遮蔽物が好き

2011-06-30 23:33:50 | 鳥(Birds)


キマユホオジロ(Emberiza chrysophrys) Yellow-browed Bunting



飛島2日目。
この島には、小物入れ神社だかコモドオオ神社だか名前は忘れたけれどおおよそそんな感じの名前の神社へと続く道があって、この暗い道が私は大好きだった。
朝、夜明け間もなくにここの観光用自転車を走らせていた私は、この道の農免道路のすぐ横まで出てきていたミゾゴイを、危うく轢きそうになってしまった。私がトイレに急いでいたことと、自転車のブレーキの利きがすこぶる悪かったことが不運だった。ズグロミゾゴイみたいに警戒心があまり無いと予想していたミゾゴイだけれど、やはりというかあっけなく飛んでいってしまった。
「ヒュルルル...」という頼りないシマゴマの声を聞きながら歩いていると、マミジロキビタキ雄の第1回夏羽がいた。マミジロキビタキを見るのも今年5個体目となると、「あ、マミキビだ」くらいの反応しかしなくなる。どうやらもう何か感覚が狂ってきたみたいである。

道路に面した畑には亜麻色をしたアマサギが何羽もいて、その歩く様をぼんやりと見ていると、すぐ足元から気配がすることに気が付いた。
畑のウネにかろうじて少し見え隠れするその小鳥は、なんと2羽のキマユホオジロだった!とても小柄なキマユホオジロは、コハコベやオオイヌノフグリ、スズメノカタビラほどの草丈でさえほぼ全身が隠れてしまうから、観察するのも一苦労。けれど逆に、丈が低くても草むらにさえ入っていれば安心するらしく、餌を探しながら今までに無いぐらい近くまでやって来た。







【2011/05/17/山形 Tobishima Island,Japan/May.2011】


Chestnut色に胸を焦がして

2011-06-27 06:00:06 | 鳥(Birds)


シマノジコ(Emberiza rutila) Chestnut Bunting


この島で鳥を効率よく見るには、草刈直後の草むらをいかに素早く見つけるかに懸かっている。
刈られた草から落ちる種子はホオジロ類の良い食物になり、草の中に潜んでいた蟲はヒタキやツグミの食物になるのだ。
黄昏時。私が草の刈られた一角で座り込み待っていると、次々に鳥がやってきた。
まず最初にやってきたのは1羽のコホオアカだった。これを皮切りに警戒が解けたのか、茂みに潜んでいた鳥もゆっくりと出て来始めた。次にやってきたのは2羽のシベリアアオジだった。
さらに混群でこの草むらに採餌しに来たのは、エゾビタキとコサメビタキ、ムギマキ雄成鳥、それからなんとマミジロキビタキの雌だったのだ。マミジロキビタキは雌の腰も英名通りに鮮やかな黄色をしている。
ヒタキの群れに気を取られて気付くのが遅れた。最後にいつのまにか地面に出てきていたのは、他でもない、2羽のシマノジコの雄成鳥だったのだ!
シマノジコのあまりにも鮮やかな赤茶色は、もう日が落ちてかなり薄暗くなった景色の中でも一際鮮やかで、腹の黄色との組み合わせが実に素晴らしい。そして何よりこの鳥は、私からたったの6mくらいの場所で種子を食べているではないか。
やがて食事に満足して彼らが藪の中に入っていく頃には、私の心も、そして脚もビリビリに痺れていた。

この日は最後に、もう1つだけ素敵なことがあった。
薄暗くて写真など到底撮れないほどの暗さになった頃。
目の前の藪から藪に、茶色い鳥が飛び移り、すぐに藪に入っていった。肉眼でその影だけを見た私は初め、ムジセッカかと思った。今年はよく見るなぁと思いながらその鳥が飛び移った藪に近付いた私の耳には、思いもよらぬ地鳴きが飛び込んで来た。
「テュッ」
口の中で空気が爆発するように、それでいてウィスパーヴォイスでこいつと同じ発音すると、人でもこれに近い音が出る。
私は思わず、その藪の方向を2度見した。さらに注意深く藪に近付いた私が息を潜めていると、その鳥が藪の表に出てきた。ムジセッカに比べてずいぶん動きがゆっくりで、あまり連続して鳴かない。しかしこれはただ疲労しているだけかもしれない。双眼鏡で追いかけると、何度も上げる尾の裏側に見える下尾筒が黄色味を帯びていた。そして、ムジセッカよりももっさりして可愛らしい顔をしているではないか。この鳥は、他にもいくつもの識別点を確認できるほどにゆっくりと、私のすぐ足元で動いてくれた。
ほほう!これはまさにカラフトムジセッカだ。
これは私にとって、初見の1種だった。

1泊だけする宿への帰り道に、かろうじて道が見えるぐらいの暗さになった頃、ツツドリぐらいの大きさのトケンが目の前を飛んで横切っていった。



【2011/05/16/山形 Tobishima Island,Japan/May.2011】


いつかネパールで逢う日まで

2011-06-26 20:56:24 | 鳥(Birds)


