43条1項の表、同2項
 柱の小径計算の係数は、表の(2)、左欄以外の柱
 3階1/33:250㎝×1/33=7.5㎝
 2階1/30:320㎝×1/30=10.6㎝
 1階1/30:330㎝×1/30=11㎝
 ただし2項で、3階建ての1階については、「13.5㎝」を下回ってはならないとしているので、
 「4」が適合する最小値となります。
【解説】平成26年度以来、久々の柱の小径算定問題です。問題自体は、令43条の表を参照して解く、比較的易しい問題なのですが、一つ、落と
 し穴があります。3階建てになっていることです。という事は、表で計算するだけでなく、第2項に記述されている、3階建の場合「13.5㎝を下
 まわってはならない」という記述があることです。この記述に気が付いている受験生には、易しい問題であったと思います。というのは、こ
 の問題に引っかかって、法規満点を逃した学生が、私のクラスにいたからです。悔しい思いをしたと思います。責任は、講師としての私にも
 あると思い、もう少し注意喚起をしていればよかったと、反省しています。
  でも、木造3階建は、原則、法20条(具体的には法6条1項二号)により、構造計算対象建築物なので、構造計算が基本です。この規定は、構造
 計算で算出した場合の最低基準を示したものと解釈しています。資格試験というのは、基礎学力習得という事ではないかと日頃から思ってい
 ますので、このような問題は、如何なものかと、つい、愚痴ってしまいます。これが無ければ、法規担当講師として、今年も法規満点の学生
 が2名出たと自慢できるのに、私も悔しいです。確認していませんが、法規24点が3名いますので、ひょっとしたら、4名、法規満点の学生だっ
 たかもしれません。

〔No. 8〕構造強度に関する記述の正誤問題です。
正答 4
 1.正しい。令62条の8第六号ただし書き:条文参照。
 2.正しい。令62条の8第七号:条文参照。
 3.正しい。令73条1項ただし書き一号:ただし書きに掲げる部分以外においては、末端を折り曲げないでもよいとしているので、ただし書き
  で記載されている、柱の出隅部分については、末端を折り曲げなければならない。
 4.誤り。令67条:ステンレス鋼で接合する場合は、原則、高力ボルト接合、溶接接合であり、リベット接合の場合には、炭素鋼でなければ
  ならない。
 5.正しい。令93条の表:長期500 kN/㎡、短期その2倍=1,000 kN/㎡
【解説】NO.6同様に、条文参照で理解できる問題だと思っています。何処にその条文の記載があるか検索するのは、施行令の目次を参照すれ
 ば、条文検索が容易なので、比較的易しい問題ではなかったかと思います。受験勉強は、法令集を検索する精度とスピードだと、日頃から思
 っていますので、受験勉強では、法令集を検索しながら問題を解く「癖づけ」だと、日頃から受験生には諭しています。

なお、試験問題と正答肢表については、
公益財団建築技術教育普及センターのホームページで確認してください。
◇二級建築士試験・学科Ⅲ「建築法規」問題集
https://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/2k-mondai.files/2k-mondai-r1-gakka1_2.pdf
◇二級建築士試験・学科Ⅲ「建築法規」の正答肢
https://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/2k-mondai.files/2k-r1-gakkagoukakukijun.pdf

2019年10月27日 by SHRS(シュルズ)「1級建築士、建築基準適合判定資格者」
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令和元年「2級建築士試験」ブログ解説 ①

2019-10-18 09:07:05 | ビジネス・教育学習
◇暫くご無沙汰してしまいましたが、建築法規の令和元年試験問題解説を始めます。
◇今年6月に改正法は施行済ですが、試験は1月時点の施行法令での出題(暗黙の了解???)です。
◇従って、原則、今年(令和元年)の「2級建築士試験・建築法規」の解説を基本とします。
◇ただ、今度の試験は来年ですので、今年の6月に施行された改正法が適用になります。
◇そこで改正部分を考慮し、問題文の修正なり、解説を細かくするなりの対応を図ります。

◇なお問題文は、公益財団法人建築技術教育普及センターのH.P.をご参照ください。
◇実施された二級建築士試験の問題文と正答肢表が公開されています。

〔No.1 〕問題文の記述の誤っているものを選択する問題です。
正答 1
1.誤り。法2条八号かっこ書き:防火性能とは、周囲の火災からの延焼抑制の為に、外壁又は軒裏に必要とされる性能である。外壁だけでは
      不充分で、準防火性能(法23条で定義)は、外壁のみである。
2.正しい。令1条三号:自重、積載荷重を支える最下階の床版は「構造耐力上主要な部分」である。
3.正しい。令1条二号:床面から地盤面までのが、天井高の1/3以上のものが「地階」である。
       設問は、CH「1/2」だから、1/2>1/3なので、正しい。
4.正しい。法2条十六号:条文参照。
5.正しい。令2条1項七号:条文参照。
【解説】防火性能、準防火性能の用語の定義の問題が正答として出題されました。用語の定義と高さ・面積計算の図形問題は、交互に出題さ 
れ、両方出題されることは、過去なかったと思います。図形問題が出題されたH30、H29を除いて、用語の定義の問題では、防火性能と準防
火性能の意味を理解させる問題は、毎年出題されています。特に、今年とH28年は、正答での出題となっています。用語の定義の問題になる
か、図形問題になるか、予想は難しいですが、少なくとも、防火性能と準防火性の違いの理解が重要であることは推察できます。
 また、過去のパターンからいけば、令和2年は、用語の定義の出題傾向なのでしょうが、私は、「地盤面」を理解させる問題を予想していま
す。図形問題で問うとすれば、H30年度の木造建築士試験問題が、参考になると思っています。集団規定においても、地盤面の理解は重要事項
ですので、用語の定義を問う問題であれば、道路中心線からの高さと地盤面からの高さの違いを、文章で問いかけてくる気がしています。
 あと、6月の改正法での「延焼の恐れのある部分」の緩和条項が気にかかります。境界線等の角度がある場合と、同一敷地内の高さ15m以上
の部分の緩和条項を問いかけてくる可能性は否定できないと思っています。

