退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 7

2015-06-29 10:22:17 | 韓で遊ぶ


最も価値のある別れの贈り物
春になると万物が蘇生するといいます。
ですが父は私たちの元から永遠に旅立ちました。
手術と治療を何回も繰り返している最中にも、よくがんばって耐えていた父だったので、亡くなった後の喪失感は私たち四兄妹により大きく感じられました。
初めての家族の葬式。皆が深い悲しみに浸ってどうしていいのかわからず右往左往しました。
「来てくれたのね。」
「ご愁傷様。よくがんばっていたのにね、、、力を落とさないで。」
「ええ、ありがとうございます。」
家族皆が葬式を執り行うのには不慣れでしたが、弔問客の心遣いと隣人の助けを借りて無事に終えられるようでした。
出棺を控えた夜遅く、不祝儀袋を整理していた家の男性陣が啜り泣きを始めました。姉と私は何事かと訊ねました。
「義兄さん、何かあったの。」
「あの、、それが、、これ、、」
義兄さんは涙ぐみながら封筒を差し出しました。それは一番上のお姉さんの息子である6歳のチョンヒョギが父に書いた手紙でした。
やっと字を書き始めた甥が書いた手紙なので、書き方はめちゃくちゃでしたが本当に心がこもっていました。
「おじいちゃん大好き。」
その日の夕方、甥の手紙は全家族をもう一度泣かせました。
無事に葬式を終えて、それぞれが落ち着きを取り戻してきた頃、チョンヒョクにその手紙について聞いてみました。
「チョンヒョク、お前は何でおじいさんに手紙を書いたの。」
「大人はみんな箱に手紙を入れていたじゃないか。だから僕も、おじいさんに見せようと手紙を書いたの。」
不祝儀を入れる不祝儀袋が純真無垢な甥の目には、おじいさんに送る手紙に見えたようです。自分をとてもかわいがってくれたおじいさんの最後の瞬間を一通の手紙で彩った孫。おそらく父にとっては、その手紙は世の中で一番美しく価値のある別れの贈り物だったでしょう。
コメント
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