ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

冥加(みょうが)と冥利(みょうり)

2009-01-28 | なんとなく仏教?
『龍―RON―』
警察だか特高だかに追われた龍が 中国に旅立つ前に 
洛北・大原の尼寺にかくまってもらった時、
その菩薩さまのようなお顔の ちょっと不思議な尼さんが言う。

「風は見えないけれど、
 なびく草や枝を見て、
 私たちは
 見えない風の存在に気づきます。

 私たちの周囲(まわり)には、
 あまりに多くの
 見えないものがある
 ということです・・・。」













「あなたが今ここにいるのも、
 あなたを守ろうという人々の 
 目に見えない力が働いた結果ではありませんか?

 目に見えぬもの(冥)に
 守られている(加)ことを
 知らねばなりません・・・。

 これを“冥加の心”といいます。」




へ~。

そうなんだ。

「冥加(みょうが)」という言葉は知っていたけど、
意味なんか 考えたこともなかった。。
 


尼僧は

「自分の力ばかりを頼みにしないで
 もっと素直に
 まわりを見回してみたらどうですか?

 そうすれば 道は開けてくるもんどす。」

と 龍を諭している。(第19巻 p183)




冥加(みょうが)の「冥(みょう)」は 
暗いという意味だろうか。

冥途(めいど)の「冥(めい)」だ。

冥府(めいふ)、冥界(めいかい)の「冥」。

おそらく、漢音が「メイ」で、呉音が「ミョウ」。

呉音は日本語を面白く(つまり、面倒に)してくれるね(苦笑)。



いつもの新選国語辞典で調べると、
確かに、「冥加」は
「目に見えない神仏の助力。おかげ。おたすけ。」とある。

冥助(みょうじょ)は冥加と同じ意味。

(瞑目(めいもく)と瞑座(めいざ)は違う字。)



巻末の漢字解説によると、「冥」には

①よみじ。死後の世界。
②目に見えない神仏のはたらき。
③奥深い。

という3通りの意味がある。







ほうれん草? 雑草?(笑)






マンガを読んでいて 「冥加」という言葉の意味を
これまで知らずに居た、と気付いた。

そうしたら、今回 『にぎやかな天地』上下巻を読み返していて

(記事にする時って、もう、どうしようもないくらい、効率悪いけど、
 信じられないくらい、読み返す)

「冥利」について掛かれた部分にぶつかった。



「あいつは冥利が悪い、っちゅう言い方をするやろ?

 ぼくは若いころ、修行に行った料亭のご主人に、
 しょっちゅうそない言うて怒られた。

 よう使うことばやねんけど、
 冥利って、どういういみやと訊かれて、
 性格に説明できる人は そないおらんのや。」(上巻p265)





「冥利(みょうり)」、新選国語辞典によると、

「①それとわからぬうちに神仏があたえるめぐみ。
 ②善行の報いとして受けた幸運。
 ③ある立場にあることによって受ける恩恵。

 冥利に尽っきる:ありがたくて、もったいない。」

と書かれている。

「冥加」とおんなじじゃん?



「そやけど、どうもそれだけでは説明しきれん意味合いが
 含まれてるような気がしてなァ。
 
 しかし、あいつは冥利が悪いっちゅうと、
 なんとなく わかるような気がするんや。

 常日頃、胸に持ってる考え方が歪んでるとか、
 やってることが どこか邪(よこしま)や、とか、
 どこかにずるさや なまけ心を隠してる、とか・・・・・・。」



「そやけど、どこか冥利が悪かったなァ、
 と いまになって わかるんや。」

「つまり、どれもこれも、ふりをしてたんや。

 料理の修業に懸命なふり。

 ご主人を尊敬するふり。

 兄弟子に従順なふり。

 いやな仕事も骨身を惜しまずにするふり。

 ぼくは 他人にではなく、自分自身に向けてやっとったんや。

 ご主人はそれを見抜いてたんやなァ。」(同)







小松菜!(笑)






心に刻んでおきたい言葉は「冥加」や「冥利」ではなく、
「冥利が悪い」の方かと思う。

「身の分限をはかり 慈悲を専らとし 
 善悪につきて 心を動かさず
 天明に安んじてはたらくべし」

というおみくじの私だから、

心して過ごさなくては、と思う。