ノドグロモズガラス(Cracticus nigrogularis nigrogularis) Pied Butcherbird
ここ2日間は沿岸のユースホステルに宿泊していたのだけれど、カメラのバッテリーを充電しようと思ったら充電器が無いことに気が付いた。しまった、うっかり内陸の町マリーバ(Mareeba)のキャンプ場に置き忘れてきてしまったのだ。
そして私達は、これを回収するためにまたマリーバへと向かった。
―やっとのことでキャンプ場に着くと、充電器は無事に見つかった。
それよりも、朝はカンカン照りだった空が分厚い雲に覆われて日差しが和らいだことで、多くの鳥達が出現し始めたことに気付く。
まずは、また岩場にマリーバイワワラビーを見に行く私達。
ノドグロモズガラスはお気に入りの枝から辺りを見回して、たまに獲物を見つけては地面に舞い降りていた。
オオニワシドリ(Chlamydera nuchalis orientalis) Great Bowerbird
地面に座って翼を広げて日光浴をしていたオオニワシドリは、空が曇り出すと立ち上がった。
また巨大なキジバンケンは、野犬とトカゲを足して2で割ったような禍々しい姿をしていて、目立つ倒木の上にとまってはしきりに吼えていた。
ズグロハゲミツスイ(Philemon corniculatus corniculatus) Noisy Friarbird
スキンヘッドに、長くて白いあごひげを蓄えたズグロハゲミツスイは、修道士(Friar)という名前がとても良く似合う。
このズグロハゲミツスイはワライカワセミみたいな大きな声で鳴いては、巣材集めに忙しい様子だった。
するとズグロハゲミツスイにつられてか、すぐ近くにいたワライカワセミも鳴き出した。
ライチョウバト(Geophaps scripta peninsulae) Squatter Pigeon
私の存在に気が付いて、走り出した丸っこいハトがいた。
このライチョウバトの走りときたらとてつもなく速くて、例えば急いでいるキジバトの5倍速ぐらいの速さで走る。私の目の端に映るともう走り出していてすぐに視界から消え去ってしまうから、到底近づけそうも無いと思った。
ところが、羽づくろい中の個体は案外無防備で、少しの間観察を許してくれたのだった。
ライチョウバトはこの写真は羽づくろいの最中で羽毛が逆立っているけれど、そうでなくても丸々としてライチョウのような体型をしている。
Graphic Flutterer(Rhyothemis graphiptera)
ホオアオサメクサインコ(Platycercus adscitus adscitus) Pale-headed Rosella
ホオアオサメクサインコが遊んでいるのを見ていたら、突然の雨が降り出した。
慌てて車に戻ると、アオツラミツスイの幼鳥とオオニワシドリが仲良く東屋(オオニワシドリの作る東屋ではない)の軒下に入って雨をしのいでいた。
そろそろこのキャンプ場ともお別れだ。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
マリーバイワワラビー(Petrogala mareeba) Mareeba Rock Wallaby
ここのマリーバイワワラビーは結構な希少種で、そのためか何代も前から人間に餌付けされていて、食物の結構な割合を観光客などの人間に頼っているようだ。
それで私達がこの岩場にやってくると、ワラビーがとてちてと近づいてきて「ごはんくれんのかなー?」とこちらの様子を愛らしく伺うわけである。
けれど、それも一瞬のもてはやしで、しばらくして私達がはなから食物を持ってないことに気が付いたワラビー達はそっけなく徐々に散っていってしまうので、少し寂しくなった。
ここで、友人が最高の策を思い付いた。
まずポケットから何かを取り出す風に手をグーにして出し、遠くに居るワラビー達の目線の先にチラチラと見せ付けるのだ。するとこのしぐさに気付いた勘のいいワラビーが脱兎のごとく駆け寄ってきて、さらにそのワラビーの突発的な行動に状況を察した複数のワラビー達も次々に集まってくるのだ。まるで離島において、妙に焦った様子で歩いている人を見ると何か珍鳥が出たのではないかと気になってしまい、中にはその人の後を着いて行く人が現われるという現象みたいだ。
これで一気にワラビー達にモテ出したら、次にその状況をゆっくり堪能する。
しばらくして、ワラビー達に「そんなことよりごはんは?」と言われているような気がしてならなくなってきたら、「じゃぁお待ちかねの」と言ってグーにした手をワラビーの目の前に差し出す。するとワラビー達は目を爛々と輝かせながら私の手を見つめ出すのだ。
そして次の瞬間、ひと思いに手を開いて餌どころか何も無い手のひらを見せ、こう言い放つ。
「ないよぉ(笑)」
それを見たワラビー達の残念そうな顔ときたらない。まさにションボリした顔文字が合い相応しいような表情をするものだから、それがもうかっわいくて可愛くてたまらなくなった。
―こんなことを書くと、大半の方にはケシカランと怒られるかもしれませんが、人間だもの、可愛いから困らせたくなってしまうことって、あります。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
ニオイネズミカンガルー(Hypsiprymnodon moschatus) Musky Rat-kangaroo
この原始的な形態をとどめたカンガルーは、1属1種からなる最小のカンガルーである。
ヒクイドリが去った森には、またどこからともなくヤブツカツクリやキンバトが出現し、そしてニオイネズミカンガルーも現われた。ツパイのように林床を歩いてきて落ちていた果物の欠片をリスのように両手で持って食べ始めたニオイネズミカンガルーは、私が動かなければすぐ近くまで餌を探しにやってきた。
この生き物を見た辺りから、私達の思考回路はどうにかなってしまったようだった。
街を歩く時にはこのニオイネズミカンガルーの鳴き声の予想・妄想について、果てしなく不毛でくだらない会話を続けてはただケラケラと笑っていた。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
ヒクイドリ(Casuarius casuarius johnsonii) Southern Cassowary
オーストラリア8日目。
毎日、鳥を見るため駆けずり回っていた私にも、そろそろ疲れが見えてきた。おかげで朝からまぶたの重い私は、熱帯雨林の真っ只中で1人座ったまま、うつらうつらと居眠りを始めてしまった。今日はあの目覚ましになりそうなくらい大声で鳴くコウロコフウチョウがまだ来ていないせいもあったのだろう。
辺りには友人はおろか誰も居ない。
―どのくらいの間、眠ってしまったのだろうか。
「カチッ、カチッ」という不思議な音に気が付いて目を開けた私は、思わず絶句した。
何ということだろう....!巨大な野生のヒクイドリが、私からほんの1メートルの距離に佇み、私の顔をしげしげと覗き込んでいるではないか!
