退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 7

2015-06-08 10:28:21 | 韓で遊ぶ


クリスマスの天使

毎年クリスマスに開かれる聖劇、主人公を決めるため日曜学校の先生が子供たちを礼拝堂に呼びました。
礼拝の時間に、よくい眠りをしたり、ふざけたりしていた子供たちですが、この日だけは主人公に選ばれたいのか、大人しく見えるように努力しました。
先生は子供たちを見回してヨハンが目に付くと、困ったと思いました。先生は、1年の間、日曜学校を一度も欠席しなかった子供に役をくれると約束したのですが、ヨハンも無欠席の一人でした。ヨハンに役を与えてちゃんとやりとげることができるだろうか心配だったし、だからと言って役をあげないのは、子供たちとの約束を破ることになってしまいます。
「へへへ、、、」
ヨハンは先生の苦悩を知っているのか知らないのか、明るく笑っていました。仕方なく先生はヨハンのために即席で役を作りました。台詞といえば、「ありません。」一言だけの役でした。ですが、その日からヨハンは「ありません。」を、口がすっぱくなるほどに練習しました。もしかして台詞を忘れてしまってはならないと、言葉の終わりごとに「ありません。」をくっつけたりもしました。子供たちが「アーメン」と言うと、ヨハンは「アーメンありません。」と言いました。
程なく公演が開かれるクリスマスがやってきました。綿でできた雪が降る礼拝堂の中央の舞台に、臨月のマリアとヨセフの役の子供が登場しました。長い旅で疲れた二人は人々に助けを請いました。ですが、子供たちは練習したとおり夫婦を追い出しました。
「部屋はない。」
彼らは最後にヨハンに近づいていきました。ヨセフ役の男の子がドアを叩きました。
「ご主人、ここにもしや空き部屋がありますか。」
ヨハンは、今まで一生懸命練習してきた「ありません。」という言葉だけを言えばいい状況でした。ですが、ヨハンの口から正反対の言葉が飛び出しました。
「あ、、、あります。ありますとも。」
舞台の後ろで間違っていると教えてあげても、ヨハンはずっと「あります。」とだけ繰り返しました。とうとう、ヨハンはヨセフ役の子供の腕をつかんで無理やり家の中に入れました。
「あります。入ってください。」
ヨハンの突発的な行動に観客は目頭を赤くしました。
白い雪がしんしんと降るクリスマス、その場にいた人々は天使を見ました。純粋な目と美しい心を持った小さな天使をです。
コメント
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