ヤンバルクイナ(Gallirallus okinawae) Okinawa Rail
沖縄本島2日目。
夜が明けるほんの少しだけ前。辺りはまだ薄暗いけれど、リュウキュウヒヨドリやリュウキュウメジロ、他にも数種の鳥の声がする。その声が少しずつ重なり合い、やがては森中が喧騒に包まれた。
リュウキュウアカショウビンの声が聞こえたと思ったら、まさにその主が私達から15mほど離れた枝にとまっていて、橙色に紫の光沢を重ねた不思議な色合いの背面を見せてくれた。
そんな時、注意深く辺りを見回しながら1羽の鳥が、静かに歩いて藪の中から姿を現した。辺りがまだ薄暗くても、赤い嘴と足がとても良く目立つ。ヤンバルクイナだ・・・!
私が息を押し殺して待つと、なんとこのヤンバルクイナは私の見ている前で羽づくろいを始めた。朝露で湿った羽毛に櫛をかけるように丁寧に、嘴で何度もすく動作を繰り返した後、ほんの3秒間だけ顔を上げて私と目を合わせた。
それからしばらくして、朝の喧騒もだいぶ静かになった頃、素晴らしいサプライズが待っていた。
昨夜の深夜3時に寝て、今朝4時半に起きた私は早くも瞼が重くなり、うつらうつらと首を縦に振っていた。
すると突然、2羽のヤンバルクイナが道を挟む両側の藪から駆け出してきて互いに交差する位置でピタリと止まった後、空に向けて顔を上げ、何度もけたたましい鳴き声を上げたのだ!
【2011/06/24/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica) Ryukyu Kajika frog
夜の渓流は真っ黒で、何だか吸い込まれてしまいそう。森の奥まで続くその黒い流れを見ると、理由のない怖さが背筋をなぞる。
でも、そんな沢を手に持ったライトで照らせば、まるで突然「天の川」に変わったかのように無数の星が煌き出す。その正体はエビの目だ。どんな暗闇でも何か生き物さえ見つければ、先に述べたような怖さはいとも簡単に吹き飛ぶというもの。以前、道もよく分からないマレーシアの森を深夜に歩いていてもまさにそうだった記憶がある。
沢に突き出た石の上、絶好のソングポストで鳴いていたのは、綺麗なレモンイエローをしたリュウキュウカジカガエルの雄だった。彼の軽快で大きな鳴き声が沢の対岸の岩盤に反射して、黒い川面を滑るように響き渡るのがわかる。
ヒメアマガエル(Microhyla okinavensis) Ornate narrow-mouthed toad
森のいたる所からする「ギリリ ガララ...」という声は、カエル型のギロ(木製の打楽器)の背中をゆっくりなぞった時の音にそっくり。この声の主はヒメアマガエルだ。小さい上に色彩が枯葉によく溶け込むから見逃しがちだけれど、ひとたび跳ねれば小さい割りにかなりのジャンプ力を誇るためその存在に気付くことが多い。
このヒメアマガエルの背中の模様には、なんだか宝の地図でも隠れていそう。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae) Kuroiwa's ground gecko
下ばかり見て歩いているとリュウキュウオオコノハズクはさっぱり見つからないけれど、その代わりコイツに出逢える。のっしのっしと自慢の尾を振りながら堂々と歩く、クロイワトカゲモドキの雄だ。私がもうほんの少し早く見つけていれば、画面に雌雄のクロイワが写った画になったのに、と思うと少し残念。
瞳孔の細くなった時も厳つくてクールだけれど、この瞳孔が丸くなった時の顔ときたら、なんとラブリーなことか!
林道沿いからハナサキガエルやリュウキュウアカガエルが跳ねていく中、今度はオオトモエが私の照らすライトの周りをハタハタと飛び始めた。近くにとまってくれないかとライトの光を調節してみたけれど、そのまま森の中へ飛んで行ってしまった。
こちらは別個体。青いアイシャドウがお洒落だ。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
リュウキュウアカガエル(Rana sp.) Ryukyu brown frog
夜の林道は涼しくて歩きやすく、蚊も意外に寄ってこない。そんな過ごしやすさに気分が良くなり私達がくだらない冗談話をしながら歩き出すと、BGMにリュウキュウコノハズクの声がこだまし始めた。
南西諸島のカエルは跳躍力が凄まじいものが多くて、一瞬で私達の照らし出すライトの輪から飛び出し消え去るものが半数ほどにいる。だからその姿をしっかり見たいならば、「カサッ」と彼らが立てる落ち葉の音の方向を出来るだけ早く正確に割り出す必要があった。
ハナサキガエル(Rana narina) Okinawa tip-nosed frog
今度は、ハナサキガエルがジャンプして私の足に衝突してきた。
ハナサキガエルは森を歩いていて最も多く出くわすカエルの1種。けれどその代わり、最も逃げるのが上手いカエルかもしれない。
オキナワハンミョウ(Cicindela japonica okinawana)
このオキナワハンミョウってば、すごい寝ぼけっぷり。なぜかって、私が葉の裏を覗き込むと足をカリカリ動かすのだけれどその間少しも移動してないという滑稽な行動をずとしていたのだ。昼間はあんなに素早く逃げていくのに、と思うとおかしくなった。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
ケナガネズミ(Diplothrix legata) Ryukyu long-furred rat
日が暮れた後。5分で100円、水を止めている間はノーカウントという良心的なシャワーは今回初めて見つけたのだけれど、何とも申し分の無い設備だった。100円でシャワーを浴び終わった私がシャワールームの棚からタオルと取ろうとすると、ホオグロヤモリがペタペタと壁を歩いて逃げるところだった。
その後、林道へ向かうまがりくねった道。
私が少し気を抜いていたら、危うく道路上にいるケナガネズミの存在を見落とすところだった!
ケナガネズミは地面に落ちた果実をむしゃこら食べるのに夢中で、あと1mというところまで私の運転する車が近付いても少しも逃げる気配が無い。そんな警戒心で大丈夫か?
慌てて10mほど車をバックさせて私達が車から降りると、名残惜しそうに顔を上げたケナガネズミはかなりゆっくりとした動きでノソノソと道沿いの斜面を登って姿を消した。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】