2010年3月 オーストラリア,ケアンズ まとめ ※リンクをクリックすると記事に移動します
【1】 オモイデノ・カケラ
【2】 木陰に橙の影
【3】 ユーカリ林の宝石
【4】 灼熱の昼下がり
【5】 クカバラのディナー
【6】 モスキート・シュトゥルム
【7】 暗闇の舞台と夜行生物
【8】 紺碧の妖精
【9】 鳥の翅を持つ昂羽
【10】 火を喰らう恐竜
【11】 燃える空
【12】 蛙の晩餐会
【13】 光溢れる楽園の朝
【14】 林床スポットライト
【15】 真昼の森
【16】 The Rainbowfish Stream
【17】 秘密の隠れ家
【18】 トレードマークは赤フード
【19】 バスタードの舞踏会
【20】 日課
【21】 Silent Noisy-Pitta
【22】 深緑に竜が潜む
【23】 日陰が大好き
【24】 荒野を往く
【25】 野に咲く桃色の花
【26】 カンガルー広場
【27】 湿原入口の番人
【28】 ジェイドパーチの池
【29】 The Curtain Fig Tree
【30】 手乗りドラゴン
【31】 心休まる場所
【32】 趣味は昼寝。
【33】 蝶舞う湖の畔
【34】 暗林に輝くエメラルドの翼
【35】 イシチドリのサイレン
【36】 慈悲深き“Theropoda”
【37】 これはラットですか?いえ、カンガルーです
【38】 “かわいい”はやっぱり正義
【39】 忘れ物を探しに
【40】 黒鳥の湖
【41】 天上の島のノディ
【42】 銀色の眼差し
【43】 あくびシンパシー
【44】 飛狐の舞う街
【45】 蓮をかけるトサレン
【46】 スズメと雨宿り
【47】 カニの上手な食べ方
【48】 インペリアルの名のもとに
【49】 泣きっ面にハチクイ
【50】 わらいきのこ
【51】 空に架かる五色の虹
【52】 タイドランド・クライマックス
【53】 日没後のフィナーレ
【54】 最後の日に
オオソリハシシギ(Limosa lapponica baueri) Bar-tailed Godwit
オーストラリア13日目。
そうは言っても午前中の、しかもほんの少しの間だけの鳥見になる。
マングローブ林では白黒ツートンカラーのマングローブヒタキが「ヒー、フー」と哀愁漂う優しい声で鳴いていたり、控えめな青色のナンヨウショウビン(T.c.colcloughi)が暗がりにとまっていたりした。
干潟にいたオオソリハシシギ達は、潮が満ちて干潟の泥地がなくなると、芝生に上がって蟲を探し始めた。
オーストラリアで越冬していたオオソリハシシギ達は、これから繁殖地である夏の北極圏に向けて旅立つ。きっと途中に中国や、日本にも立ち寄っていく事だろう。
波打ち際に佇むこの雄の眼からは、渡りという大移動にこれから望むのだという強い覚悟が伺える。
この2週間は本当に楽しかった。
何もかもスケールの大きなオーストラリアという地に初めて訪れて、日本とはほとんど違う、初めて見る生き物達に出逢ったこと。
他に生き物を探している人なんてめったに会わないから、この広い大自然をほぼ1人(2人)占めに出来たこと。
あっと言う間に熱中症になりそうなほどの暑さ、突然のスコール、襲い来る吸血昆虫。
何度思い出しても何もかも皆、懐かしくて愛おしくて、私のように何を見てもすぐに感動してしまう人間からしたらこんなに刺激的で楽しいことは無かった。
海外に生き物を見に来て、帰る時に必ず胸に浮かぶのはたくさんの“帰りたくない”という気持ち。
いつかまた必ず、来るのだ!そう胸に誓って、私は空港エントランスのドアをくぐった。
最後に見た鳥は、晴れ渡る空を気持ち良さそうに飛ぶ、モリツバメだった―。
【2010/03/15/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
オーストラリアヘラサギ(Platalea regia) Royal Spoonbill
日は沈み、辺りが黄昏の薄暗さに包まれている時間帯。
さっきまで干潟で採餌をしていたオーストラリアヘラサギ達が、今度は背の高い木の樹冠に塒入りし始めた。
一際枝の高い場所にとまったこの個体は、仲間を呼ぶように何度も、何度も天に向かって咆哮した。
オーストラリアクロトキ(Threskiornis molucca molucca) Australian White Ibis
すると今度はオーストラリアクロトキが何羽もやってきて、オーストラリアヘラサギの近くにとまった。
次々に塒入りしてくるこの2種の巨鳥を見ていると、次は塒に向かうゴシキセイガイインコとコセイガイインコの群れが通りかかった。さらに次の瞬間、かなりの数のオナガテリカラスモドキの大群が高速で飛翔して私のすぐ横を通過していき、「びゅぉー!」と音を立てた。群れ全体が同調していて、まるでひとつの黒い生き物のようだ。
また、メガネオオコウモリとオーストラリアオオコウモリは鳥達の逆で、塒から一斉に飛び立つところだった。
そして気付けば、上空高くにオーストラリアアナツバメ達がどこかの塒に向かって飛び、広い空一面にスカイフィッシュを散りばめたような光景になっていた。
なんという素晴らしいショーだ!
