ウバタマムシ(Chalcophora japonica japonica)
こうしてじっくり観察したのは初めてのウバタマムシ。
上面にはクヌギの樹皮を思わせるような溝がカーヴィングされたように彫り込まれ、さらに無数の点刻がある。一見、地味な茶色をしているように思えるこのウバタマムシだけれど、光の加減によっては古びた真鍮細工のように鈍い輝きを放って、実に渋い美しさを醸し出す。
指に乗せてみると、積乱雲の通過で昼とは思えないほど真っ暗になった林の中へとすぐに飛び立った。
【2011/08/24/神奈川 Kanagawa,Japan/Aug.2011】
2011年6月 沖縄本島 まとめ ※リンクをクリックすると記事に移動します
【1】 振り子採餌法
【2】 真夏日和の鳥
【3】 うたた寝は木漏れ日の中で
【4】 夕暮れの森で
【5】 警戒心<食欲
【6】 夜の森で語ろう
【7】 黒巌スマイル
【8】 その唄は沢音に混ざり完成する
【9】 東雲の森のアガチ
【10】 ラプトルのように貪欲に
【11】 仏頂面がデフォルト
【12】 嵐の森で山亀に逢う
リュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica) Ryukyu black-breasted leaf turtle
沖縄本島3日目。
島に接近していた台風は朝になってもその勢力を少しも弱めることなく、暴風雨も止む気配が無かった。
このように外を歩くことも叶わぬほどの天候のおかげで、朝はとびきり暗い林内で数個体のヤンバルクイナと、地面から垂直上方向にフライングキャッチをするホントウアカヒゲの雌を見たぐらいだった。
そんな時でも、かねてより逢いたかった生き物に会えたことで私の気分はすぐ上々になった。
ひと気の無い道で、荒れ狂う森をものともせずに闊歩していたのは、まさにリュウキュウヤマガメだったのだ!
しっかりと主張する3列のキール、赤味を帯びた体色、背甲後縁のパンクな刻み目、鎧を装着したような脚...どこもかしこも、なんて魅力的なカメなのだろう。
加えて今は背甲が雨に濡れることでその輝きが3割ほど増している。そのためか、リュウキュウヤマガメ自身も心なしか生き生きとして見えた。
この後かなり早めに空港へ戻った私達であったけれど、受付で飛行機が何ごとも無く運航されることを聞いて呆気にとられてしまった。
そこで私達は最後に、サトウキビ畑へと向かった。畑のウネに目を凝らしながら農道をゆっくりと進むと、ミフウズラの雄が固まってこちらを見ているのをいとも簡単に見つけられた。
気が付けば雨は止み、分厚い雲の間から一筋の光が差していた。
もしもう2、3日滞在していれば、この台風の落し物であるハシブトアジサシが見られたかもしれなかった。また次の機会に期待したい。
【2011/06/25/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
ホルストガエル(Rana holsti) Holst's frog
夜の森。この日は残念ながら台風が沖縄本島に接近していたため、例の100円シャワーを浴びている時から吹き荒れる暴風によって木々が激しくざわめいていた。シャワーの後、私達が車に乗り込みドアを閉めた瞬間・・・まるで何か仕掛けがしてあったかのように凄まじい豪雨が突然降り出した。バケツをひっくり返したと言うよりも、車で滝に突っ込んだと言った方が近いかもしれない。
適度な雨ならばむしろ好機。雨が降ればカエルが良く出るというもので、私達が雨の中で鎮座するホルストガエルを見つけるのは時間の問題だった。
ホルストガエルの貫禄ときたらまぁ大したもので、奄美で見たオットンガエルといい勝負。覗き込む私に対して一瞥もくれないものや、むしろどうだと言わんばかりに胸を張ってみせるものまでいた。
一度はカメラを持ち出せるほどになった雨足は、ナミエガエルやアカマタ、リュウキュウアオヘビが姿を現す頃には森の唸りに加えてどうしようもないほどに強くなっていった。
【2011/06/24/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】
バーバートカゲ(Plestiodon barbouri) Barbour's blue-tailed skink
昼下がりの森。この日初めて歩く林道は予想以上にアップダウンが激しくて、休まずに歩いていたらすぐに汗だくになってしまった。
何kmか歩いてやっと1羽姿を見せたホントウアカヒゲは、すぐに谷の向こう岸へ行ってしまった。けれど、がっかりしていた私は次の瞬間にはうつむいた頭を勢い良く起こしていた。
対岸にある花の咲く木からした声を、聞き逃す筈も無かった。「キョッ、キョッ」という声!
重なり合う葉の隙間からその姿を捉えると、それは声を聞いて思い描いた姿と一致した。腹が妖しくブラッディなドクターペッパー色をした、ノグチゲラだ。しかも頭の赤い雄だったのだ。
ノグチゲラはしばらく鳴きながら餌を探した後、木々を飛び移りながら森の中へ消えていった。その後もドラミングや鳴き声を含めるならば5個体以上のノグチゲラを確認できた。
しばらくして林道を歩く私の前を何かが横切ったと思ったら、それは小さなバーバートカゲだった。このバーバーは見た目からは想像も付かないような機動力で私から見て左手の斜面にいたカマドウマの1種を捕らえ、また右の縁に駆け戻った。
私がしばらく観察していると、その食事の一部始終を見せてくれた。
飲み込む瞬間。飲み込むと言うより自分の体に押し込むといった感じで。
体をくねらせながら、胃袋に収納する。
最後に、満足気な舌なめずり。“ペロペロ”
夕食はゴーヤチャンプルー。
本州ではなかなかないほどの安値で、実に素晴らしい完成度の一品だ。ラフテーが入っているところがこの店のポイント。
【2011/06/24/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/June 2011】