神聖なはずのカトリック学校で、
何が起こったのか?
原題 DOUBT
上映時間 105分
原作戯曲 ジョン・パトリック・シャンリー 『ダウト 疑いをめぐる寓話』
監督 ジョン・パトリック・シャンリー
出演 メリル・ストリープ/フィリップ・シーモア・ホフマン/エイミー・アダムス/ヴィオラ・デイヴィス/アリス・ドラモンド
トニー賞と、ピューリッツアー賞を同時受賞した舞台劇を原作者のジョン・パトリック・シャンレー自身が映画化。
1964年、ブロンクスのカトリック系教会学校。校長でシスターのアロイシス(メリル・ストリープ)は、厳格な人物で生徒に恐れられていた。ある日、人望のあるフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)が一人の黒人の男子生徒に特別な感情を持っているのではないかと疑念を抱くが……。(シネマトゥデイ)
シスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)はまだ未熟な教師。
彼女のクラスには学校が初めて受け入れた黒人の生徒がいるが、彼女には、
「
本校でただ一人の黒人生徒」の立場や心理に思いが及ばずにいる。
しかし、ある日のフリン神父の行動に疑念を抱き、誘導されるまま厳格な校長のアロイシスに打ち明けてしまう。
その言葉に喰いつくアロイシスは、疑念を晴らすというより、
執念ともいえる執拗さでフリン神父を追い詰めていく。
一方のフリン神父は、進歩的で、生徒や父兄の人望も厚い。
白人ばかりの学校で、孤立しているドナルドをある日授業中に呼びつけるのが疑惑の発端となる。
様々な小物やシーンを使って、アロイシスとフリン神父の生き方の違いを見せつけ
遂には二人の対決シーンとなっていくが・・・
ここで特筆すべきは、この舞台が
ケネディ暗殺の翌年であり、
アメリカにとっては失意から立ち直れていない、激動の年であり、変革が求められていた時代だという事。
いわば新旧の対立がいろんな場面で起きていた時代ともいえる。
そんな中、カトリック系教会学校も初めて唯一の黒人生徒を受け入れるのだが、
全校生徒を監視する以上の関心を持って、アロイシスがその生徒をみていたのは
彼女の中に、新しい物を受け入れがたい気質が起因しているように見える。
校長室で繰り広げられる、アロイシスとフリン神父の攻防は迫力があり、一番の見所。
しかし、アロイシスの「疑惑」は何故かいつの間にか「確信」めいて、
対するフリン神父は否定するも、彼女の「不寛容」さに終始しているのがいかにも弱い。
自信も根拠もないままに告げ口をしたシスター・ジェイムズは、事の顛末にオロオロし、アロイシスを責めるが・・・
疑惑と言う名の毒を盛ったのは浅はかなシスター・ジェイムズ。
毒に蝕まれたのは、疑惑を向けられた神父ではなく、アロイシスの方だったか。。。
この原作戯曲が絶賛された背景に、大量破壊兵器所持の疑惑を振りかざし9・11を招いたアメリカへの不信があるとか。
そういう目でみたわけじゃないが、まさに教会でのフリン神父の説教がソレらしい感じではある。
「疑惑」は晴らされず、「排除」に向かうのが恐ろしい。
見応えは十分ながら、予告で想像しうる以上のものはなく、メリルとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技に尽きる。
舞台劇を映画化というのは流行なのかもしれないけど、これもやはり舞台で観る方がいいに決まってるって気がした