カンムリワシ(Spilornis perplexus) Ryukyu Serpent Eagle
夕方、キャンプ場に戻る道。
道路沿いに生えるネムに似た木、ギンゴウカンに、まだ若い第1回冬羽のカンムリワシがとまっていた。
車を停めて窓を開けると、カンムリワシは何度も高らかに鳴いた。
生き物との出逢いというものは、いつまで経っても色褪せない思い出として残るもの。
現に、このカンムリワシを見ている時に、車に誰がどんな配置で乗っていたか、なんてことは今でも思い出すことができる。
【2008/03/06/西表島 Iriomote Island, Japan/Mar. 2008】
ウチヤマセンニュウ(Locustella pleskei) Styan's Grasshopper Warbler
昨日あたりから、巷で騒がれているニュース。
世界中の鳥好きが驚嘆したであろう、この「オガサワラヒメミズナギドリ(Puffinus bryani)再発見」の報道に、私もまた、とても胸が熱くなりました。
2005年に再発見されたアメリカハジロキツツキ(Campephilus principalis principalis)のニュースでも相当心が躍りましたが、今回は日本の鳥ということで、より嬉しい出来事です。
2011年8月、アメリカのクーパー鳥学会から出ている機関紙「The Condor」に、 Pyle et al. によるこんな論文が載りました。
A new species of shearwater (Puffinus) recorded from Midway Atoll, Northwestern Hawaiian Islands.
URL↓
http://www.birdpop.org/shearwaters.htm
ページ下、「here」から論文の全文が読めます(おそらく Adobe Reader がインストールされていることが必要)。
内容は、1963年にミッドウェー諸島で収集されてヒメミズナギドリと同定されていた標本をDNA分析に供した結果、別種だった。これを新種 Bryan’s Shearwater として提唱する、というもの。
この発表を受けて、日本の研究チームが小笠原で採集されたヒメミズナギドリ標本をDNA分析に供したところ、まさに Bryan’s だった、ということですね。
私は、このニュースを聞いた日のうちに、本棚にあった日本の鳥550水辺の鳥や、海鳥識別ハンドブック(ヒメナギ図版モデルは小笠原の個体)などの、ヒメミズナギドリの頁の種名を書き換えました。
繁殖地が判明して、保護される日が来ることを祈りるばかりです。「見に行ける」日がくることも。
鳥を見る人の端くれとしての “夢” はやはり、
1.新種発見
2.絶滅種再発見
3.国内初記録種の発見
でしょう。生涯の中で、3番ぐらいは達成したいものだなと、つい妄想してしまいます。
ヒントは、「噂」、「伝説」、「幻」の中にあり。
こういうことを考えると、ドキドキしますね。
【2009/05/07/三宅島 Miyake Island, Japan/May 2009】
ソデグロヅル(Grus leucogeranus) Siberian Crane
ビッシリ冷え込んだ1月上旬の朝。
まだ辺りが真っ暗なうちに白鳥のねぐらに到着した私と友人は、じんわりと明るくなる東の空を見て、歩き出した。
ここは平坦な土地に広がる休耕田の真っ只中で、辺りには民家などがあまり無い。そのため、まだ昇らぬ朝日にほんのり染められた空が、殆ど何にもさえぎられずに広がっていた。尋常では無い寒さを帯びた空気とこの風景、きっとシベリアの夜明けはこんな雰囲気なのだろうな、としばらく想いに浸っていた。
そうこうしているうちに、うっすらと目が利くようになってくる。
水田区画に水が張られただけの白鳥のねぐらは氷に閉ざされてていて、起き始めたハクチョウ達の声がまばらに聞こえる。
まだ首を上げない白鳥の白い塊を双眼鏡でなぞっていくと...見つけた。
氷にめり込むように眠る大福状の白鳥らの中に1つだけ、赤い脚が伸びて一段階高い位置に、白いまんじゅう状の物体があったのだ。
そう。水に浮いたまま眠る白鳥と違って、ツルは立って眠る。これがソデグロヅルだ!
