枯れ野に舞うは無音の狩人

2011-05-25 22:33:09 | 鳥(Birds)


コミミズク(Asio flammeus) Short-eared Owl


朝。夜明けと同時にだだっ広い農耕地に着いた私達を待ち受けていたのは、何百羽ものミヤマガラスの大群だった。
彼らは広い農耕地の中をかなりの頻度で点々と移動しながら採餌していて、また警戒心が驚くほどに高い。
さらに、ミヤマガラスの群れは頭も良いのだ。例えば、鳥に何ら興味のない地元の車が通りかかった時には少しも反応しないけれど、私達の乗った車が例えばミヤマガラスから100m以内の距離で30km/h以下に速度を落とすと、途端に警戒し始める。
だから観察するのにも一苦労で、ミヤマガラスの大群にごく少数混ざる白黒の小柄なコクマルガラスの淡色型を見つけた時には感動もひとしおだった。

私達は次に、2種のハクチョウとカモ類が越冬する沼に向かった。
ここではサカツラガンが2羽のマガンと共に泥地を闊歩していたけれど、何やら警戒心の妙な薄さが怪しい感じである。
それにしても、サカツラガンの頭部の形状は個人的にとても好みだ。何故かと言うと、この顔はサカツラガンのガタイの良さも合わせて、まるでサウロロフスのようなカモノハシ竜(ハドロサウルス科 )のように映るからである。

日が傾きかけた頃。「あの丘の向こうまで競争だっ」と茶番な青春劇を行いながら堤防を駆け足で登り切った私達は、目の前に広がる光景を見てあっと息を呑んだ。
眼下には広大な葦原が広がり、私の目の前ではまさに、コミミズクが悠々と舞っていたのだ。その翼は西日をやわらかに透過して麦畑色に輝くき、音もなくフワリ、フワリと優しく、それでいてメリハリのある羽ばたきをしている。
そのうちハイイロチュウヒの雄や何羽ものチュウヒが葦原を飛び始め、その素敵な舞台は日没まで続いた。




サカツラガン(Anser cygnoides) Swan Goose



【2011/01/31/栃木,群馬 Tochigi&Gunma,Japan/Jan.2011】


深山のローズフィンチ

2011-05-21 21:03:01 | 鳥(Birds)


オオマシコ(Carpodacus roseus) Pallas's Rosefinch


朝一番、誰も居ない静かな林道。
1月の、しかもこれほどの山に分け入ったなら、日中でも日陰になる斜面にはまだ所々雪が残っていて、吐息までもが凍りつきそうなほどに寒い。林道の入り口ではジョウビタキの雄が「ヒッ、ヒッ」と鳴いて、林の奥へと私達をいざなってくれたおかげで早速楽しい気持ちになった。
そして私達はまださほども歩かないうちに、林道沿いの地面でカサコソ動く小鳥の群れに出逢うことになった。その小鳥達を双眼鏡で捉えるなり、この日の目標はすぐに達せられた。
色の無い冬朝の地面に際立つ上品な撫子色の全身、それに顔の一部にまるで雪が積もっているかのような銀白色の羽が入り、その美しさを完成させていた・・・オオマシコの雄成鳥だ!

私達が凍った地面に座り込んで観察していると、群れは餌を探しながらこちらの方に近づいてきて、やがて私達はオオマシコ達に取り囲まれてしまった。彼らは枯葉や雪の乗った苔の中に埋もれた種子を探し出すのに夢中で、わき目も振らずといった感じだ。
この時三脚に触れた手は凍りそうに冷たかったけれど、私の心は一気に温まっていた。















【2011/01/22/山梨 Yamanashi,Japan/Jan.2011】


春めく小鳥は東の空を見て

2011-05-18 22:13:06 | 鳥(Birds)