オオルリ(Cyanoptila cyanomelana cyanomelana) Blue-and-white Flycatcher


何故か私は今度、飛島に来た。
衝動的だったのだ。話を聞いてからというもの、頭の中はルリビタイジョウビタキでいっぱいになり、そして次の瞬間には飛島に私はいた。
フェリーが着岸した途端、私はタイワンツチイナゴみたいに勢い良く船から飛び出して、わき目も降らずに丘を登った。
血走った目をした私は、誰よりも早く見つけてやろうとあたりをつけたいくつかのポイントを見て回った。けれど、ルリビタイジョウビタキは一向に見当たらない。
なーに、焦る事はないさ。きっと時間帯が悪いのだ。夕方になればきっと姿を見せるに違いない。そう思った私の頭の隅には、考えたくもないビジョンが何度も浮かんでくるのだった。
そうしてやがて、嫌な予感は現実になった。どうしたって見つからないのだ。私以外にもこの日に島に突っ込んだ人は誰一人として見ていないという...。
あんまりだ。
私は地面にへなりと力なく崩れ落ち、苦悶の表情で天を仰いだ。
私って、ほんとバカ。

気を取り直すことはもはや不可能ながら、心の傷を少しでも癒すには鳥を見る他はない。
そう思う私の前を、青い背面をした影が横切った。違うことなどすぐに分かったけれど、青いというだけで反射的に背中がゾワワとなった。オオルリだ。







【2011/05/16/山形 Tobishima Island,Japan/May.2011】


May,2011 Hegura Is.Japan

2011-06-22 18:30:12 | 遠征(Expedition)

2011年5月 舳倉島 まとめ ※リンクをクリックすると記事に移動します


【01】 花咲く丘の上に
【02】 灰羽鳥は暗藪に潜む
【03】 グレイ・ウォールに根を張る水仙
【04】 Lapis lazuli
【05】 未来予知
【06】 紅一点
【07】 黒巌に躍る鮮黄色
【08】 いたんぽに黒頭巾
【09】 桜と山椒
【10】 Ah, actually. I get turned on by a Emberiza.
【11】 イエロー・ブライト
【12】 暖かな小路に加密列は咲く
【13】 島嶼的な鳥たち
【14】 音無の神社で
【15】 エンドレスイーティング
【16】 ほんのり茜色ツバメ
【17】 もうすぐ船が出る時間―。




















もうすぐ船が出る時間―。

2011-06-21 21:07:56 | 鳥(Birds)


コホオアカ(Emberiza pusilla) Little Bunting


島を出発する直前。私は最後に、海側に広がる荒野を歩いてみることにした。
ここにはいつもホオジロの仲間やフィンチが多く潜んでいて楽しい。
草むらから最初に飛び出してきたのは、コホオアカだった。すると今度はノジコが草むらから突き出た枯れ枝にとまって辺りを見回した。
遠くの草むらでは猫が急に飛び上がり、雪上でネズミを狩るホンドギツネと全く同じ軌道を描いて草むらにダイブした。後でその場所を覗いてみると、アオジの羽が散乱していた。




マヒワ(Carduelis spinus) Eurasian Siskin


複雑で耳に残る鳴き方をしながら群れで移動して、種子の残った草から草に移りながら採餌していたのはマヒワだった。群れの雄の中には、目の覚めるような本当に鮮やかな黄色をしたものもいて、見かける度に思わず立ち止まって見た。
コホオアカに入れ替わって出てきたこの個体は、その群れとは全く離れて1羽だけで行動していた。




シロハラホオジロ(Emberiza tristrami) Tristram's Bunting


今回、島にはたった3日間しか居なかったけれど、それなりに楽しめたと思う。
2年前に来た時はハマウドにアカスジカメムシが沢山とまっていたから、今回はついでに写真を撮ってやろうと考えていたけれど、少しも見なかった。これについてはそもそも、大して探してすらいなかったのだけれど。
それからヘグラマイマイを見る事も次回来た時の課題になった。これは雨が降っている日にでも探してみようと思う。また、包丁とまな板と醤油まで持って行きながら釣具を忘れた私は今回釣りが出来なかった。2年前に来た時は夜に尺メバルが面白いほど釣れたから、胸鰭の条数を数えるという赤・黒・白メバル間の識別も合わせてこれも次回来た時の課題になった。
最後の最後に宿で勘定をする際、既に全食抜きという格安の値段で泊めてもらっている私に対して、「アタシ若いコには弱いのよ」と宿の女将さんがさらに宿泊料金を割り引いてくれた。なんとありがたいことだろう。
いつか絶対にまた来よう!そう胸に誓って空を見上げる私の瞳には、自由に飛ぶコシアカツバメが映った。







【2011/05/04/石川 Hegura Island,Japan/May.2011】