これはラットですか?いえ、カンガルーです

2011-03-28 20:52:10 | 哺乳(Mammals)


ニオイネズミカンガルー(Hypsiprymnodon moschatus) Musky Rat-kangaroo


この原始的な形態をとどめたカンガルーは、1属1種からなる最小のカンガルーである。
ヒクイドリが去った森には、またどこからともなくヤブツカツクリやキンバトが出現し、そしてニオイネズミカンガルーも現われた。ツパイのように林床を歩いてきて落ちていた果物の欠片をリスのように両手で持って食べ始めたニオイネズミカンガルーは、私が動かなければすぐ近くまで餌を探しにやってきた。

この生き物を見た辺りから、私達の思考回路はどうにかなってしまったようだった。
街を歩く時にはこのニオイネズミカンガルーの鳴き声の予想・妄想について、果てしなく不毛でくだらない会話を続けてはただケラケラと笑っていた。



【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


心休まる場所

2011-03-17 19:24:08 | 哺乳(Mammals)


マリーバイワワラビー(Petrogala mareeba) Mareeba Rock Wallaby


オーストラリア6日目。
ここG.G.キャンプ場は、一昨日まで泊まっていたキャンプ場に比べて吸血昆虫がだいぶ少なくて過しやすい。ただし唯一、夜間にライトを点けて歩くとヌカカのような虫がチクチクと刺してくるのが気になるけれど、日本の、奄美や舳倉のヌカカに比べたらなんてことはない程度だった。
このキャンプ場のある渓谷には多数のマリーバイワワラビーが生息しているのだけれど、これがまた可愛いのなんのって。

上の奇妙な写真に説明を付け加えると、育児嚢に子どもの入った親ワラビーが背中の下方を掻くために後ろを向いているところである。決して、前脚より下がとてつもなく肥大している1頭が鎮座しているというわけではない。
この育児嚢に入った子ワラビーの幸せそうな顔ときたら。








オーストラリアチョウショウバト(Geopelia placida placida) Peaceful Dove


角の丸い大岩がごろごろ積み上がった渓谷沿いを歩いていたら、あっと言う間に友人とはぐれてしまった。
岩の間に点々とある乾燥した林には鳥が多くて、相変わらず黄金なキイロミツスイやトサカハゲミツスイよりもさらに頭部の羽が無いズグロハゲミツスイ、小さなサメイロミツスイ、それからパプアオオサンショウクイなどが見られた。
渓谷を通る渓流にはノドジロハチマキミツスイの幼鳥が水浴びに来ていて、3羽で順番に並んでいた。








アカオクロオウム(Calyptorhynchus banksii banksii) Red-tailed Black-Cockatoo


見晴らしの良い岩場に差し掛かった時。
アカオクロオウムが6羽、音も無く滑空してきて、1本孤立した木に次々にとまった。
この黒くて巨大な体に尾羽の一部が赤、という何だかどこかのステルス爆撃機みたいな無気味さを帯びたアカオクロオウムはしばらく休むと、また音も無く6羽で飛び立っていった。

またひとつ大岩を超えた場所に生えていた木には、キボシホウセキドリの腰が黄色い亜種 P.s.uropygialis が1羽いたり、黒地に白ドットの翼でお洒落なカノコスズメがいたりした。







Granite Gorge


【2010/03/08/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


カンガルー広場

2011-03-07 18:55:44 | 哺乳(Mammals)


オオカンガルー(Macropus giganteus) Eastern grey Kangaroo

オーストラリア5日目。
朝からキャンプ場を抜け出して、私達は昨日訪れた人工平原へと向った。
朝のため鳥が多くて、駐車場の何てことは無い植え込みからも騒がしい鳥の声がした。
しばらく待っていると、植え込みの良く茂った場所から全身が黄色の綺麗なキイロミツスイが顔を出した。また続けざまに小さなサメイロミツスイと、大きなアオツラミツスイも出てきた。

平原を見回すと、お目当ての生き物はすぐに見つかった。
100mほど離れた場所に集まったその動物は、その大きさ故に肉眼でも間違えようも無く分かる。
今日こそいた、オオカンガルー!

