光とともに移りゆく色

2012-12-28 01:03:08 | 鳥(Birds)


ソリハシセイタカシギ(Recurvirostra avosetta) Pied Avocet


日曜日の昼。運転免許の更新を最速で終わらせ帰宅した私は、双眼鏡とカメラを持って5分もしないうちに家を飛び出した。
冬の日中の時間は本当に短いもので、目的の霞ヶ浦に着く頃にはもうかなり日が傾いてしまっていた。

曇天の下、沢山のヒドリガモやオオバンの集まる静かな湖岸に、背に嘴を突っ込み眠る2羽のアボセットはいた。
この2羽の眠りに対する貪欲さときたら、それは大したものだった。コサギがヌマチチブを狙って横スレスレを通りかかっても、ハクセキレイがちょこまかと周りを歩き回っても、オオバンの群れがバチャバチャとうるさく採餌しながら周りを取り囲んでも、眠りの体勢を少しも崩すことはなかった。
そんなアボセットのことが気にくわなかったのか、しばらくして1羽のオオバンがおもむろに近付いて来たと思ったら、アボセットをいきなりどついた。
するとアボは「うおお、なんだなんだ」とばかりに少し目を覚ますが、相手がオオバンだと分かるとまた数秒後には眠りの体勢に戻った。
からんでも取り合ってくれないアボセットをしばらく呆然と眺めたオオバンは、結局諦めてどこかへ行ってしまった。



















初めは曇天のグレー、次に夕暮れのオレンジ、最後に夕闇のブルーに染まった湖面とアボセットの色。
肉眼で観察が出来なくなるギリギリまで付近の蓮田をまわり、ジロネンやタシギを見た頃にはもう月が出ていた。





明日から、マレーシアへ鳥見に行ってきます。
年越しは熱帯雨林の中心で!
スラマッパギ!


【Kasumigaura Lake, Ibaraki(茨城), Japan/23th Dec, 2012】


冬の公園、小鳥の降る日

2012-12-18 02:05:10 | 鳥(Birds)


ジョウビタキ(Phoenicurus auroreus auroreus) Daurian Redstart


さえずりにはまだ早い。これはペリットを吐き出した直後の顔。

冬も深まる12月の週末。睡眠不足の顔を付き合わせた私と友人はふらふらと始発電車に乗り込んだ。
この日は特にこれといった目的は無く、小鳥を見ようと里山公園を訪れたのだった。
日が昇って間もない里山公園には霜がビッシリ降りて、人影もほとんど無い。

葦原に囲まれた三叉路を曲がると朝日が差し込み、その区画の霜がジワジワと溶ける音がした。
そこら中から聞こえるぱちぱちと葦を割る音の主はシジュウカラで、器用に虫を取り出して食べている。
「ヒッ ヒッ」と控えめな地鳴きがしたと思ったら、間もなくジョウビタキが飛び出してきた。






太陽が昇り行く中、公園内を歩くにつれて鳥達が盛んに餌をとりはじめた。
次に遭遇したのはカラ類の混群、すなわち「カラ混」だが、ここのカラ混の組成の90%はシジュウカラだった。それはもう驚くほどにシジュウカラだらけで、50+のシジュウカラにヤマガラやコゲラが1羽ずつ混ざるといった感じだった。
このシジュ混に続くようにエナガの群れが通りかかり、どこからともなくシメが鋭い声で飛んできて、メジロがこれに加わり、そして辺りはたちまち小鳥だらけになった。




キジバト(Streptopelia orientalis orientalis) Oriental Turtle Dove


警戒のココロをどっかに落っことしてきたキジバトが私達のゆく前方で座り込む。
暗い林床ではシロハラが落ち葉を返すのに忙しそうで、同じく暗い常緑樹の茂る林冠にはオナガの小群がいた。




マガモ(Anas platyrhynchos platyrhynchos) Mallard


私が風景の写真なぞ撮っている間に、友人はアカゲラをみていたという。
そういえばビジターセンターの掲示板には12月に入ってからオオアカゲラの記録もあった。
里山公園といえど、こういう部分があなどれない。




コガモ(Anas crecca crecca) Green-winged Teal


コガモの翼鏡は順光中では緑色に見えるけれど、見る角度によって様々な色に見える。この時は銅の炎色反応か、あるいはアオムネショウビンの羽色をイメージさせるような見事な淡青色に見えた。




アオジ(Emberiza spodocephala personata) Black-faced Bunting


今来たばかりの道を振り返ると、藪から出てきたアオジが道の脇で餌を探し始めた。
潜行性の高いアオジも一度食事に入れば観察のしやすい鳥で、こういう時はしばらくの間姿を見せてくれる。




