
傘になって下さい

釜山沙下区庁に勤務する750名の公務員全員に大きな傘がひとつずつ配達されました。
「おや、これは何だ。」
「ちょっと、ここに何か書いてあるわ。」
持つところに「体に気をつけて」と言う文句が書かれた傘をプレゼントされた人たちはきょとんとしました。しかし、すぐに誰が送ったのかを知った人たちの目には涙が浮かびました。それは、何日か前に癌で亡くなった同僚ハオンレさんが送ってくれた最後のプレゼントだったのです。
37歳という若さで亡くなった彼女は、生前誰よりも誠実で、責任感の強い国の職員でした。同僚の間でも人情が厚かった彼女が直腸癌の判定を受けたのは2004年のことでした。
彼女は生死の分かれ道で熾烈で苦しい闘病生活をしました。
「必ず元気になって復職するんだ。」
癌に打ち勝つという意思で、だんだん元気を回復した彼女は、1年ぶりに復職することができました。
「具合はどうですか。大丈夫ですか。」
「もちろんです。もう、ぴんぴんしてますよ。」
ハオンレさんが以前のように村の人々と会えるようになったのも、しばしの間、その間に癌細胞が全身に広がり、もう手の付けられない状況までなってしまったという晴天の霹靂のような診断が出ました。
いくらも残っていない命を整理しながら、まず最初に彼女は幼い二人の娘にご飯の炊き方を教えました。そして病室に横たわっている間に、同僚たちにプレゼントを準備しました。公務員という職業を天職として生きてきた彼女は、自分のやりきれなかった「奉仕」の夢を代わりに成し遂げてほしいという意味で傘をプレゼントしました。
「思いがけない病気で先立ちますが、どうか、皆さんは雨風が吹き、雪が降る日、困っている人々の傘になってくれることを切実に願います。」
人を助けようとしたならば、まず自分のように病気になってはだめだと思い、傘の持つところには「体に気をつけて」という文句を刻みました。
ハオンレさんの傘を受け取った同僚たちは心深く決心しました。
雨風を受ける傘のように、いつも世の中の波風から困っている人を守ってあげる頼もしく暖かい公務員になろうと。