to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

やわらかい手

2008-01-31 23:47:30 | the cinema (マ・ヤ行)
                    この穴から幸せが見える。
原題 IRINA PALM
上映時間 103分
監督 サム・ガルバルスキ
原案 フィリップ・ブラスバン
脚本 フィリップ・ブラスバン
出演 マリアンヌ・フェイスフル/ミキ・マノイロヴィッチ/ケヴィン・ビショップ /シヴォーン・ヒューレット/ドルカ・グリルシュ/ジェニー・アガター/コーリー・バーク

60年代の伝説の女神マリアンヌ・フェイスフルが、『あの胸にもういちど』以来39年ぶりに主演した女性讃歌。

ロンドン郊外に暮らす平凡な主婦マギー(マリアンヌ・フェイスフル)は、病気の孫の手術代を稼ぐ必要に迫られていた。偶然セックスショップの“接客係募集”の張り紙を見つけた彼女は面接を受け、採用される。オーナー(ミキ・マノイロヴィッチ)の見込んだ通り、彼女はその手の滑らかさで店でナンバーワンの“接客係”になる。(シネマトゥデイ)

ロンドンの曇った空。浮かない顔の暗い親子・・・。
重病の孫を見た途端に優しいお婆ちゃんの顔になるが、
病院を一歩出れば、先の見えない治療と、高額な医療費のためにまた重苦しい空気が流れる。
既に家も失い、ローンも断られ、仕事を求めて彷徨うマギーと、風俗店のミキとの出会い。
長年の専業主婦としての穏やかな真面目な生活が覗える“接客係”の理解も無理はない
この時、この世間知らずを嗤わず、婉曲な言い回しで中年女性に説明するミキが可笑しいけど
暗い容貌の中に潜む、人間的な優しさも感じたシーンだった。

一度は逃げ帰りながらも、高額を得る手段は他に無く、、何度となく自分の手を見るマギー
ただ愛する孫、オリーの為・・・
好奇心の強い村人の目を気にしつつも、黙々と仕事に通う。
そして目標の6000ポンドを手に入れるが――

マギーが良く立ち寄る地元のお店のシーンは、その時々の彼女の心を映し出し印象的…
財布が変り、タバコを吸い、"名誉の負傷"をし、、「イリーナ・パーム」は少しずつ変わって行く。

トシを取ってて、スキルもない―そう言われて、自分に自信が無かったマギーが、ソーホーの夜の街で出会った仕事と人との関わりの中で
次第に自分に自身を持ち、解き放たれていく過程を、マリアンヌ・フェイスフルが丁寧に演じていく
我慢することを止めて、見せかけの友達にも「親切に告白」
無くしたものは過去のもの。掴んだものは大切な絆。
彼女は黙ってただ大切なものに微笑む

劇場でパンフレットを見て、初めて気がついた。あのミック・ジャガーの嘗ての恋人
ドラッグ中毒、ホームレススクリーンから消えてその後の壮絶な人生は全く知らなかった。
その壮絶な人生を物語るように、年齢の割りに荒れた手、硬い爪。38年という年月が別人のように変えてしまった体型。
しかし、だからこそこの極めてセリフの少ないマギーの内なる心の葛藤も、強さも伝わってきた気がする。
どんな状況でも頑張って生きていけば、いいことがある♪この作品もまたそう思わせてくれましたね