ウソ(Pyrrhula pyrrhula griseiventris) Bullfinch


ウソはこの日、亜種ウソの雌雄が1羽ずつだけ見られた。
種子を嘴に含み、「えうえう」と嘴でよく転がして皮殻を取り除いてから飲み込む。癒されるフィンチの仕草だ。
ケヤキの梢にはアトリやカワラヒワがとまっては飛び、暗い藪からはルリビタキの雌タイプとソウシチョウが入れ替わりに姿を現した。
最後にはたまたま、上背から肩羽、腰まで白い部分白化のスズメを偶然見た。










帰りに、閉館時間間際の国立科学博物館に飛び込んだ。
この日、12月9日は科博における日本鳥学会100周年展の最終日だったのだ。
一番の目的であったミヤコショウビンの世界で1つの標本はもちろん初めて見たが、モリショウビンのようにマロマユ的な眉斑が確かにあった。
そこにはこの間、東大博物館での展示の際に見たカンムリツクシガモの雌雄、オガサワラヒメミズナギドリ(もしかすると550図鑑の個体かもしれない)、ムコジマメグロの標本も展示されていて、写真が撮れないから脳裏に焼き付けることに必死になった。



【Saitama(埼玉) & Tokyo(東京), Japan/09th Dec, 2012】


はじまりの場所へ

2012-12-17 07:32:46 | 鳥(Birds)


タカサゴモズ(Lanius schach schach) Long-tailed Shrike


12月のはじめに訪れたこの野鳥公園は、私にとって特別な場所だった。

私が幼稚園から小学生低学年の頃、今は亡き父に連れられて何度もこの公園に来た。
当時は入り口の事務所のあたりにパンの自動販売機があって、そこのパンかカップラーメンをベンチで食べるのが恒例となっていた。その頃には芝生公園に2羽のニワトリが放し飼いにされていて、ラーメンの端を放るとそのニワトリたちはチュルチュルと器用に麺を食べたことが印象強かった。

今年、この野鳥公園に来たのは実に13年ぶりとなる。受付事務所でもらうパンフレットのデザインは昔と少し違ったけれど、水谷さんのイラストによる解説はそのまま。
小さい頃には凄く広く感じた道は、今見ると当時とのギャップで狭く感じた。ああ、自分が大きくなったんだな、としみじみ思った。
小さかったあの頃、小さな双眼鏡を携えて「ミコアイサのめすー」とか言っていた私。今では重い双眼鏡にゴーヨンなんか担いじゃって、「ははん、換羽したな」とか言ってタカサゴモズを横目で見る今の私。可愛くなくなったものだ。

さて、このタカサゴモズL.s.schachは、台湾で見たL.s.formosaeと比べて額の黒バンドの幅が狭い。
遠くにいても大した存在感だ。



【Tokyo(東京), Japan/02th Dec, 2012】


ジャパニーズ・ゴイ

2012-12-11 00:18:25 | 鳥(Birds)


ミゾゴイ(Gorsachius goisagi) Japanese Night Heron


いままでミゾゴイには4度ほど遭遇したことがあり、そのうち1度の昨年春は自転車でぶつかりそうになったことさえあったが、そのどれも視界からすぐに消えてしまった。
ズグロミゾゴイは驚くほど飛ばない鳥だけれど、ミゾゴイはそれなりに飛ぶ鳥のようだ。
そこでこの鳥がゆっくりと歩く姿を見てみたいと考えていたわけだが、今回、夕方に明るい畑道を歩くミゾゴイをじっくり観察することが出来た。

はじめは木立ちの陰から首だけ出してこちらの様子を伺う。
こちら人間が少しも動かないことを確認するとのそのそと畑道へ出てきて餌を探出した。
長いミミズを器用に見つけ出すと、ズグロミゾゴイがもやるあの綱引きでもって土から引っ張り出し、たいらげた。
ミミズを飲み込んでひと段落すると、上の写真のようにもっさり毛羽立って、またしぼんだ。

ズグロミゾゴイと比べると特に頭頂から後頸にかけての赤味が鮮やかで美しい。
夜に聴いた声は足がすくんでナイトハイクをためらうほど少し恐い響きだったけれど、コイツが発している声だと思うと足取りも軽やかになるというものだ。

この春は滞在がたった3日間だけでライファーも0種だったけれど、やはり飛島は面白い。
これからも不定期ではあるが訪れようと思う。






【Tobishima Island(飛島),Yamagata Japan/02th May, 2012】