私はこの時、鳥に対して初めて恐怖心というものを抱いた。もしヒクイドリの機嫌が悪かったり、怒らせたりしたならば恐竜並みの破壊力を秘めた蹴りを喰らって、私はたちどころにただの肉塊になってしまうだろう。
カメラを構えることすら失礼に値すると思った私は、しばらく無言で座ったまま動かずに、ヒクイドリと見つめ合った。
「カチッ、カチッ」という音は、ヒクイドリが嘴を打ち鳴らす音で、この間にも何度も発している。
初めは畏怖の念を覚えていた私であったけれど、ヒクイドリの心なしか優しい表情に、恐怖心はそのうちヒクイドリというとんでもない生き物にとんでもない近さで遭遇したのだという感動に徐々に変わっていった。そして私はなけなしの勇気を振り絞って静かに立ち上がり、闇夜に霜が降りるが如く静かにシャッターを切った。
しばらくして“人間観察”を終えた慈悲深いヒクイドリは、ゆっくりと、そして堂々と、熱帯雨林の森の中へ帰っていった。
それを見届けた私は、腰が抜けたかのようにまたその場にへたりと座り込んだ。色んな感情が混ざりに混ざって、まだ全く体の震えが止まらない....!こんなに素晴らしい出逢いは、決して一生忘れることは無いだろう。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
オーストラリアイシチドリ(Burhinus magnirostris) Australian Stone-Curlew
所変わって、ここはまたヨーキーズノブ(Yorkeys Knob)。
先ほどの森からの移動中にシロガシラトビが格好良く飛翔しているのを見た。
ツチスドリ、インドハッカ、オーストラリアチョウショウバト、モリジョウビン、ヨコフリオウギビタキ、オーストラリアツバメそして例のアオマメガンの雄と懐かしい顔ぶれを一通り見た後に、何羽ものオーストラリアイシチドリが日陰で休んでいるのを見つけた。
このオーストラリアイシチドリはやる気の無い時は目を通常の半分ぐらいしか開いておらず、いわゆるひとつのジト目状態になっていて可愛らしい。また、明るい淡褐色をした小さなウロコミツスイは絶賛子育て中で、小さな釣り巣に何度も出入りしていた。
ホロホロチョウ(Numida meleagris meleagris) Helmet Guineafowl
せっかく私達がオーストラリアイシチドリに警戒されないようにとソロリソロリと歩いているというのに、この何処からとも無く現われたホロホロチョウときたら、いきなりけたたましく警戒音を発し出した。
オーストラリアでは篭脱けのこのホロホロチョウは、私達とは一定の距離を保ちつつ目立つ場所に出てきて激しく鳴き続けるものだから、日陰に腰を落ち着けて休んでいたオーストラリアイシチドリ達も“何事か!?”と一斉に立ち上がってしまった。
それからというもの、ホロホロ鳥は私達の間では「イシチドリの警報機」と呼ばれることとなった。
オーストラリアヘビウ(Anhinga novaehollandiae novaehollandiae) Australian Darter
このオーストラリアへビウは意外にも人の目を気にしているようで、歩みを止めてチラッと目線をやると、10m以上離れていてもすぐにヌルッと水中に入っていってしまう個体がいる。
水面を泳いでいる姿はまたこれが面白くて、例えばカワウなら背中は出ているけれど、へビウは頸から上だけを水上に出して泳ぐのである。そう、まるで水団の術を使う忍者のように。
ちなみにこの写真の個体については、目線を決して合わせないように「すーん」とさりげなく撮影した。
マミジロクイナ(Poliolimnas cinereus leucophrys) White-browed Crake
睡蓮の茂る池にはマミジロクイナがいた。
葉の上の出てきたこのマミジロクイナは私達の存在に気が付くとしばらく固まった後、慌てて抽水植物の茎の茂る中に駆け込んだ。
日本の亜種 P.c.brevipes は残念なことにもう見たくても見られない。
パプアトラシャク(Dysphania numana)
夜、光に集まってきたパプアトラシャク。
【2010/03/09/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】