白翼の妖精は軽やかに唄う

2013-06-18 23:02:08 | 鳥(Birds)


カワリサンコウチョウ(Terpsiphone paradisi borneensis) Asian Paradise-flycatcher/Male white morph


ボルネオ5日目。
この日はジープで保護区の入り口まで行き、そこから徒歩でロッジまで戻るというコース。
今日も朝からあいにくの雨で、降ったり、止んだりの繰り返し。しかし悪天だからといって部屋でぼんやりしている私ではない。
このジャングルで鳥見をする中で、雨天時でも時々雨が止むような状況ならば、晴天時よりも少ないが鳥は出現することがわかった。鳥達も餌をとらなければお腹をすかせてしまう。彼らは雨の止むほんの少しのタイミングを狙って採餌やさえずりを行うのだ。
さて、歩き始めて朝一番に姿を現したのは胸からの下面がラズベリー色をしたアカエリキヌバネドリの雄。結構な図体の鳥がメインロードを2羽で飛んで横切りブッシュに入ったのを見つけたので、片方は雌だったかもしれない。
雄は数分間、茂った木々の奥にとまって動かずに居た。

しばらく歩いて、今度は混群にヒットした。ジャングルでバードウェーブに当たるほど面白いことは無い。
そうこうしているうちに、私はあっという間に鳥の採餌混群に取り囲まれた。
カザリオウチュウ、ズアカチャイロチメドリ、ズグロチャイロチメドリ、マレーミツユビコゲラ、コシアカキヌバネドリ雄若鳥、ムナフオウギビタキなどをものの数分で一気に見た後には、雨のせいでどんよりしていた気持ちも晴れた。
霧が出ているため視界の悪いのは難点だが、おかげで凄く幻想的な熱帯雨林の林道。
高木の上の方に生る木の実には数種類のヒヨドリが来ていて、ズグロヒヨドリ、アカメチャイロヒヨ、エリゲヒヨドリあたりが辛うじて見える。
「霧さえなければあの群れの中からあと3種はみつけたろうに!」と贅沢なことを言っている間にも、ムジサイチョウの群れ、ルリコノハドリ、オオコノハドリ、オオバンケン、ミカドバトが道を横切って飛ぶ。遠くの地面にキンバトの幼鳥と成鳥が2羽で歩いているのを横目に見ながら真上の木でウロウロするチャムネバンケンモドキに気を配り、ビロードゴジュウカラの奇抜さにド肝を抜かれたと思えば、高い木の枝には思いも寄らぬスマートで美形なカンムリアマツバメが複数羽とまっているのを見つけた。極め付けはBGMにセグロカッコウの「ファファファフォ!」というsongとクロアカヤイロチョウのあの独特の囀りを聴きながら歩く。なんて最高な朝だ!

そうこうしているうちに、キャノピーウォークウェイまで戻ってきた。
朝のゴールデンタイムも終わりに差し掛かり、静けさを取り戻しつつある森。
ルリコノハドリやオオコノハドリが見下ろす樹冠を飛ぶのを見ながら歩いていると、どこかで聞き覚えのあるような、無いような声聞こえてきた。
「ヒホイホイホイホイホイホイ, ヒホイホイホイホイホイホイ....」
“月日星の3つの光”の無い、サンコウチョウに似た声だ。リズムもJapaneseよりだいぶ早い。
声のする方向、木々の間から辛うじて見えるその鳥の全身を見た私は、あっと息を飲んだ。
そこにはカワリサンコウチョウの、しかも成鳥の白色型がいて、今まさに囀っているところだったのだ!
囀っているからこそ分かったことだけれど、他のモナーク類同様、口内はメロンクリーム色。
頭部はJapaneseのように見えるが、胸からの上下面は見事なエンジエルホワイト。良く見ると上背や大雨覆に細やかな縦斑が入り、風切の羽縁は黒で、特に初列は静止時には一様に黒色に見える。
まったく、こういう出逢いがあるからジャングルの鳥見はやめられない。



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/2nd Jan, 2013】


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