干潟部の縮小から始まったこの瞬きする間も惜しいほどに素敵な舞台は、訪れた夜の闇によってゆっくりと閉幕した。
初列は先端が黒く、三列は黒い飾り羽になっている。
【2010/03/14/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
オーストラリアヘラサギ(Platalea regia) Royal Spoonbill
―ここは夕方の海岸。
日が陰って涼しくなったためか、海沿いの遊歩道は散歩やランニングをする人達が沢山行き交っている。
遊歩道に面した干潟もまた、夕方の、しかも干潮から満ちる方へ潮が動くタイミングによりいつも以上に鳥達でごった返していた。
冬羽のオーストラリアヘラサギ達は5、6羽で並んで、首をリズミカルに左右に振りながら餌を探して歩いていた。オーストラリアヘラサギ達はそのうち皆で立ち止まり、その自慢の嘴で羽を梳くように丁寧に、羽づくろいを始めた。
クロサギ(Egretta sacra sacra) Eastern Reef Heron
いよいよ干潟が狭まり出すと、干潟中の鳥達が陸側の少ない泥部に集まり出して、凄い密度になる。
干潟のクライマックスだ。
ホウロクシギやオオソリハシシギは比較的水深のある場所にまだ居て、チュウシャクシギ、キアシシギ、アオアシシギ、ソリハシシギ、オバシギはそれらよりも陸側、沢山の小さなトウネン達はほとんど水深の無い場所をせわしなく動き回っていた。
満ち潮で海になった場所にはどこからともなくコアジサシとオオアジサシが飛んできて海面に飛び込み魚を捕らえる。
すると今度は海面の上空高くをシロハラウミワシとカンムリミサゴが旋回し始めた。
ズグロトサカゲリ(Vanellus miles miles×V.m.novaehollandiae) Masked Lapwing
このズグロトサカゲリは今まで紹介してきた個体と違って側胸に黒色の帯が見られるけれど、これがやや不明瞭なことから、おそらく南部亜種(V.m.novaehollandiae)との雑種。
チュウダイサギ(Egretta alba modesta) Eastern Great Egret
チュウダイサギは世界的にはダイサギとは別種で、例えば手元のオーストラリア図鑑には 「Ardea modesta」 とある。
サルハマシギ(Calidris ferruginea) Curlew Sandpiper
シギチで賑わう泥の上。
細くて下方に湾曲した嘴がシャープな印象のサルハマシギ達はもう食事が済んだ様子で、一箇所に集まって休んでいた。
メダイチドリ(Charadrius mongolus) Lesser Sand Plover
オオメダイチドリに混ざって、もう夏羽になりつつあるメダイチドリもいた。
ここのメダイチドリは亜種モウコメダイチドリ(C.m.mongolus)だと言われている。
巨大でトウネンなんかよりも明らかに大きなオオトビハゼ属の1種(Periophthalmodon freycinet)がこのメダイチドリ達を蹴散らした頃、太陽は沈んでいった。
【2010/03/14/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
ゴシキセイガイインコ(Trichoglossus haematodus septentrionalis) Rainbow Lorikeet
この日は5分おきに雨が降ったり止んだりしていたから、私達はそのたびに木陰に駆け込んだり軒下に入ったりと大忙し。
雨の上がった空を見上げると、ちょうど虹色のゴシキセイガイインコが飛んで行くところだった。そのカラフルな羽色で、まるで空に虹を架ける様に軌跡を描いて。
【2010/03/14/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】