goo blog サービス終了のお知らせ 

to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

ル・アーヴルの靴みがき

2012-05-12 23:47:34 | the cinema (ラ・ワ行)

誰かを助け、誰かに助けられて生きてゆく
原題 LE HAVRE
製作年度 2011年
製作国・地域 フィンランド/フランス/ドイツ
上映時間 93分
脚本: 監督 アキ・カウリスマキ
出演 アンドレ・ウィルムス/カティ・オウティネン/ジャン=ピエール・ダルッサン/ブロンダン・ミゲル/エリナ・サロ/ライカ

昔パリで暮らしていた芸術家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、今は港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら生計を立てている。彼は自分に尽くしてくれる妻(カティ・オウティネン)と愛犬ライカとの暮らしに満足していた。だが、ある日妻が病気で入院した後、アフリカからの難民の少年と出くわし、警察に追跡されている彼をかくまうことにする。

舞台は北フランスの港町ル・アーヴル。
かつてパリでボヘミアン生活を送っていたマルセルは、この港町で、靴みがきで僅かな収入を得、
妻アルレッティと慎ましくも満たされた日々を送っていたある日、アフリカからの密航者で警察に追われる少年イドリッサと出会い、
彼に救助の手を差し伸べる。

ささやかな暮らしを支えていたアルレッティだったが、体の不調をマルセルに隠してきたものの、
ある日とうとう倒れ医者から余命宣告を受ける。が、夫には秘密にと懇願する―。

パン屋のツケも溜まっているが、当然のように、パンを差し出す彼ら。
飄々とした人物描写の中にも穏やかに時にコミカルに、地に着いた人情味を映し出し、
港町に起こる犯罪とともに静かな日常を繰り返す、裏通りの小さな物語を追っていく。

セリフは最小限だけど、さびれたこの町に流れる音楽と、
様々に向かい合う眼差しが、ソレを補うかのように雄弁だ。
奇跡は、あの少年イドリッサの眼差しと、短い言葉とともに差し出した手から渡されたものだという気がした。

マルセルの靴磨き仲間のベトナム人、行きつけの酒場、お馴染みの八百屋、それに愛犬ライカ、
だけど、それだけでは足りない―。

見守る観客が、心配し、固唾を呑むシーンが何度となくありますが、
それが思わぬ明るい笑いに転じるシーンもあり、
ここは8割方埋まっていた観客がひとつになって微笑んだシーンでしょう。アブナカッタヨ~

ケン・ローチ監督の「エリックを探して」とか、イスラエルのヒューマン・コメディ「迷子の警察音楽隊」とかが愉しめた方なら、きっとこの雰囲気も浸れると思う。
ゆっくりとページをめくりたくなる大人のファンタジーです。


お利口なわんこ、ライカは監督の愛犬だそうです
シルバー・ロッカーリトル・ボブが、ちょっと甘くて懐かしいロック
ノルマンディー地方はリンゴのお酒シードルやカマンベールチーズが有名で、作中でモネ警視が好んで飲むリンゴの蒸留酒カルヴァドスはこの地方の特産品だとか。
しっかりしたパンと軟らかなカマンベールチーズ、お酒に添えて出されるオリーブ等そそられますよ