ボルネオコビトリス(Exilisciurus exilis) Least Pygmy Squirrel
ダナンバレーのロッジの周りでは、真昼間でも哺乳類が結構見られる。
この時も丁度カニクイザルの群れがロッジのすぐ横を通過するタイミングで、ガサッガサッと木から木へと器用に飛び移っていた。
アカハライモリのような配色のミケリスがロープをつたってスルスルとやってきたかと思うと、私に気付いて身を翻し、走って木へよじ登った。
すぐ近くで気配がして、キツツキかと思って振り返れば、小さくて可愛いボルネオコビトリスが私からほんの3メートルほどの木の幹にいて、何をするでもなくボーっとしていた。余計可愛い。
スイロク(Cervus unicolor) Sambar
夕方。1人でメインロードを歩いた後、暗くなってきたのでロッジに引き返そうとすると、私の前に2頭のスイロクが立ちはだかった。スイロクは水鹿と書き、体格もニホンジカぐらいある。
どうやらこのスイロクはロッジの方向に向かっているようで、私はスイロク達と一定の距離を保ちながら歩いた。
後でわかったことだけれど、スイロクは毎晩大勢でロッジの草地へ食事に行くのだ。宿泊客の殆どはこのことに気が付いていない。
ダナンバレーのナイトサファリは、トラックの荷台に乗って行う。
オフロードをお構いなしに進む四駆のトラックの荷台は、状態の悪いオフロードを行けば行くほど大きく揺れて、さながらテーマパークのアトラクションだ。
ナイトサファリのメインターゲットは夜行性の哺乳類で、数回乗った私はスローロリス、
オオカカムササビ、オオマメジカなどを見た。
【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】
ボルネオゾウ(Elephas maximus borneensis) Borneo elephant
ボルネオ2日目。ホテルのフロントに頼んでおいたモーニングコールで起きてみれば、外はまだ真っ暗な時間帯だった。
眠い目を擦りながら起き出した私は、早朝のコタキナバル空港へと向かった。
今日は始発便の国内線でボルネオ島の東、ラハダトゥへ行くことになっている。コタキナバル空港内で朝マックを食した後、コタを離れた機内で2度寝と洒落込んだ。
ラハダトゥ空港に着くと、間もなくダナンへの送迎車がやってきた。2人のマダムと同乗した送迎車の運転手は結構鳥に詳しくて、道中、出現する鳥についてあれやこれやと話が出来た。
車がラハダトゥの街を離れてしばらく走ると、辺りの景色は油ヤシのプランテーション、2次林、樹高のある原生林へと姿を変えていった。
オフロードを走ること数時間、両側を森に囲まれた道の中央に、突如として巨大な物体が立ちはだかった。
「ウソ...だろ!?」
戦慄した車内、2種類の言語で各々がそう言った。そして次に「Elephant!」。
行く手を阻むのは紛れも無い、1頭のボルネオゾウだった。
停車して動を見ていると、ゾウは道路脇のブッシュに入って食事を始めた。
ここでゆっくりとした動きでソロリと慎重に車から降りる私。野生のゾウは極めて危険な生物で、鼻で殴打されたり突進を喰らえば死に至ることもあるからだ。
姿勢を低くしながら距離をつめ、数回のシャッターを切る。
見慣れた鳥と違い、動きのあまり予測できないゾウは、気付けばまた道路に出てゆっくりとこちらに歩き出した。これはマズイと車に撤退した私の気を知ってか知らずか、ゾウは間もなくブッシュから森へと姿を消した。
ボルネオゾウに出会うのは実は2度目だけれど、これほど大きな野生の哺乳類と対峙するとピリピリとした緊張感がたまらない。
この道では夕方ならゾウとの遭遇の可能性も考えられるが、この時は真昼間。まさか出現するとは思っていなかったから嬉しいサプライズだった。
【Road to Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/30th Dec, 2012】
ケナガネズミ(Diplothrix legata) Ryukyu long-furred rat
日が暮れた後。5分で100円、水を止めている間はノーカウントという良心的なシャワーは今回初めて見つけたのだけれど、何とも申し分の無い設備だった。100円でシャワーを浴び終わった私がシャワールームの棚からタオルと取ろうとすると、ホオグロヤモリがペタペタと壁を歩いて逃げるところだった。
その後、林道へ向かうまがりくねった道。
私が少し気を抜いていたら、危うく道路上にいるケナガネズミの存在を見落とすところだった!