やがて、池の手前側にいるコハクチョウ達が首を出して動き出すと、ハクチョウ達がまだ眠る奥の区画にいたソデグロヅルもまた、目を覚ました。
首を出して顔を上げたソデグロヅルは2度寝、3度寝を繰り返した後、入念に体中の羽づくろいを始めた。
この個体は、頸や背面などに薄っすらと褐色味がある。まだ成鳥ではないみたいだ。
たまに何歩かだけ移動する際、バランスをとるためにバタバタと羽ばたいて、はっきりと黒い初列(ソデ)を見せてくれた。
下雨覆の手入れをする時などには、翼の先端を少し下にずらすため、この黒色の初列をいかにして格納しているかがよくわかった。
ソデグロヅルの顔の目から先端にかけては羽が無くて、何とも独特の雰囲気をかもし出している。虹彩が淡色なことも合わせて、人によっては恐い顔と思うかもしれない。
私個人的にはこの顔、昔父親が作っていたタミヤの恐竜模型、ジオラマのパラサウロロフスに付属していた「ニクトサウルス」という翼竜の顔が思い出された。
このニクトサウルス属には昔の復元図のイメージしか持ち合わせていなかったのだけれど、改めて調べてみると、現在の復元図にはとんでもない鶏冠が追加されていて驚いた。
さて、この翼竜よろしく鋭い顔をしたソデグロヅルは、9時頃までゆっくり羽づくろいをした後、突然思い立ったように飛び立っていった。
正月に見たタンチョウに続き、今年はツルに恵まれているのかもしれない。
アメリカコハクチョウ(Cygnus columbianus columbianus) Whistling Swan
ハクチョウのねぐらには、昨シーズンと同じく多くのコハクチョウと少数のオオハクチョウ、そして数羽のアメリカコハクチョウがいた。
ここにいるオナガガモ達は、池に張った氷を割ることをまるで「遊び」にしているかのようであった。
オナガガモが氷に乗って歩くと、やがて体重で氷に穴が開いてジャボンと水に落ちる。するとまた氷上に乗る、というように、まるでペンギン気取りだ。
そのうち多数のオナガガモが巨大な一枚氷の上に乗ると、「ミシミシミシ....ズガコン」と凄い音を立てて氷が割れ、大勢のオナガガモ達はそろって水にずり落ちた。これがなんだかおかしくて、ニヤケる私達。
ホシムクドリ(Sturnus vulgaris poltaratskyi) Common Starling
少しの仮眠のあと、蓮田の点在する農耕地へと場所を移した私達。
水の張られた蓮田には1羽のコアオアシシギと数羽のハマシギ、タカブシギ、タゲリなどが居た。
そこかしこに潜むタシギは、私の目線に気が付くと一度草地にしゃがむ。けれどしばらくするとまた、何事も無かったかのように餌を探し始めた。
この辺りに特に多いムクドリの中から珍ムクドリを探そうと思うならば、がむしゃらに片っ端からチェックをしていくしかない。
ムクドリの大群を見つけた時には、端からなぞるように見始めるのだけれど、開始数秒でパラパラと移動し始めてしまい、またすぐに群れ全体がシャッフルされてしまうのだ。
これは、給食の時にせっかくシチューの中から全て取り分けておいたグリーンピースを、目を離したすきにまた全部シチューに投入されるようなものだ。
こうして何度も振り出しに戻された私は、あまりの“タダムクドリ”の数の多さにめまいがしてきた頃、やっとホシムクドリを見つけた。
「ウォーリーをさがせ!」ならぬ、ホシムクドーリーをさがせ!だ。よし、これで夕暮れ時に間に合った。
コミミズク(Asio flammeus) Short-eared Owl
日暮れ間際のベストタイムは、葦原の広がる干拓地で迎えることにした。
望遠鏡を持って干拓地を望むと、葦原に数本生える木にはチュウヒが何羽もとまっていて、そのうち一番奥の木にはオオタカの雌がとまっていた。
いよいよチュウヒ達が飛び始めると、一際小さなコチョウゲンボウの雄が直線的に飛び去っていった。さらに、芦原のほぼ対岸ほどの遠い空域にはハイイロチュウヒの雄が2羽と雌タイプが1羽飛んでいて、これらがスコープの視野に同時に入るようになった。
電柱の上に姿を現したコミミズクは、数十秒こちらをじっと見た後、葦原の狩り大会へ参加しに行った。美しい飛翔形ののちヒラリと一度舞い降りたコミミズクは、どうやら獲物を捕らえたみたいだ。すると突然、どこからともなくオオタカの若鳥が突進してきて、両者ともに視界から消えていった。
【2012/01/07/千葉,茨城 Chiba&Ibaraki,Japan/Jan.2012】