キガシラシトド(Zonotrichia atricapilla) Golden-crowned Sparrow


オオジュリンやアオジ達がいかにも好みそうな葦原が点在する春の河川敷で、ほぼ夏羽に換羽したキガシラシトド。
時おり、芽吹いた柳の木などの気に入った場所にとまっては美しい声で鳴いていた。
2月に冬羽を見た時にはぐぜっている程度だったけれど、4月のこの日の鳴き方はまさに完璧だった!
「ヒーリーリリ」
このキガシラシトドが囀るたびに、私の心に(コイツの繁殖地である)アラスカの涼風が吹き込んでくるようであった。
私の持っている日本の図鑑には「song」の記述がないので、ルリノジコが表紙のFIELD GUIDE TO BIRDS OF NORTH AMERICA を見てみると、「3か4音の哀しげな口笛のような声で囀る」というような記述。まさにそんな感じだ。












non-br.(2011.02.23)


【2011/04/03/千葉 Chiba,Japan/Apr.2011】


小鳥遊

2011-05-15 06:02:24 | 鳥(Birds)


コガラ(Parus montanus restrictus) Willow Tit


アカウソでも居ないかと高原の林を訪れたのだけれど、結局見つからなかった。
その代わりに、先程からコガラやヤマガラが物欲しげにこちらを見ていることに私は気が付いた。ほほう、この辺りは別荘地だから、さてはこの子等は誰かに手乗り餌付けされているのだな。
けれど、もちろん私達は餌など持ち合わせてはいなかった。

そこで私は、マリーバイワワラビーに対して行った作戦の応用を思いついた。
小鳥達はワラビーと違って、手を握っていては警戒してやってこないので、初めから手のひらは開いた状態にする。そして次に、そこらに落ちている木片を小指の爪ぐらいの大きさにちぎる。最後にこの木片をポケットから取り出す風を装って開いた手の中央に置くのだ。
この時は、材の白っぽいシラカンバの木片があったから、よりその木片が「ヒマワリの種」らしく見えた。

すると、さっきまでこちらの様子を伺っていたコガラが、さっそく
“やった!”
とばかりに私の手に乗ってきた。このコガラは木片を素早く咥えると、すぐさま近くの木に飛び移り、咥えてきたヒマワリの種であろう物体を嬉しそうに確認した。そして次の瞬間、それがただの木片であると気付いたコガラは、頭に疑問符をいくつも浮かべて固まってしまった。普段はせわしなく動いているコガラが動きを止めて、まさにあっけにとられた顔をしたのだ。
これを見て、可愛いやらしてやったやらで私達は普段使わないような擬音を発しながら喜んだ。
―こんなことを書くと、大半の方にはケシカランと怒られるかもしれませんが、人間だもの、可愛いから困らせたくなってしまうことって、あります。




ヤマガラ(Parus varius varius) Varied Tit


鳥見に行かない・行けない時に限って、ブルーフロンティドとかなんとか。
こんなのってない。あんまりだ。



【2011/01/22/山梨 Yamanashi,Japan/Jan.2011】


白銀の絹羽

2011-05-10 22:40:07 | 鳥(Birds)


ギンムクドリ(Sturnus sericeus) Red-billed Starling


花芽を膨らませた桜の木にとまるギンムクドリの雄。
彼はつるんでいるムクドリ達よりもずっと警戒心が高くて、こうしていつもお気に入りの枝から地上に降りても安全かと注意深く伺っている。
他のムクドリ達が採餌しているのを見てやっと地面に舞い降りた時には、翼上面の緑色光沢の中に白い翼斑がよく目立った。

ギンムクドリの英名はてっきりSilver Starlingだと思っていたら、そうでは無かったみたい。
それにしても、Silky Starlingという響きはとても良い。この羽色を表すのに「銀」とすればまぁそれなりに格好いいけれど、「絹」と表現するととてもしっくりくる。そう、金属的というよりは上品なシルクを纏っているように見えて来るのだ。例えばこれを和名にするならば、キヌバネムクドリといったところか。







【2011/03/27/千葉 Chiba,Japan/Mar.2011】