【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/13th April, 2012】
ヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae) Okinawa Rail
朝の4時半ぐらいだろうか。気付けば、ある時間帯を境にパタリと、夜の生き物たちが出現しなくなった。
深夜から1人歩き続けた林道の、木々の間から見える空も、しばらくすると少しずつ薄明るくなってきた。
森のそこかしこからはホントウアカヒゲのさえずりや、「キャッキャッキャッキャッキャッ.....」というヤンバルクイナの声が聞こえるようにもなってきた。
やんばるの朝が来たのだ。
空は薄明るくても、草木の生い茂る林道はまだ真っ暗で、ライト無しには歩けない。そんな夜行性、昼行性の生き物も殆ど姿を見せないこの時間帯に眠気を誘われた私は、半分眠りながら歩みを進めた。
しばらくして、もうどうしようもなく眠くなってしまった私は、丁度道端にあった座り心地の良さそうな大岩に腰掛けて、うたた寝を始めた。
―どのくらい寝たのだろうか。ふと目覚めて時計を見ると、針は7時半を指していた。まずい、寝すぎた。
そして私が、石に長時間座ったため少し痛くなった体に鞭打って立ち上がろうとした時。正面に何かの気配を感じた。
顔を上げると、私からほんの数メートル前に、1羽のヤンバルクイナが佇んでいた。
私の動作に警戒したヤンバルクイナはすぐに慌てて茂みの中に入って行ってしまった。石に腰掛け、眠りうな垂れて動かぬ私を生物と認識しなかったのだろうか。寝て起きたら鳥が目の前にいた、というのは今までに何度か経験がある。私自身も「鳥の気配」に無意識に気付いて目を覚ますのかもしれない。
そんなことを考えていると、先ほどのヤンバルクイナが、今度はゆっくり辺りを伺いながら茂みの中から出てきた。そして今度は私を観察でもするかのように、しばらくの間動きを止めた。もしかすると“人間”を試しているのかもしれない。
この間、たまたま友人と鳥を見に行った時のこと。
私たちが年をとり、やがて定年を迎え、さあこれから遍く鳥々を片っ端から見てやろうと思った時、現存する鳥種のなかで何種が絶滅しているだろうという話になった。
絶滅ということは、見たくてもどうしても見られないのだ。
そう考えると、ゾッとすると同時に焦り始めた。こうしちゃ居られない。今からでも世界の鳥に優先順位を付けて、最も絶滅の恐れのあるものから見たほうがいいのではないか?
爺さんになった私達が、若いバーダーにいなくなった鳥のことを聞かれた時には、詳しく答えてやらなければならない。その鳥が “確かにいた” ことを伝えるために。
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/13th April, 2012】
ヒメハブ(Trimeresurus okinavensis) Dwarf lancehead snake
霧雨の夜。
夕暮れ時から数時間だけ仮眠をとろうと思って寝たら、うっかり深夜まで寝過ごしてしまった私は、慌てて外にとび出した。
気温がそこそこあり、地表が湿った絶好の活動条件なら、ヒメハブの姿を見るのはそう難しくない。
アマミタカチホを見た時もそうだったけれど、鬱蒼と木々の茂る林道をひたすら歩いても成果が無い時は、逆に適度に開けた斜面沿いの道を攻めた方が良い結果になることが多いように思う。
撮影する中で、私がヘタッピなのが原因の大部分を占めるのだけれども、それでも少しも気に入った表現が出来ないとやはり外部ストロボを持たなければならないと強く感じた。
ハナサキガエル(Rana narina) Okinawa tip-nosed frog
種にもよるけれど、例えばハナサキガエルに関しては、このぐらい“反った姿勢”がありのままの姿。
少しでも警戒しようものなら前脚の張りを緩めて防御姿勢をとろうとするし、少しでもライトを当てようものなら瞳孔が小さくなる。
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/12th April, 2012】
ちょっと宣伝。
このたび、私の撮影した写真が6月14日発売の「講談社の動く図鑑 MOVE 魚(さかな)」に掲載されました。
講談社の動く図鑑 MOVE 魚(さかな)
「魚たちの多様な生態を、豊富な生態写真と共に紹介していきます。MOVEシリーズの特長として、迫力のある写真を大きく使うことで、従来の図鑑を超えた、写真集的な美しさ、おもしろさを持った図鑑となっております。(公式HPより)」
本屋で購入される方は、生物関連書籍コーナーではなく児童書コーナーをで探してみてくださいね。
講談社HPはこちら
児童書の大図鑑というのは、世の中の「生き物屋」が生まれて初めて手にする生物的文献ではないでしょうか。
かくゆう幼き日の私も、小さな手で重い大図鑑を棚から引きずりおろしては床に広げ、時間を忘れて見入っていました。
ヒクイドリの絵を見ては遥かオセアニアの低地性熱帯雨林に想いを馳せ、キョクアジサシの写真を見ては寒風吹きすさぶ氷の大地に意識を飛ばし...
さて、今回掲載された写真は―オニキンメ、ウロコカブトウオ、ラブカ歯列の3点です。
デイゴ(Erythrina variegata)
本島北部へ向かう途中。
いつものように海岸線に何羽ものクロサギを見ながら車を走らせていると、入り江の見える場所にポツリとある小さなバス停の側、赤く咲く花をたくさんつけたデイゴの木があった。
デイゴにしてはまだ小柄な樹で、(たぶん)花以外には葉は付けていなかった。
途中、「我部祖河食堂」に寄って、昼食のソーキそばを食べる。
金武にも行きたかったけれど、次の機会に延期した。
【Okinawa Is.(沖縄本島) Japan/12th April, 2012】