ハチクイ(Merops philippinus) Rainbow Bee Eater
地図上で見て、浅はかにも「徒歩で行けそうだ」と思い、実際に後戻りできないほどに歩いてしまった後で「やっぱり他の方法を考えるべきだった」と後悔することは、人生の中で何度もある。
この時もまさにそうだった。
節約のためだと言って、真昼間の日差しの中を2時間ほど歩いたところで、やっと貴重な時間と体力の浪費に気付き始めた私達であった。けれどもここで後悔の念を口にしては歩く気力がそがれてしまうと思い、文句は乾いた暑さに対してだけ向けていた。
一体、何時間歩いたのだろうか。やっとの思いで住宅地を抜けて、森が見える場所まで来ると、ハチクイに出逢った。
大きくて葉の無い木にとまっていたこのハチクイは、たまにフライングキャッチをしてはもとの場所にもどる。
疲れ切った私達は、大きな針葉樹が落とす影に入って地べたに座り込み、30分ほど動けずに過ごした。
モリツバメ(Artamus leucorhynchus leucopygialis) White-breasted Woodswallow
強風の中、モリツバメが木にとまる方法は実に華麗であった。
ハングライダーのように広くて三角形をした翼を羽ばたかせずに風に流れてきて、まるで可変ウイングかスラスターでも付いているかのようにとまるべき枝のすぐ上まで上手に体を移動させて来た後、そのままの体勢で足を出して綺麗に枝につかまるのである。
そうして最後にゆっくりと翼をたたむ。相当な飛翔技術だ。
一方、強風の中で飛び立つ時はこれの逆再生バージョンになる。
他の小鳥なら、強風の中で飛ぼうとすれば翼が風の抵抗を大きく受けてたちどころにバビューンと風に吹き飛ばされてコントロールをほとんど失ってしまうところである。
雨覆や顔にまだ幼鳥の特徴がある。
ナマリイロヒラハシ(Monarque rougegorge yorki) Leaden Flycatcher
私はもうどれほど疲れ切っているのだろうか。そもそもオーストラリアに生息していないことを知っていながら、このナマリイロヒラハシの雄を初めクロエリヒタキかと思ってしまった。
友人は魂が抜けたようにベンチに腰を落とし、半目だけを開いていたが、私にツッコミを入れる気力だけは残っていたみたいだ。
間もなく夕暮れになり、鳥達は騒がしくねぐら入りを始めた。
今考えれば相当頭の悪い選択なのだけれど、ここで楽をしたら負けだと思った私達は、なんと帰り道までも徒歩にすることにした。真っ暗になった帰路を言葉も無く、腿をだるーくしながらえっちらおっちら歩いていると、仕舞いには大粒の雨が降り出した。
【2010/03/13/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】
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