スナイロワラビーの感覚だとすぐに逃げて行ってしまうのだろうか、という私の心配はすぐに払拭された。4ツ脚着いて採餌していたオオカンガルーたちは、私達の接近に気が付くと2足で上身を起こして立ち上がり、警戒の体勢をとるものの、そのうち警戒するのにも飽きてきて上の写真みたいな表情になる。
そうして私達が割りと無害だと考えてくれたオオカンガルー達は、私と目が合うと少し逃げる素振りをするものの、それだけだった。

動物園の檻の中にいるようなものではない、正真正銘の野生のカンガルー。それなのにこの距離感。
何か不思議な感じがした。
鳥もだけれど、オーストラリアの哺乳類はこうやって近くに居てくれるからとても嬉しい。





こちらは雄。雌と比べてみると、大きさもさることながら腕の筋肉の付き方が全然違うのがお分かりいただけるだろうか。



“昨今の豪州経済は・・・と。” 
テレビを見るお父さんのポーズ!





こんな油断した表情をされると、顔が緩んでしまう。耳はちゃんと警戒中。



Redy...  “やんのかー!?”


Fight!


【2010/03/07/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


暗闇の舞台と夜行生物

2011-02-12 17:23:34 | 哺乳(Mammals)


ワライカワセミ(Dacelo novaeguineae) Laughing Kookaburra


ワライカワセミと思う存分遊んでいたら、いつの間にかもう写真が撮れないほど真っ暗になっていた。夏休み中の子どもが時間を忘れて遊び、気が付かないうちに日が暮れてしまうような感覚だ。

夜。
そうでなくても歩こうと思っていたので、キャンプ場のオーナーからナイトハイクをしないかと言われた時には是非、と二つ返事で答えた。




ハナナガバンディクート(Perameles nasuta) Long-nosed Bandicoot



黒い森の茂みでガサガサと音がしたと思えば、ハナナガバンディクートが林床を歩いていた。私達の気配に気が付いた鈍くさいハナナガバンディクートは、ぴょんと残念な跳躍力で跳ねて闇に消えた。
先程ワライカワセミと遊んだ開けた果樹園のあたりには、灰色味の強いシモフリバンディクートもいた。霜降りだなんて、なにやら高級食用肉になりそうな名前をしているものだ。




メンフクロウ(Tyto alba delicatula) Barn Owl


背の高い樹の、上の方にある洞には、世にも可愛らしいメンフクロウがすっぽり収まっていた。メンフクロウはその美白顔でくるくる首を動かして辺りを伺っている。

私達の接近に驚いてか、樹冠に枯れ草で作られた塒に寄り集まったオナガテリカラスモドキが騒ぎ出し、黒いテリオウチュウが2羽ひらりと飛んだ。また、立ち枯れた古い木には小さなオーストラリアズクヨタカもいる。
遠くではアオバネワライカワセミが怪しい声で夜鳴きしていた。

車中泊をするにあたり、車の窓を開ければ私達が蚊の豪華ディナーになるし、窓を閉めればサウナ地獄になってしまう。どうしたもかと悩んでいると、KFPキャンプ場の優しいオーナーが「蚊帳」を貸してくれた。とてもありがたい。
この蚊帳と、蚊取り線香を駆使することで、一度も蚊に刺されずに熟睡することが出来た。何より嬉しかったのは、飢えた吸血鬼達の嫌な羽音を聞かずに済んだことである。

※オーストラリアでは、決められた場所以外での車中泊は違法であり、5万円相当の罰金が科せられるので注意が必要です。



【2010/03/03/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】


そのサル、凶暴につき

2010-09-14 23:54:43 | 哺乳(Mammals)

カニクイザル(Macaca fascicularis) Crab-Eating Macaque

観光客が訪れる売店や、リゾートホテルの前には決まってカニクイザルがたむろしていた。観光客から与えられる餌や、施設から出た食品のゴミを狙っているのだ。
しかし、この滝の売店付近に集まるカニクイザルの集団は他の場所の集団とはひと味違った。
見ていると、食べ物を持っている人間の子どもから無理やりおやつを奪い取って子どもを泣かせていたり、挙句の果てには売店に侵入して店の売り物を強奪していく個体まで。すると怒り狂った売店の女性店員は、Y字のパチンコを持ち出してきて怒鳴り散らしながらカニクイザルに向ってストーン・シュートを繰り出していた。
そんな一部始終を横に、カニクイザルにカメラを向ける私は、食べ物など持ち合わせていないため少しも攻撃などされずに済んだ。



“眠いねぇ”




ボスザルの風格。



目の前で犬歯むき出しな大あくびをされると、さすがに少し身構えてしまう。


2010/08/04/マレーシア Langkawi,Malaysia