オナガダルマインコ(Psittacula longicauda longicauda) Long-tailed Parakeet
いよいよ日没の近付いたタンジュン・アル・ビーチ。
公園の中心部にある一番大きな樹を良く見ていると、入れ替わりで様々な鳥がとまるのがわかった。
ミカドバト、ブッポウソウ、モリツバメ、ナンヨウショウビン、コオオハナインコモドキがとまった後には、気付けばいつ入れ替わったのか見慣れない1羽がとまっていた。木の節をかじっているその鳥は予想していなかった1種なので驚いた。コオオハナインコモドキよりもずっとスリムなオナガダルマインコだ。
チョウショウバト(Geopelia striata) Zebra Dove
チョウショウバト、コアオバト、カノコバト、ハッカチョウ、メグロヒヨドリ、そしてコサメビタキを見た頃には、気付けば辺りはもう肉眼では鳥が見られないほどの暗さになっていた。
海に沈む夕日を見て、ランカウイ島のタンジュン・ルー岬の夕日を思い出した。
Tanjung aru Beach
タンジュン・アルのレストランでラムのステーキを頬張った後、近所のスーパーに寄って果実のドゥク(和名はリュウガン)と100plus、ミロを買い込んでからホテルへ戻った。
食べても食べても一向に減る気配の無い無限の果実ドゥクをつまみながらフィールドノートを書き連ね、ボルネオ初日の夜は更けていった。
【Kota Kinabaru, Borneo(ボルネオ), Malaysia/29th Dec, 2012】
コオオハナインコモドキ(Tanygnathus lucionensis salvadorii) Blue-naped Parrot
リカスを離れ、ここタンジュン・アル・ビーチへ着いた頃にはもう16:20をまわっていた。
しかし私は素晴らしい辺りの光景に、タクシーが停まる前から大興奮だった。
このビーチ沿いにある公園は開けた芝生地帯に巨木が点々と並ぶ開けた環境で、海側にはマツやヤナギが茂り、陸側にはシグナル・ヒルにかけて森が比較的多い。
朝夕にはこのシグナルヒルから採餌に来た森林棲の鳥と、もともと居る市街地の鳥、海岸林棲の鳥が混ざって賑やかになるという仕組みになっている。
タクシーを降りて1歩踏み出した時には既に、視界には5種ほどの鳥が入っていた。
まずはこのビーチ名物のインコ、コオオハナインコモドキだ。タクシーの中からでも飛翔形ですぐにわかったこの鳥は嬉しい初見の1種。回りくどい和名で、小さいのか大きいのか、インコなのかそうでないのか何が言いたいのかつかみどころが無い。
辺りを相当数が飛び回っていて、上空を通過する際にいかにもインコらしい鳴き声が聞こえた。
枝を歩く動作がまたインコらしくて良い。
ここタンジュンアル・ビーチには海沿いにレストランや露店が立ち並び、店の辺りは観光客で1日中賑わう。
日没が迫る中、一旦私はレストランに立ち寄った。鳥熱と熱帯の暑さででオーバーヒートしそうな頭と体を冷えたマンゴージュースでクールダウンするためだ。
ブッポウソウ(Eurystomus orientalis orientalis) Dollarbird
背の高い立ち枯れの木などあれば、何かしらの鳥がとまっていることが多い。
この国で、このようなシチュエーションで一番パーチしていそうな鳥は、やはりブッポウソウ。
相変わらず立ち枯れの木が似合う。
モリツバメ(Artamus leucorynchus leucorynchus) White-breasted Woodswallow
可愛いモリツバメは1羽が枝にとまると、仲間が「わーい」と飛んできて同じ枝にとまり寄り添う。
するとそれを見た別の数羽がまた集まり寄り添い、10羽以上がもっふりと団子になった時もあった。
そのまま塒入りするのかと思ったら、1羽、また1羽と飛び立ち、せっかく寄り集まっていた枝が閑散としてしまった。
【Kota Kinabaru, Borneo(ボルネオ), Malaysia/29th Dec, 2012】
ムラサキサギ(Ardea purpurea manilensis) Purple Heron
2012年の年末。私は1人でボルネオ島に降り立った。
実は、単独で海外に行くというのは今回が初めてだった。学生の時は休暇の重なる友人を誘えばふたつ返事でOKだったのだが、今となってはそう簡単にはいかない。計画段階では何人かで話を進めていたのだけれど、日程や予算が合わずに結局最後は1人きりになってしまったのだ。
