森の最深部は“Standardwing”の踊り場

2013-08-30 21:04:04 | 鳥(Birds)


シロハタフウチョウ(Semioptera wallacii) Standardwing


ここはインドネシア、ハルマヘラ島の田舎町。早朝4時に起床した私達は「鳥を見るためでなきゃこんなに早く起きやしないよね」とブツブツ言いながら顔を洗う。
宿を出て、ガタゴトとオフロードを進む車に揺られること数十分、集落から離れた農耕地の端まで来た。そしてここからは徒歩で森へと踏み込むのだ。
まだ真っ暗な、道無き道のジャングル。長めの長靴を履いてギリギリ渡れる深さの川を3本越え、尖った岩のごろつく沢を4,5本越え、疲れてやたら足の取られるぬかるみをいくつも通過し、棘のついた植物のオーバーハングをトゲまみれになりながらくぐり、巨大樹の倒木を乗り越え、木をつかんでやっと這い上がれるほど急斜面の丘を越え、15kgの装備をかついでそんな道を2時間ぶっ通しで歩いて森の奥地に辿り着く頃には、すっかり夜が明けていた。

夜明けに伴い、「ケェクァクァクァ!」とけたたましい声が時折高い樹冠から聞こえてくるようになった。
樹冠部が比較的見やすい背の低い木をよく観察していると、ついにその声の主が姿を現した。
体下面は美しいダークグリーンで、よく見ると胸から同色の飾羽が突出している。顔や上面は地味な褐色だけれど、とんでもなく伸長した白い肩羽が奇怪な、シロハタフウチョウだ。
こんなジャングルの奥地にあるレック(Rek)で雄は毎日ディスプレイの練習をするのだが、“踊り”が始まると、このシロハタフウチョウはさらにとんでもない姿になる。
けたたましく鳴きながら翼を半開きにして白く透ける風切を見せ、尖った胸部の飾羽は羽毛を逆立てながら真直ぐ斜めに突き出す。そして極めつけは4本の肩羽を四方に突き出したかと思うと、シュルシュルとムチのように動かしたのだ。
ここに別の雄が飛んでくるとお互いに張り合ってディスプレイはさらに盛り上がり、羽を広げて振り回して、それはそれは大変な騒ぎになった。


―インドネシアから帰りました!マレーシアとはほとんど種類のオーバーラップがない場所だったので初見の種も多く、刺激的な1週間でした。今回の旅で、東南アジアとパプアを足して2で割ったような独特の生物層の多島海地域 “ウォーレシア” の虜になってしまったようです。また徐々に鳥見の記録を綴っていきます。



【Halmahera Is., Indonesia(ハルマヘラ,インドネシア)/16th Aug. 2013】