〔No.2 〕全国どの場所においても、確認済証の交付を受ける必要があるものを選択する問題です。
正答 4
1.確認の必要はない。法6条1項、法88条1項(工作物準用)、令138条1項三号:4m以下の記念塔は、確認を必要としない。
2.確認の必要はない。法6条1項:100㎡以内の集会場は、一号建築物に該当する特殊建築物ではなく、木造2階建て、高さ9m以下のものは、二
 号建築物に該当する規模でもなく、四号建築物になるので、全国どこの場所でも確認が必要なわけではない。
3.確認の必要はない。法6条1項:用途的にも、規模的にも、一号~三号に該当しない、四号建築物になるので、全国どこの場所でも確認が必
 要なわけではない。
4.確認が必要。法6条1項:鉄骨造2階建ては、三号建築物に該当するので、建築も大規模修繕・模様替も、確認が必要。
5.確認の必要はない。法6条2項:防火地域、準防火地域外で10㎡以内の「増築、改築。移転」については、確認の適用が除外されているの
 で、全国どの場所においても確認が必要という訳ではない。
【解説】必ず出題されると言っても過言ではない、定番問題のパターンです。設問が、一号建築物なのか、二号建築物なのか、三号建築物なの
か、それ以外は四号建築物になることの判断です。それぞれ、用途・構造種別・面積・階数が絡みますので、以上、超える、以下、未満とい
う、境界線上の数値への注意です。過去の出題傾向から言えば、四号建築物を、一号~三号建築物らしく見せる、微妙な数値で誤答を誘ってきます。しっかり条件を把握することが大切です。
また当たり前ですが、法88条に基づく工作物の確認の有無で、必ず令138条で規制対象の数値を確認することだと思います。
 この問題で改正法に関連することは、一号建築物の規制数値が、100㎡から200㎡に変更になっていることです。例えばこの問題で言えば、肢問2で「木造2階建て、延べ面積100㎡、高さ9mの集会場の新築」とあるのが、200㎡と変更すると、旧法では確認が必要ですが、改正法では、一号建築物に該当せず、確認は不要になります。今後も、改正法での緩和条項には、充分な注意が必要です。

〔No. 3〕各設問の記述について、正しい記述の組合せを選択する問題です。
正答 1:「イとロ」の組合せが正しい。
イ.正しい。法6条9項、規則1条の3表1(い):条文と規則の表1参照。
ロ.正しい。法6条1項、令9条一号、消防法9条の2:条文参照。
ハ.誤り。法7条の3第1項、法7条の4、令11条:中間検査申請は、特定行政庁ではなく、建築主事、又は指定確認検査機関である。
ニ.誤り。法7条の2第4項:工事が完了した日、又は検査の引受けをした日のいずれか遅い日から「7日以内」でよい。
【解説】建築確認申請は、令9条で定める法令への適合義務があり、どんな法律のどんな条項への適合確認をするのかの理解が必要です。従って、令9条を法令集で確認できることが大切です。
 また、検査規定を含めて、各種手続き規定で行政の何処に出すのかの判断が大切です。肢問3では、中間検査申請の申請先の問題ですが、法15条の統計・届出規定では、都道府県知事宛という、建築基準法では異色な感じがする規定も存在します。
 あと気になるのは、検査関連規定における「日数」を問いかけてくる設問です。4日と7日の2種類しかないのですが、良く設問を読んで理解する必要があります。今回の肢問4は、H27以来の手続き日数を問う設問でした。
 中間検査、完了検査規定の手続き日数をまとめると、添付の表のようになると思います。



なお、試験問題と正答肢表については、
公益財団建築技術教育普及センターのホームページで確認してください。
◇二級建築士試験・学科Ⅲ「建築法規」問題集
https://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/2k-mondai.files/2k-mondai-r1-gakka1_2.pdf
◇二級建築士試験・学科Ⅲ「建築法規」の正答肢
https://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/2k-mondai.files/2k-r1-gakkagoukakukijun.pdf

2019年10月18日 by SHRS(シュルズ)「1級建築士、建築基準適合判定資格者」
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令和元年建築士受験講座(二級建築士試験)

2019-10-05 09:58:15 | ビジネス・教育学習
◇久しくサボっていたブログ。
◇今夕から、夜間土曜講座の授業も担当します。
◇そこで、試験問題解説ブログも、来週半ば位から再開したいと思います。
◇使い方も忘れていますので、手探りで始めます。

◇特に今年は、6月に改正法が施行されました。
◇少々、対応が難しい時期の改正で、内容も豊富です。
◇従って、ブログもサボってしまい、言い訳をしています。
◇それにまだ、法令集が発行されていないので、手間もかかります。
◇でも、今年の問題分析に加えて、法改正部分解説も加えていきます。
◇令和2年の建築士試験に備えたいと思います。

◇その前に今日は、今年(令和元年)の二級建築士・学科試験の振り返りをします。
◇まずは、私が担当した建築法規における、受験学生の成果からです。
◇25名受験して、法規は全員合格点で、平均点21点です。
◇満点1名は前年の2名より減少しましたが、24点が3名います。
◇学科全体でも25名中24名が学科合格でした。
◇学生の資質と努力の賜物です。
◇でも、講師として、チョットだけ背中を押したことも自負しています。
◇今までで一番、自慢の学生たです。



2019年10月5日 by SHRS(シュルズ)「一級建築士、建築基準適合判定資格者」
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