けれど実際に飛行機に乗り込んでみれば不思議と不安はなく、熱帯の鳥達にこれから会いに行くのだ!という期待で私の目は爛々と輝いていた。
今回は羽田発のシンガポール航空で、シンガポールでの乗換えを経てコタキナバル空港へ到着するルート。
シンガポールでの乗り換えの際。ウイング間を移動するモノレールの中から、空港敷地内の芝生を歩く10羽程度のジャワハッカを見つけた。日本を出た時点でもう鳥見は始まっているのだ。
初日は国内線の乗り継ぎの関係で、終日コタキナバル市内で時間を潰す必要がある。
コタキナバルのホテルに荷物を置いたら、早速カンカン照りの外へ繰り出した。
はじめの目的地は、リカスにあるKota Kinabalu Wetlands。ここは広大な干潟にマングローブがぎっしり茂る湿地で、マングローブ林の中にはボードウォークが走っている。
Kota Kinabalu Wetlands, Entrance
タクシーの運ちゃんに手を振り、意気揚々と湿地の入り口に臨む私。
しかし今は午後1時、鳥の気配は少ない。
入り口のところで小さなアカガオサイホウチョウを見かけたくらいで静かなボードウォーク。
1度だけ木道の下から深いブルーのルリカワセミが飛び出して、マングローブの奥に姿を消した。
木道の最奥部にはバードハイドがあって開けた環境を見回せるようになっていた。
バードハイドの丁度対面に茂る背の高いシダの林がムラサキサギのねぐらになっているみたいで、時折仲間同士場所の取り合いになっては飛び立つのが見え隠れする。
ハイドの足元ではコサギがうろうろしていて、ミズオオトカゲがその間をするりと通り抜けて行くのが見えたり、たまにけたたましく鳴きながらナンヨウショウビンが飛んで行くのが見えたりと、何とも眠くなる光景だった。
日が傾き始め、ボードウォークを戻りだした頃から少しだけ鳥の気配が多くなってきた。
ムナオビオウギビタキやキバラタイヨウチョウが林縁に現われ、ナンヨウショウビンが採餌をしはじめた。
カノコバト(Streptopelia chinensis tigrina) Spotted Dove
湿地入り口の事務所まで戻ってくると、カノコバト、シキチョウ、アカメチャイロヒヨ、シロハラクイナなど先ほどまでは姿が見えなかった面々が出てきているではないか。
木が茂りすぎて開けた場所が少なく、少々鳥が見づらいこの場所で夕方を迎えるよりは別の場所へ移動した方が面白いかもしれないと考えた私は、思い切ってタクシーを呼んだ。時刻は16時、日没まであと1時間半もない。
【Kota Kinabaru, Borneo(ボルネオ), Malaysia/29th Dec, 2012】
ズアオヤイロチョウ(Pitta baudii) Blue-headed Pitta
2013年、元日。例年の私ならば実家へ戻り伊豆沼にでも行こうかと考えているところだが、今年はジワジワと暑い原始の森のど真ん中で新年を迎えた。
ここはマレーシア、ボルネオ島の中央部東の熱帯雨林。今朝は、ここ数日には珍しく雨が降っていない。
キビタイヒヨドリの声をBGMに暗い森へと踏み入ると、タチの悪い吸血昆虫ヌカカが腕じゅうにまとわりついてきた。しかし長袖を着込むと暑くて頭がくらくらしてくるため、仕方なくヌカカに献血してやりながら歩いた。
トレイルを歩いてしばらくすると、十数メートル先から美しく、それでいて少し哀しげにも聞こえる特徴的な声がした。もちろん聞いた途端すぐにビビッときた。ズアオヤイロチョウの声だ。
こいつの声なら私でも真似できる。私が口笛で声を返してやること数秒後....「フィユゥ~」とリアクションがあった!
距離を測りながら、足音を立てずにそっと歩く。相手の声が相当近くに感じる場所まで踏み込み、姿勢を低くして待つ。
「フィユゥ~」.....「フィユゥ~」.....
私とこの鳥の会話が何度か続いた後、真っ暗な林内で何か動いたと思った次の瞬間、鮮烈な空色と高級絨毯のような赤色を併せ持つ、ズアオヤイロチョウのオスが姿を現した。
―2012年年末~2013年年始にかけて、マレーシアに行ってきました。
リストもフィールドノートに書きなぐったままExceにしておらず、写真も未整理。帰国した後は冬鳥を見ていたらもう春になってしまいました。これから少しずつ整理していく予定です。
それではボルネオ編、始まります。
【Danum Valley, Borneo(ボルネオ), Malaysia/1st Jan, 2013】