ケナガネズミは地面に落ちた果実をむしゃこら食べるのに夢中で、あと1mというところまで私の運転する車が近付いても少しも逃げる気配が無い。そんな警戒心で大丈夫か?
慌てて10mほど車をバックさせて私達が車から降りると、名残惜しそうに顔を上げたケナガネズミはかなりゆっくりとした動きでノソノソと道沿いの斜面を登って姿を消した。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
オーストラリアオオコウモリ(Pteropus scapulatus) Little Red Flying-fox
楽しかったグレートバリアリーフのクルーズは、本当にあっと言う間に終わってしまった。
そして桟橋から歩いてユースホステルに帰る途中。ふと空を見上げると、その西日の空はとんでもないことになっていた。
ねぐらから飛び立ったもの凄い数のオオコウモリ達が音もなく空を埋め尽くし、大河のごとく太い帯になって流れていくではないか!ボルネオで見たドラゴンダンスも凄かったけれど、コウモリの大きさがその比ではない。西日に照らされているからといっても、翼が透けて赤褐色味を帯びていることからオーストラリアオオコウモリの方であろう。
何が凄いって、ここは街のど真ん中、セントラルなのだ。
何も知らない子どもがこんな光景を見たら、街に宇宙人の大群が攻めてきたのではないかと勘違いして、この世の終焉を覚悟しかねない。
こりゃすごいのなんのと騒ぎ立てる私達を尻目に、現地の人々はこんなの毎日のことだと言わんばかりで、他に歩みを止める人は誰も居なかった。
やがて日本では「通りゃんせ」が流れるかわりにここオーストラリアでは「ピョン、プツツツ...」と音のする歩行者用信号機の青色点灯にやっと気付いた私達は、上を向いたまま、また歩き出した。
【2010/03/11/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
マリーバイワワラビー(Petrogala mareeba) Mareeba Rock Wallaby
ここのマリーバイワワラビーは結構な希少種で、そのためか何代も前から人間に餌付けされていて、食物の結構な割合を観光客などの人間に頼っているようだ。
それで私達がこの岩場にやってくると、ワラビーがとてちてと近づいてきて「ごはんくれんのかなー?」とこちらの様子を愛らしく伺うわけである。
けれど、それも一瞬のもてはやしで、しばらくして私達がはなから食物を持ってないことに気が付いたワラビー達はそっけなく徐々に散っていってしまうので、少し寂しくなった。
ここで、友人が最高の策を思い付いた。
まずポケットから何かを取り出す風に手をグーにして出し、遠くに居るワラビー達の目線の先にチラチラと見せ付けるのだ。するとこのしぐさに気付いた勘のいいワラビーが脱兎のごとく駆け寄ってきて、さらにそのワラビーの突発的な行動に状況を察した複数のワラビー達も次々に集まってくるのだ。まるで離島において、妙に焦った様子で歩いている人を見ると何か珍鳥が出たのではないかと気になってしまい、中にはその人の後を着いて行く人が現われるという現象みたいだ。
これで一気にワラビー達にモテ出したら、次にその状況をゆっくり堪能する。
しばらくして、ワラビー達に「そんなことよりごはんは?」と言われているような気がしてならなくなってきたら、「じゃぁお待ちかねの」と言ってグーにした手をワラビーの目の前に差し出す。するとワラビー達は目を爛々と輝かせながら私の手を見つめ出すのだ。
そして次の瞬間、ひと思いに手を開いて餌どころか何も無い手のひらを見せ、こう言い放つ。
「ないよぉ(笑)」
それを見たワラビー達の残念そうな顔ときたらない。まさにションボリした顔文字が合い相応しいような表情をするものだから、それがもうかっわいくて可愛くてたまらなくなった。
―こんなことを書くと、大半の方にはケシカランと怒られるかもしれませんが、人間だもの、可愛いから困らせたくなってしまうことって、あります。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】